河合メンタルクリニック


早發白帝城    李白

朝辭白帝彩雲間 千里江陵一日還 

兩岸猿聲啼不住 輕舟已過萬重山

 

(訓読)

つとにはくていじょうをはっす

あしたにじす はくてい さいうんのあいだ

せんりのこうりょう いちにちにかえる

りょうがんのえんせい ないてととまらず

けいしゅう すでにすぐ ばんちょうのやま

 

(書き下し文)

早に白帝城を発す

朝に辞す 白帝 彩雲の間

千里の江陵 一日に還る

両岸の猿声 啼いて住まらず

軽舟 已に過ぐ 萬重の山

 

(全訳)

  朝早く白帝城を出発したのは、あさやけ雲がまばゆく映えているときだった。ところが、千里もあるといわれる下流の江陵に、まる一日で到着した。昔の本にあるように、「両岸の連山ほぼ缺(か)けた所がなく続いて重なる崖、たわわなる峰が、天を隠し日を蔽(おお)うて、頭の上だけが開けている。正午でないと日が見えず、眞夜中でないと月が見えない。白い浪がしぶきする激湍(げきたん)があるかと思うと、蒼く澄んだ淵がたたえ、絶壁には無数の「ぎょりゅう」や柏(はく)が生え、そのあいだに、ところどころ瀑布がかかって流れ落ちている」ところを、つぎつぎに猿の啼き声が聞こえ、それがつぎつぎに、あとへ、あとへと飛んで行って、とどまることがない。と、聞いている間に、輕い小舟はすで萬重の山々を通りすぎているのだった。

(唐詩選 下  昭和四十年・集英社)

 

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