Beautiful Love #
基本データ #
- 作曲年:1931年
- 作曲:Wayne King (1901-1985)、Egbert Van Alstyne (1878-1951)、Victor Young (1900-1956)
- 作詞:Haven Gillespie (1888-1975)
参考音源 #
- Anita O’Day / This Is Amita (1955)
- ミディアムテンポで演奏している。ハーモニー的にも1小節目をトニック・マイナーで始めているのが興味深い。キーは、Fマイナー。
- Bill Evans / Exploraions (1961)
- スコット・ラファロとポール・モチアンとのトリオ。キーは、Dマイナー。
- Michel Petrucciani / The Power Of Three (1986)
- ウェイン・ショーター、ジム・ホールとのトリオでモントルーの実況盤。このテイクはホールとのデュオである。キーは、Dマイナー。
曲目解説 #
こんにちでは4/4拍子で演奏されることが多いが、もともと3/4拍子である。もちろん初演のウェイン・キング楽団も3/4拍子で演奏している。
その後、いくつかの映画音楽でも使われた。
メロディとコード #
以下、キーをDマイナーとして解説する。
4小節目 #
3小節目がトニック・マイナーのDm、5小節目は一般にサブドミナント・マイナーGm7である。このとき、4小節目は5小節目へのセカンダリ・ドミナントD7で演奏することがある。
しかし、D7で想定されうるいずれのスケールもメロディ(F G A)に合致しない。
テーマでD7を演奏する場合、一つのやりかたとして、ストレート・メロディを演奏せず、コードにかなうようにフェイクするという方法があるだろう。
ところが、ほぼストレートメロディを演奏しているにもかかわらずD7を演奏するケースもある。これをどう考えたらよいのか。
ひとつの考え方として、これは望ましいものではないという主張があるだろう。つまり一種の「アクシデント」との見方である。
一方で、許容されるという主張もありうる。メロディとハーモニーの不一致の例は少なからずある。多くの場合、メロディがキーのスケール(この場合Dマイナー・スケール)のなかで動いていて、かつコードも和声的にそれほど特殊ではないケース(この場合、IVへのセカンダリ・ドミナントでありきたりのコードと機能)のときには、サウンドしてしまうことがある。
また、メロディがアウフタクトのとき、とくに許容される傾向がある。ソロでも、新しいフレーズを次のコードを先取りして始めることが少なからずある。特にある一定のテンポ以上の場合であればそれほど気にならない場合が多い。
もっとも、気になるか否かは主観的なものである。私個人の意見であるが、音楽的にサウンドしており、かつ無自覚に演奏していないのであれば(つまりハーモニーとメロディについてあまりにも無頓着でなければ)許容されることもあると思う。もちろん、それは演奏の内容次第であるが。
5小節目 #
Gm7の場合、これはDmキーのサブドミナント・マイナーであるとともに、平行調ドミナントV7のリレイティブ・コードを兼ねている(つまりピボット)。
なお、Gm7(♭5)で演奏する録音も少なからずある。実はオリジナルがそうなっているのだ。
11-12小節目 #
11小節目のメロディはEで演奏されることもあるが、オリジナルはFである。したがって、11-12小節目をEm7(♭5) A7 と演奏することはできない。なぜならば、Fの音はEm7(♭5)のアヴォイドだし、また、例えEに代えるとしてもサウンドがやや薄っぺらくなってしまうからである。
ここはE7 A7でもよいのだが、B♭7 A7としてもよいだろう。
13-16小節目 #
9-12小節目と似ているけれども、メロディとの関係に注意をして考える必要がある。
13-14小節は機能的にはトニック・マイナーDmであろう。ただし、2小節Dmではハーモニック・リズム的に難があるので、14小節目をBm7(♭5)またはG7とすることが多い。前者は、マイナー・キーの「ロク」に相当し、Dm6の第3転回形なのでトニック・マイナー代理。後者は、Dmを主とするリレイティブ・コード(と私が考える)もの。ふつう、リレイティブ・コードはドミナント・セブンス・コードに前置されるマイナー・コードやハーフディミニッシュ・コードをいうが、この例のように、マイナー・セブンスを親としてドミナント・セブンス・コードがリレイティブ・コードとして後置されていると考えたほうが妥当ではないかと思われるケースもある。
30小節目 #
マイナー・キーの「トゥ・ファイブ」と無批判に演奏してはいけない。メロディがF-Eとなっており、FはEm7(♭5)に対するアヴォイド。したがって、E7 A7またはB♭7 A7が正しい。
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