Corcovado #
基本データ #
- 作曲年:1960年頃
- 作曲・作詞:Antonio Carlos Jobim (1927-1994)
- 英詞:Gene Lees (1928-2010)
- 英題:Quiet Nights Of Quiet Stars
参考音源 #
- João Gilberto / O Amor, o Sorriso e a Flor (1960)
- 1960年のスタジオ録音で、最近ボーナストラックとともに復刻された。キーはAm/C。
- Cannonball Adderley / Cannonball’s Bossa Nova (1962)
- ブラジルでの録音で、セルジオ・メンデスなど当地のミュージシャンと共演している。評価はさまざまながら、ジャズ・ミュージシャンとブラジルのミュージシャンが共演した初期の作品のひとつ。キーはAm/C。
- Getz/Gilberto (1964)
- スタン・ゲッツとジルベルト夫妻、それにこの曲の作者アントニオ・カルロス・ジョビンなどが参加してヒットした。キーはAm/C。
曲目解説 #
ボサノバの名曲のひとつでジャズ・ミュージシャンによるカバーも多い。
形式と拍子 #
イントロを別とすればABAC形式である。セクションAとセクションBはそれぞれ8小節であるが、セクションCに関しては12小節で演奏する場合と10小節で演奏する場合があるので注意したい。
また、ボサノバは原則として2拍子の音楽のため、2/4拍子または2/2拍子で記譜される。
メロディとコード #
ここではキーをAm/Cとして解説する。
1-8小節 #
実は、おおきく2つのバリエーションが存在する。
Gilberto(1960)は、Am6 | % | E7(♭9)/G♯ | % | Gm7 | C7(/G) | Fmaj7 | % | のように演奏している。ところが、Adderley(1962)が、D7 | % | G7 | % | Gm7/C | C7 | Fmaj7 | % | としている。実際に聴き比べてみるとずいぶんと印象が異なることがわかるだろう。
Getz/Gilberto(1964)では、冒頭のアストラッドが歌っているところはGilberto(1960)に近い(ただし、7小節目が一瞬Fdimに行ってからFmaj7となっている)が、ジョアンが歌うところはむしろAdderleyのほうに近い。ただし1小節目はベースがAを弾いているのでAm6とも解釈できるが、17小節目はDから始めているのでなんとも言えない。
9-12小節目と25-28小節目 #
メロディはまったく異なるがコードが似ている。これはメロディとの関係でコードをしっかりとらえるにはとてもよい訓練になる。
Gilberto(1960)ほか多くの録音で、9-12小節目のコードがFm6 | Fm6(またはB♭7) | Em7 | A7 | となっているが、25-28小節目では Fm6 | Fm6(またはB♭7) | Em7 | Am7 | となっていて、最後のコードがA7ではなくAm7になっている。
なぜこうなるかはメロディと関係している。
11-12小節目はFとEを行き来しているが、このうちFの音はA7に対して♭13のテンションとして響くが、Am7ではふつうこの音はアボイド・ノートとされる。
いっぽう27-28小節目のメロディはB A G F E D Cと、このキーのスケール(Aナチュラル・マイナー・スケールを考えてもいいしCメジャー・スケールを考えてもよい)を下行している。28小節目のメロディはD Cであり、これはAm7にはフィットしてもA7にはフィットしない(A7(♯9)としたところでD音をうまく吸収できない)。さらに27小節目のメロディB A G F EもAm7を示唆することはあってもA7を示唆することはないのである。
なお、こんにちのジャズハーモニーでは、11小節目のコードはEm7よりもE7のほうが好まれるかもしれない。