As Time Goes By #
基本データ #
- 作曲年:1931年
- 作曲・作詞:Herman Hupfeld (1894-1951)
参考音源 #
- Billie Holiday (1944)
- 1944年の録音で、様々なコンピレーション盤に収録されている。キーはG。
- Frank Sinatra / Point Of No Return (1961)
- キャピトル盤への最後の録音。キーはB♭。
- Tony Bennett / Life Is Beautiful (1975)
- ヴァースから歌う。キーはC。
曲目解説 #
映画『カサブランカ』の印象が強いが、『カサブランカ』は1942年で、この曲が作られたのはその10年以上も前。
脚本に、As Time Goes Byをリクエストするように書かれていたが、カサブランカの音楽編曲を手がけたMax Steinerは自作の曲に差し替えたかったらしい。しかし主演で監督のIngrid Bergmanはそれを許さなかったという。
メロディとコード #
さまざまなキーで演奏されるが、以下、キーをE♭として説明する。
1-2小節目 #
よく、Gm7 C7 | Cm7 C7 | (Fmaj7) という譜面を見かける(それから移調したものも含む)。ということは、なんかの曲集にそう書いてあるのだろう。
1931年の原曲を調べることができなかったので何ともいえないが、少なくとも『カサブランカ』の演奏はGm7 C7 | Gm7 C7 | である。Cm7とGm7は手書きすると形がよく似ているから、誤植なのではないか、と思いたくなる。
もっとも、Cm7でもメロディにマッチしている。機能的にはちょっと説明しにくいけれども、メジャー・キーのVm7というのは、まれに見かける(例えばDay In Day Outなど)。だから、誤植でない可能性も排除できないのだけれども。
ただ、単純な繰り返しよりも2小節目で、なにか、もう少しだけ気の利いたハーモニーを求める気持ちもわかる。
Gm7 C7 | A♭mmaj7 D♭7 | というのも悪くないけれどGm7 C7 | A♭mmaj7 B♭7 | くらいが控えめで好きだ。先日名古屋のベテランピアニストはGm7 C7 | Gm7(♭5) C7 | と演奏していたが、個人的にはこれが好みかもしれない。
もう少しあっさりしたければ、Gm7 C7 | Am7 D7 Gm7 C7 | というのはいかがだろう。これは私のアイディア(のつもり)だが、普通の「サン・ロク・ニ・ゴ」だから、ほかの誰かもきっと演奏しているかもしれない。
3-4小節目 #
このようなシンプルでゆっくりした曲は、このようにメロディが伸びているときにどのようなハーモニーをつけるかということころに、その人の音楽性やデリカシーがあらわれるような気がする。
Holiday(1944)は一貫してベースがE♭を弾いているうえでピアノが、E♭maj7 / Fm7 F♯dim | E♭maj7 | のように動いているし、Bennett(1975) は、E♭maj7 / Fm7 F♯dim | Gm7 Cm7 | としている。一方、Sinatra(1961) は、E♭maj7 A♭7 | E♭maj7 / Gm7 Cm7 | とちょっと対応が分かれているのが面白い。
ちなみに、私個人の好みは、E♭maj7 Fm7 | F♯dim / Gm7 Cm7 | である。Bennett(1975)をちょっと変えただけなのだが、4小節目の1拍目をあえてディミニッシュにすることで、少しだけ奥行きを表現してみたつもり。
5-6小節目 #
おおきく、F7 | B♭7 | という演奏が多いようだ。5小節目はFm7ではなく、やはりF7とすべき。
ただ、カサブランカのサウンドトラックは、F7 F♯dim | Fm7 B♭7 | としており、Sinatra(1961)も踏襲している。テンポにもよるが、これくらい細かくしてもよいのではないかと個人的には思う。
15-16小節目 #
こういう何気ない場所でどうするかというところも音楽性と判断力が試される個所。特にスロー・テンポの場合には。
あえてシンプルにというなら、E♭maj7 | B♭m7 E♭7 でよいと思う。私もこれが好きだ。カサブランカのサウンドトラックはこれ。
参考までに、Holiday (1944)は、E♭maj7 A♭m7 | E♭maj7 / B♭m7 E♭7 |、Sinatra(1961)はE♭maj7 D7 | E♭maj7 E♭7| 、Bennett(1975)はE♭maj7 A♭m7 Gm7 G♭7 | Fm7 E7 E♭maj7 A7 |。
アレンジャーもいろいろ苦心するようだ。
18小節目 #
C7だけにするか、Gm7(♭5) C7 とするか。どちらも正解だけれども、こういうところも大切にしたい。
21-22小節目 #
ここをどうするかもかなり判断が分かれるところではないか。
カサブランカのサウンドトラックは、Gm7 A♭maj7 | F7/A Gm7 F7 / |のようにしている。22小節目は大きく、F7だと理解してもよいだろう。
Sinatra(1961)はこれを少し改良して、E♭maj7/G E♭m/G♭ | F7 としている。さらに、Bennett(1975)は、E♭maj7/G G♭7 | F7 |としている。細かいけれど、こういう変化は面白い。アレンジャーは先例を多少意識するだろうし。
Cm7 A♭7 | F7 | というのも聞いたことがある。見つけることはできなかったけれど。
29-31小節目 #
この曲はAABA形式だが、前半のAとメロディが大きく異なる。よってコードもそれにともなって変更する必要が有ることに注意。こういう曲は意外によくある(Speak Lowなど)。
カサブランカのサウンドトラックは、F7 F♯dim | Gm7 Cm7 | Fm7 B♭7 | E♭ | となっている。これが一応基本になるのかなと思う。30小節目の3拍目つい、C7としたくなるが、Cm7も捨てがたい。もちろんこの場合どちらも正解だけれども。
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