Blue Moon

Blue Moon

基本データ

  • 作曲年:1940年
  • 作曲:Richard Rodgers (1902-1979)
  • 作詞:Lorenz Hart (1895-1943)

参考音源

Billie Holiday / Solitude (1952)
ミディアム・テンポで歌う。キーはA♭。
Clifford Brown / With Strings (1955)
やや遅いテンポで演奏している。キーはE♭。
Art Blakey And The Jazz Messengers / Three Blind Mice Vol. 1 (1961)
ジャズ・メッセンジャーズが3管編成だった頃の録音で、フレディ・ハバードをフィーチャーして演奏される。ハバードのプレイはもちろん、ウェイン・ショーターとカーティス・フラーのバッキングのロングトーン、リズム・セクションのアレンジなど、すべてがよく構想されていることがわかる。キーはE♭。

曲目解説

この曲が世にでるまでにはいろいろ紆余曲折があったようだが、結果としてRoders and Hartの代表曲となった。

ちなみに、英語におけるblue moonという表現の意味も時代とともに変遷があったそうだ。本来は、決して起こらないことのたとえだったというが、こんにちでは、1ヶ月のうちに満月が2度起こることをいうようである。この現象は32ヶ月に1度あるそうだから、当初の意味よりは起こる確率がずいぶん高くなったようだ。

メロディとコード

以下、キーをE♭として解説する。

1–14小節目

その気になれば、「イチ・ロク・ニ・ゴ」、すなわちE♭maj7 Cm7 | Fm7 B♭7 | をひたすら7回繰り返すことができる。

この徹底した単純さは、この曲のヒットさせるために音楽出版社側が作者ふたりに求めたことであり、Hartなどはそれに「皮肉を交えて答えた」(JazzStandards.comの記事)とのことであるが、それはともかく、ジャズで演奏するには何か一工夫したいところでもある。

Cm7をC7に変化させたり、さらにE♭maj7をGm7に変えて「サン・ロク・ニ・ゴ」にする機転くらいは、特にリズム・セクションにとっては必須であるが、実際の演奏をいろいろ聞いて、学ぶにはこの曲はとてもよい教材でもある。

例えば、Holiday(1952)は、5-6小節目を、D♭7 C7 | B7 B♭7 | のように変化させている。Blakey(1961)も同じアイディアを活かし、さらに7-8小節目をA7 A♭maj7 | G♭maj7 Emaj7(F♭maj7と書くべきか) | と続けている。

ここまで凝らずとも、たとえば5-6小節目だけ、同じ「サン・ロク・ニ・ゴ」をあえて、G7 C7 | F7 B♭7 | とすべてドミナント・セブンスにするだけでも、サウンドにずいぶんメリハリがつく。

このようなハーモニー感覚は日頃からぜひ磨いておきたい。

ちなみに7小節目は、メロディがE♭の音が続くので、厳密にはB♭7ではなくB♭7susu4(Fm7/B♭と書くこともできる)とする。ただしフェイクしていればB♭7のままでも構わないかもしれないし、ソロのときはむしろB♭7のほうが演奏しやすいわけで、ピアニストやギタリスト、もちろんベーシストもだが、コード楽器のプレイヤーは、メロディや実際の歌いまわしにしっかり気を配ることが大切である。

15-16小節目

おそらくオリジナルは、E♭maj7 A♭maj7 | E♭maj7 | といったところだと思う。

A♭maj7 をA♭m に変えても面白いだろうし、テンポによっては、ずっとE♭maj7のままでも構わないだろう。

Holiday(1952)の録音では、E♭maj7 E♭7/G A♭maj7 Adim | E♭maj7/B♭ B♭7 E♭maj7 (C7) | のようなことをやっている。コードだけ並べるとなんだかややこしいように見えるが、聴けばなんのこともない例のクリシェである。ピアノはオスカー・ピーターソン、ベースはレイ・ブラウンだから、しっかり打ち合わせしたのか、あうんの呼吸で合わせたのか、そのあたりはよくわからない。

ちなみに、Blakey(1961)のこの個所は、A7 A♭maj7 | G♭maj7 C7 | となっている。

17-24小節目

今度は「ニ・ゴ・イチ・ロク」と続く。ここまでやると、出版社側に対する作者の意地や皮肉がかいま見えるようで面白い。

メロディの制約もあるし、また、いわゆるAメロ(最初の16小節と最後の8小節)をリハーモナイズする場合には、あえて原曲通りシンプルにしてコントラストをつけるために、原曲通りにするというのも効果的。

ただし、Blakey(1961)のばあい、24小節目後半にA7を入れている。これが22小節目のC7と対をなし、かつ、ちょっとしたアクセントになっている。

27-28小節目

ここはちょっとしたバリエーションがあるが、おそらく、B♭maj7/F F7 | Fm7 B♭7 | というのが原曲に近く、かつ、メロディにもフィットするのではないか。

ただ、ビバップ以降の典型的なコード進行に慣れたわたしたちには、やはりCm7 F7 | Fm7 B♭7 | のほうが演奏しやすいのも確か。