Chega De Saudade

Chega De Saudade

基本データ

  • 作曲年:1957年頃
  • 作曲:Antonio Carlos Jobim (1927-1994)
  • 作詞:Vinicius de Moraes (1913-1980)
  • 英詞:Jon Hendricks (1921- )、Jessie Cavanaugh (Howie Richmond(1918-2012)の偽名らしい)
  • 英題:No More Blues

参考音源

João Gilberto / Chega De Saudade (1958)
ジョアン・ジルベルトによる代表的な録音キーはDm/D。
Jon Hendricks / ¡Salud! João Gilberto, Originator of the Bossa Nova (1961)
様々なヴォーカリーズを手がけたヘンドリクスによる、ジョアン・ジルベルトへのオマージュ。キーはDm/D。

曲目解説

ボサノバの初期の(最初の?)レパートリーで、ジャズミュージシャンには英題のNo More Bluesとしてもよく知られた名曲。

メロディとコード

この曲はマイナー・キーで始まり、同主調に転調する。以下、キーをDm/Dとし、特記なき場合はGilberto(1958)のものとして説明する。

イントロの5-6小節目

ボサノバのハーモニーは、ジャズなど北米音楽の影響も若干あるのかもしれないが、私自身の経験では、ジャズ・ミュージシャンが多用する典型的なコード進行にとらわれてしまうと聞き誤ってしまうことがあるように思う。

特に、イントロの5-6小節目、Bdim7 | E♭/B♭ | におけるBdim7はBm7(♭5)としてしまいがちだし(それでも誤りとはいえない)、また、E♭/B♭はメロディとの関係をていねいに見ない限り、他のコードと取り違えてしまうおそれがある。

コーラスの29-30小節目

ここも、Gilberto(1958)は、Bdim7 B♭7としてその直後Dmに進行している。ジャズ・ハーモニーに毒されている(?)と、Bm7(♭5) | B♭7 A7 | などとしてしまいがち(これでもメロディと矛盾しないが)。

35-36小節目

同主調のメジャー・キーに転調して3-4小節目である。

ダブルドミナントE7ということになるが、36小節目のメロディがB-G-E-Bとなっているので、E7は誤りではないかということで、わざわざコードを E7 | Em7 | としている譜面を見たことがある。しかし音源を聞く限りコードに変化はない。

これについて、メロディとコードの矛盾に違和感があるかないかは、個人的な主観によるところが大きいだろう。気になる人は気になるし、気にならない人は気にならない。

私は、この部分は次の小節のアフタクトに相当すると考えている(ボサノバは音楽的に2拍子であることをお忘れなく)。アウフタクト部分のメロディは、次の小節のコードやそれに対応するスケールを先取り(アンティシペート)することがある。したがって、音楽的(理論的?)にも私は問題ないと考えてよいのではないか。