Dear Old Stockholm

Dear Old Stockholm

基本データ

  • 原題:Ack Värmeland, du sköna または、Värmlandsvisan
  • 作者:Anders Fryxell (1795-1881)

参考音源

Stan Getz / The Sound (1951)
いくつかのセッションによるアルバムだが、この曲はストックホルムでの録音。キーはB♭m。
Miles Davis / ’Round About Midnight (1956)
マイルス・デイビスによる初録音はBlue Note盤Vol. 1(この曲は1952年の録音) であるが、このアレンジのほうが標準に近いだろう。スタン・ゲッツの録音になかったヴァンプがつけられている。メロディはかなりフェイクしていてわかりにくい。キーはDm。
Paul Chambers / Bass On Top (1957)
マイルス・デイビスのアレンジを踏襲しており、テーマはケニー・バレルが演奏している。キーはDm。

曲目解説

構成

Getz(1951)は、AABA形式(A=8小節、B=4小節)で1コーラス28小節であるが、Davis(1956)は、1回目と2回目のあとにそれぞれ4小節のヴァンプがつき(これはイントロと同じもの)、さらに最後のAの終わりを2小節カットして8小節の別のヴァンプをつけて42小節とし、ソロも含めてこの42小節を1コーラスとして演奏している。

メロディとコード

特に議論になるほどの箇所はないが、しいて指摘するならMiles(1956)のアレンジのイントロやAの直後につく短いほうのヴァンプのコードについて書いておきたい。

キーがDmで、ここのコードは、A7sus4(♭9)のように書くことができ、スケールでいえばAフリジアンとなる。フリジアンは、メジャー・スケールの第3モード(階名「ミファソラシドレミ」)として覚えている方もおおいかと思われるが、ナチュラル・マイナー・スケールからみると第5モードにあたる。つまり、ここのAフリジアンは、この曲のキーのスケールであるDナチュラル・マイナーの第5モードに相当する。

理論書では一般にナチュラル・マイナー・スケールの5番目のダイアトニック・コードはAm7と説明しているケースが多いかと思われるが、このようにA7sus4(♭9)のケースもあるということもぜひ記憶にとどめておいておくとよいかもしれない。

A7sus4(♭9)という書き方にもし問題があるという主張を耳にしたことがある。それによれば、本来sus4はドミナントセブンスコードの3度(長3度)をサスペンデッド(係累)したものであるから、スケール上に長3度の音を想定しなくてはいけないが、実際にはスケール(Aフリジアン)上の3番目の音は長3度のC♯ではなく短3度のC♮なので、このコードは厳密にはsus4ではないという指摘である。

実際にはその通りなのかもしれないが、こんにちでは、フリジアンのうち、メジャーキーのダイアトニックなもの(IIIm7)以外について、このような書き方をすることは少なくない。

しかし、どうしてもsus4を使いたくないのであれば、B♭maj7(♯11)/Aと書くことができ、また、B♭maj7(♭5)/Aという表記も見かける。