All Of Me

All Of Me

基本データ

  • 作曲年:1931年
  • 作曲:Seymour Simons (1896-1949)
  • 作詞:Gerald Marks (1900-1997)

参考音源

Louis Armstrong (tp, vo) / This Is Jazz Vol. 23 (1932)
作曲された翌年の録音。24小節目3拍目にも注目(本文参照)。キーはB♭。
Lester Young (ts), Teddy Wilson / Pres And Teddy (1956)
キーはC。シンプルなヤングと対照的に、ウィルソンのソロ2コーラス目では15-16小節目をE♭m7-A♭7|Dm7-G7|と即興的にリハーモナイズしたりしている。また、ウィルソンのソロ中で、24小節目3拍目をフラットすることを前提にソロを展開している。
Lester Young (ts), Teddy Wilson / Pres And Teddy (1956)
キーはC。シンプルなヤングと対照的に、ウィルソンのソロ2コーラス目では15-16小節目をE♭m7-A♭7|Dm7-G7|と即興的にリハーモナイズしたりしている。また、ウィルソンのソロ中で、24小節目3拍目をフラットすることを前提にソロを展開している。
Duke Ellington Orchestra / Jazz Party (1959)
エリントン楽団もこの曲を取り上げていて、アルトのジョニー・ホッジスがフィーチャーされる。一説によれば市販の譜面だというが不明。いくつかアルバムに収められているが、Dizzy Gillespieの参加するこのアルバムをあげておく(たぶんAll Of Meにガレスピーは不参加)。キーはA♭。
Lee Lonitz (as) / Motion (1961)
リー・コニッツ、ソニー・ダラス(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)のトリオ・アルバム。ダラスのベース・ラインがコニッツのソロ、ジョーンズのドラム、それに想定されるコードと絶妙な距離感をたもって展開しているのがすばらしい。キーはA♭。
Dave Young (b) – Phil Dwyer (p, ts) / Fables and Dreams (1993)
カナダ人ベーシストのヤングとDwyerの双頭カルテットのアルバム。原型をとどめないほどリハーモナイズされている。1コーラス33小節。個人的にはこういうのも好きだ。キーはC。

曲目解説

ジャズ・ボーカリストの定番曲であり、またジャム・セッションでもよく演奏される必修の曲。

「どうして私のすべてを奪ってくれないの」という切ない曲。しかし、なぜか米国内での「ウェディング・ソング集」のようなCDにも収録されているので、無邪気で一途なラブ・ソングという解釈も絶対に間違いとは言い切れないのかも知れない。

初演は1931年ベル・ベイカー。夫を亡くしたばかりの彼女がデトロイトのフィッシャー劇場の舞台上で泣き崩れたという逸話も残っているので、やはり切ない曲という解釈が一般的だのだと思う。

ほとんどの市販の譜面のキーはCで書かれているが、原曲はB♭であるという情報もある。実際にはインストゥルメンタルの場合、A♭での演奏が多い。

以下、キーをCとして記述する。

メロディとコード

オリジナルのメロディでは29小節目3拍目の4分音符、歌詞がnotの箇所のメロディはA♭。例えば作曲された翌年、すなわち1932年のルイ・アームストロングの録音を聴くと、やはりこの音がちゃんとフラットされている。

ただし、今日ではこの音はほとんどの場合A♮で演奏されるように思う。実際1940年代以降のジャズの録音をいくつかあたってみたがA♮だった。私はそれで構わないと思う。スタンダード・ナンバーが生みの親である作曲者の手を離れ、自立していく過程を見るようで楽しい。

この音のA♭は実に捨てがたい。歌詞のnotと相まって、歌の主人公の気持ち(切なさ。解釈によってはじれったさ?)をとてもよく表現しているようにも思うからだ。もし私がボーカリストならば、作られてから80年以上たった今だからこそ、あえてオリジナルのA♭の音で歌うかも知れない。

なお、この音をオリジナル通りA♭で演奏しようとすると、29小節目のコードはDm7ではなくDm7(♭5)に変更しなくてはならない。

それから、この音をA♮で演奏する場合、この小節をD7にすることも可能である。

いずれにせよ、自分がどちらのメロディで演奏するかにあわせて、適切なコードを選択して譜面に書いておく必要がある。

たくさんのドミナント・セブンス・コード

この曲にはたくさんのドミナント・セブンス・コードが出てくる。

それぞれテンション・スケールの選択が異なるので、ドミナント・セブンス・コードを理解・整理するためにも、この曲の習得は欠かせない。

メロディとの関係を考えながら適切なスケール/テンションを考えてコンピングするにもよい練習になる。ソロやベースラインについても同様である。

たとえば、3-4小節目のE7は、Bm7(♭5)|E7|のように、いわゆる「(狭義の)トゥ・ファイブ」にすることも可能である。しかし、3小節目のメロディがB・G♯・Eという動き(すなわち、E7のコードトーンの5度・3度・ルート)をしているので、一般的にはテーマ(メロディ)を演奏しているときは、シンプルに3-4小節目を通してE7を演奏するほうが適切であることが多い(もちろん、スタイルにもよる)。

9-10小節目のBm7(♭5)|E7|、15-16小節目のDm7|G7|は、平行調のトニック(Am7)、トニック(Cmaj7)へのドミナントなので、今日では比較的「トゥ・ファイブ」にしないほうがむしろ珍しいように思われる。同様に28-29小節目もDm7(またはDm7(♭5))|G7|にするが、28小節目をD7とする場合には、29小節目をDm7-G7とすることができ、しばしばDm7/G-G7が好まれる。