相乗り


知人に不幸があり、お葬式にいってきました。
斎場は駅からちょっと離れていまして、たぶん徒歩だと20分、タクシーだと1メーターって距離でした。とても暑かったし、もともと歩くのが嫌いなので、往路は躊躇なくタクシーで斎場まで行きました。
斎場が狭かったため、お焼香を終えて、私を含めて多くの人が出棺を待たずに帰っていきました。「帰りもタクシーだな」なんて思って道端でタク待ちしてたのですが、都心とちがって全然タクシーが来ません。しかも私を含めて3人もタクシー待ちをしています。私は思い切って、近くにいたおじさんAに「駅までですか?」と声をかけて、相乗りすることにしました。もうひとりのおじさんBに声をかけようかなぁなんて思いながら待っていると、もうひとりの人がタクシーをつかまえました。おじさんBはとてもいい人で、タクシーに乗りながら私たちに声をかけて相乗りをさせてくれました。
まったく見知らぬ3人がタクシーに乗ったのですが、葬式帰りというシチュエーションのためか、自己紹介をするわけでもなく、「なんかなぁ〜」って感じで座って、発進を待っていました。長い信号待ちでした。
というわけで、3人が乗ったタクシーが発進しようとしたところ、第3のおじさん、がタクシーにかけよってきました。どうやら、車を拾ったおじさんBの知り合いのようです。「ラッキー!」などという、とても葬式とはかけ離れた言葉をいいながら、おじさんCはタクシーに乗り込みました。
助手席に乗り込んだおじさんCと後部座席の一番奥にのりこんだおじさんBおじさんCが体をねじらせて、おじさんBとお話ししています。おじさんBはこれから大阪に行くそうです。どうでもいいですが。まあ、見知らぬ3人の変な無言の空間から逃れられたのはよかったです。
そうこうしているうちに、すぐに駅の近くに来ました。私を含めてみんなが一斉にサイフを開けようとしています。しかしタクシーの料金メーターの数字は660「ここは私が」「いやいや、私が・・・」 私もわざとらしくサイフを鞄から出してみたりして・・・ すると、おじさんCが行動に出た。なんと、千円札を出したのです!!その千円札の上から「いえいえ」とかいいながらさらに千円札を出すおじさんA。「わたしもぴったりあるんですよ。」とおじさんB。ああ、ヤバイ。これじゃおばさんの譲り合いと一緒だよ。私は、一応振り付けのようにサイフの口を開けたり閉めたりしながら、早く決着がつかないかなぁ・・・と思っていた。いっそのこと小娘の私もこの争いに参加し、「私が出しましょうか?」とか発言して、さらに混乱させてやろうかとか。
そんなやりとりの中、おじさんCが「私が一番得をしたので・・・」と発言をしたので、すかさず、とってもかわいらしい声を出して「それではお言葉に甘えます。ありがとうございます。」と言ってみました。これで一件落着。タクシーから降りてから、4人とも口数少なく、こめつきバッタのように挨拶をして、解散したのです。

さて、私はそのまま電車に乗りました。電車はけっこう込んでいました。2駅の間立っていましたが、席が空いたので座りました。それでPCを開いて、この雑記を書いているのですが、斜め前でおじさんBおじさんCが話をしています。まさか私が自分達のことを書いているとは思っていないことでしょう。