河合メンタルクリニック 河合メンタルクリニック


2月

 

 空オケに「雪椿」という新曲を取り上げる。テープをかけると「知らねえよ!」と言っていた○○さんが最後には上手に歌い始める。ここでもわりと簡単に皆が歌い方を覚えてしまう。ヒットする曲はどんな世代の人でも何度か間けぱ覚えてしまうフレーズ。それと次はこんな音だろうと予想でき、実際にその通りに上下するメロディー。ヒットする曲はそれなりに理由がある。これからも新曲をどんどん取り入れよう。

 そして、「あの歌手のあの曲を歌えたよ」という満足感と自信を各自に持ってもらいたいと思う。

 

大事なのは、思いやりの心

 セッションの最中、寮母が「お早ようございます」と食器片付けで入室した際、参加者に次々と声をかけてくれる。ちっとも邪魔された感じがしない。要するに大事なのは思いやりの心。

 中途から参加の○○さんに、司会者が話しかけることによってセッションに自然に取り込む。偶然の出来事をあたかも必然のごとくにしてしまう司会者の力量がここにある。

 司会者と△△さんの会話が面白い。お互い同士持ち上げ合いながら会話を楽しんでいる。

 他病棟の看護婦が通りがかりにしばらくの間セッションに参加してくれる。「音楽はある時には言葉以上にその人その人の過去を思い出させてくれるんでしょうね。皆さんどうもありがとうございました」という言葉を残して、心待ちにしている春のそよ風のように退場していった。七十過ぎの看護婦である。彼女自身どのような過去を思い出していたのだろうか。

 一方で、昔楽は言葉そのものを呼ぴ覚ますこともある。ほんの小さな出来事でも良い。秘密の話でも良い。人に話しかけること、人の話を聞くこと。独りだけの出来事、二人の出来事、多くの人の出来事をこの場で一緒に感じられることが大事なのだろう。

 九十一歳の○○さん、風邪で参加できず。特別に病室で「ペチカ」をバイオリン演奏。演奏後、「元気になったよ」と拍手してくれる。

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