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コンピューター用語バグ

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Hyper Text Markup Language

一般向けの書籍などで、「HTML」が「Hyper Text Markup Language」の略であるとしているものを見かけることがあるが、これは誤りである。 HT は「hyper text」ではなく、「hypertext」の略である。 そう、「hyper」と「text」の 2 語に分けてはいけないのだ。 コンピューター業界には、略語をスペル・アウトする際に略語を構成している文字を大文字で記すという慣習が存在する。 このアホらしい慣習に従えば、HTML は、

HyperText Markup Language

とスペル・アウトされる。 これを見た一般向け書籍の執筆者が、Hyper と Text の 2 語であると勘違いしてしまったものであろう。

HTML 2.0 の仕様は RFC 1866 によって規定されているが、その「Abstract」の冒頭の文中には、

Hypertext Markup Language (HTML)

とある。 ところが、HTML 3.0 以降の仕様書では、いずれも次のように、「Hypertext」ではなく「HyperText」となっている (HTML 3.0HTML 3.2HTML 4.01)。

HyperText Markup Language (HTML)

略語の構成要素を大文字にしてスペル・アウトするというアホらしい慣習を踏襲する者は英語のネイティヴにも絶えないということか。 ちなみに、HTTP/1.1 の仕様を規定している RFC 2616 には、

Hypertext Transfer Protocol (HTTP)

とあり、こちらは今でも「Hypertext」である。

(2000/06/18)


アットマーク

記号「@」のことだが、「at mark」というのは和製英語である。 「at sign」というのが英語における最も一般的な呼び方である。

Eric S. Raymond (ed.) 『The New Hacker's Dictionary』には、「@」の呼び方がいろいろ収録されているが、当然ながら「at mark」は含まれていない。せっかくなので、収録されている呼び方の中から面白いものをいくつか紹介しよう。

vortex (うず)
whorl (らせん)
whirlpool (渦巻き)
cyclone (サイクロン)
snail (カタツムリ)
ape (サル)
cat (ネコ)
rose (バラ)
cabbage (キャベツ)

想像力の賜物ですな。

(1999/09/05, 2000/10/01)


グニュー

「GNU」を何と読むかという話である。日本では「グニュー」と「グヌー」の両様の読み方がおこなわれているようであるが……。

GNU というのは、Richard Stallman 率いる Free Software Foundation (FSF) によって進められている UNIX 互換ソフトウェア開発プロジェクトの名称で、「GNU's Not Unix」の略である。 その GNU プロジェクトの声明「The GNU Manifesto」には次なる一文がある。

To avoid horrible confusion, please pronounce the `G' in the word `GNU' when it is the name of this project.

混乱を避けるためにプロジェクトのことを言う場合には GNU の G を発音してくれと言っているのであるが、この意味がお分かりだろうか。 じつは英語にはすでに「gnu」という単語が存在し、こちらは g が発音されない。 つまり、これと同じに GNU を発音してしまうと混乱が生じるから、GNU の G を発音して区別しようというわけである。 ところで、g を発音しない gnu とはいったい何か。「ヌー」である。 偶蹄目ウシ科の哺乳類で羚羊(レイヨウ)の一種、アフリカ産のあの「ヌー」である。 この「ヌー」と混同されないように [g] を付けて発音せよというのだから、それは「グヌー」となってしかるべきであろう。

ちなみに、GNU プロジェクトのマスコットは当然ながら「ヌー」である。

(2000/06/18, 2004/05/23)


バージョンアップ

「version up」は和製英語。 英語ではふつう「upgrade」という。

(1999/09/05)


ハードコピー

英語の「hard copy」をカタカナにしたもので、その意味は「紙に印刷した複製」といったところである。 一部に、ディスプレイ画面上の表示内容をそのままのイメージで紙に印刷したもののことだと思われているようであるが、それは「画面のハードコピーを取る」というように「画面の」という修飾語をつけた場合の話である。 「画面のハードコピー」があれば、当然「画面以外のハードコピー」もありうるわけで、たとえばテキストファイルの内容を紙に印刷したものは、そのファイルのハードコピーということになるのだ。

ハードコピー (hard copy) があれば、ソフトコピー (soft copy) というのもある。 こちらは、紙への複製ではなく、電子的な複製のことである。 たとえば、UNIX の cp コマンドや MS-DOS の copy コマンドを使って複製されたファイルは元のファイルのソフトコピーであるし、テキストファイルや画像ファイルの内容をディスプレイに表示すれば、その画面上に表示されているものはディスク上にある元のファイルのソフトコピーである。

(2000/10/01)


リンクフリー

ウェブ・ページ上で「このページはリンクフリーです」というような形で用いられる。 その意味するところは、「このページへのハイパーリンクは断りなくご自由にお張りください」といったところだろうか。 当然、日本のウェブ・サイトでの話だが、では英語を使用している海外のサイトでも「link free」が用いられるかというと、それはない。 「link free」は和製英語である。 仮に英語に「link free」という熟語があったとしても、それは日本におけるような意味にはなるまい。 タックスフリー (tax free) やバリアフリー (barrier free) の例を見れば明らかなように、「link free」は「リンクがない」という意味になる。 英語でも通用すると思って「This page is link free.」などとやってしまうと、リンクされるのを拒絶していると受け取られかねないのでご注意を。

(2000/06/18)



1999/09/05 公開
2006/03/21 更新
面独斎 (Mendoxi)
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