楽曲解説

楽曲解説

ジャズのレパートリーには大きく、ジャズ・オリジナルとソング(いわゆる歌もの)に分類することができます。

もちろん、What’s New のように、歌ものと思われていても実際はジャズ・オリジナル(ベーシストのボブ・ハガード作曲)ということもありますし、この区分は必ずしも厳密なものではなく、あくまでも便宜的なものです。

しかし、ジャズ・オリジナルと歌ものには次のような違いがあります。

  • ジャズ・オリジナルは特定のキーで演奏されるが、歌ものはボーカルはもちろん、インストゥルメンタルでも様々なキーで演奏される傾向がある。
  • ジャズ・オリジナルは比較的原曲のコード進行のまま演奏されることが多いが、歌もののコード進行にはバリエーションの幅が大きい。
  • ジャズ・オリジナルのリズムやテンポは一定の幅におさまる(もともと速い曲は比較的速いテンポで、遅い曲は比較的遅いテンポで演奏される)が、歌ものの場合はるかに多種多様なリズムやテンポで演奏され、拍子を変更されることも多い。
  • ジャズ・オリジナルの初演(初録音)は様々な研究者や歴史家によって特定され音源の入手も容易であるが、歌ものは、たとえ初演や初録音が特定されたとしてもジャズ・ミュージシャンによる演奏ではないケースが多い。

つまり、まとめると、ジャズ・オリジナルは、コード進行やリズム、テンポのバリエーションがそれほどないのに対し、いわゆる歌ものは、様々なコード進行やリズムで演奏されるということです。

つまり、譜面を見ずに(いわゆるメモリーで)演奏するとき、ジャズ・オリジナルでは演奏者の間で見解が異なるようなことは比較的ないのですが、歌ものを演奏する場合には、演奏者の曲に対する理解度、好み、それまでの演奏経験によって、さまざまな衝突が起こりうるということがいえます。

自分と異なる演奏をほかの誰かがしたり、あるいは渡された譜面が自分の理解や好みと異なっていたりした場合、次の4つのケースが考えられます。

  • 自分も相手も正しい場合。
  • 自分が正しく、相手が間違っている場合。
  • 相手が正しく、自分が間違っている場合。
  • 自分も相手も間違っている場合。

つまり、ジャズの演奏において、正解は必ずしも1つとは限りません。まして、歌ものとなればなおさらです。

相手が間違っていないのに、自分の考えを相手に押し付ける行為はマナーとして(人間のやることとして?)大いに疑問符が付きます。自分の考えが間違っている(勘違いも含む)なら、なおさらです。

そのようなことにならないためにも、様々な音源を注意深く聴き、同じ曲がさまざまに演奏することを知ることが大切です。これは、自分の和声的、旋律的な感性を磨き、様々な表現にもつながります。

ここでは、ジャズ・オリジナル、ソングを含むスタンダード曲について、私なりに聴いて気づいたことをまとめていきます。