12月
セッションが始まる前に、順番にマイクを手にして思い思いの歌を歌っている。その人その人なりに歌に対していろいろな想いがあるのだろう。
スタッフとの連帯
リハビリ主催のクリスマス会で常日頃きたえた音楽の成果を発表する。「良い思い出になりました」、「私たちの発表が一番良かった」と喜び合う。
「長く入院しているけど、こんなことやったのは初めてです。良かったです」この言葉を聞けて良かった。
その後も廊下を通る度にスタッフに向かって大きく手を振ってくる‥‥あの笑顔が素敵(すてき)だった。
晦日(みそか)なのに普段と変わらない参加者の数。複雑な気持である。外泊をしないで病棟で年越しをする人が残った。心なしかいつもより寂しい表情に見えるがどうだろう。
それでも「何かね、変わってきたみたい。明るくなってきたの」。今年最後の音楽のセッションを終え、ポツリ、ポツリと自室に戻るお年寄を見ながら病棟婦長は言う。
「同じ病棟にいながら全然知らないとか、そんな都会的な関係が続いているのを、ちょっとオープンにしてきたのかな。ご近所づきあいへのきっかけを作ってあげたのかな」とは司会者の弁。
「何かわからないけど変わってきた」と捉(とら)える感性も豊かだけど、それを《都会的な関係からご近所づきあいへの関係の変化》と表現したところに何とも言えない味わいがある。私たちは、そこで今起こっていることがどういう事態なのか可能な限り表現を与えていきたいと思う‥‥。