All The Things You Are

All The Things You Are

基本データ

  • 作曲年:1939年
  • 作曲:Jerome Kern (1885-1945)
  • 作詞:Oscar Hammerstein II(1895-1960)

参考音源

The Quintet / Jazz At Massey Hall (1953)
チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、バド・パウエル、チャールズ・ミンガス、マックス・ローチによるカナダ・トロントでの実況盤。キーはFm/A♭。
Art Tatum with Ben Webster Quartet (1956)
ゆっくりしたテンポで演奏。キーはFm/A♭。
Bill Evans / At Shelly’s Mann-Hole (1963)
チャック・イスラエルズ、ラリー・バンカーとのトリオによるカリフォルニアでの実況盤。キーはFm/A♭。

曲目解説

カーンの最後のミュージカルとなった Very Warm for May の一曲。公演そのものは失敗であったが名曲が残った。

メロディとコード

キーをFm/A♭として解説する。

1-2小節目

1小節目をは、A♭メジャー・キーの文脈のVIm7と解説するものがあるようだ。しかし、The Quintet(1953)でピアノのバド・パウエルはときおりFmM7で演奏している。したがって、細かいようだがここはFマイナー・キーのトニック・マイナーImと考えるのが正しいだろう。

したがって、2小節目はFマイナー・キーのサブドミナント・マイナーIVm7であり、これがA♭メジャー・キーからみたIIm7であり、ピボットとしてはたらく。

32小節目

いちおうBdim7ということであろうが、実際のところBm7 E7で演奏されることも多い。

Bm7 E7はストレート・メロディには合わないのであるが、The Quintet(1953)などはメロディを変えたりフェイクしてでもこの進行を貫いているし、Bird Of Paradiseなどの曲名で録音されたチャーリー・パーカーの録音など、バップ期からハードバップ期ではこのコードを採用している録音が少なくない。

ところが、ジャム・セッションなどへ行くと、大半のアマチュア奏者はこの箇所をF7で演奏している。F7はストレートにも合うし、また、この曲のコントラファクトであるPrince AlbertにおいてもF7にかなうリフがついているので誤りとまではいえない。ただ、強調しておきたいのは、Bdim7をF7に置き換えるのは明らかに不適切である。

なぜならば、例えば、Bdim7でソロを演奏しようとしているところにピアニストやギタリストがF7で演奏されて快く思うソロイストは恐らくいないからである。つまり両立しないのである。

ちなみに、Tatum-Webster(1956)は、29-32小節目をD♭maj7 B♭m7(♭5) A♭/E♭ A♭dim7/E♭と演奏している。これはオリジナルのコード進行に近いのかもしれない。なお、この場合、A♭dim7/E♭になっている。E♭の音はA♭ディミニッシュ・スケール上にない音なので、一見誤りのように見えるが、ドミナント・ペダルポイントのトニック・ディミニッシュ(Idim7/V)や、トニック・ペダルポイントのサブドミナント・ディミニッシュIVdim7/I(これはいわゆるコンディミのドミナントのトニック・ペダルV7(♭9, ♮13)/I)は十分に機能することを覚えておくとよいかもしれない。