Desafinado #
基本データ #
- 作曲年:1959年
- 作曲:Antonio Carlos Jobim (1927-1994)
- 作詞:Newton Mendonça (1927-1960)
- 英詞:Jon Hendricks (1921- )、Jessie Cavanaugh (Howie Richmond(1918-2012)の偽名らしい)
- 英題:Slightly Out Of Tune、Off Key
参考音源 #
- Stan Getz, João Gilberto / Gets/Gilberto (1963)
- ジョアン・ジルベルトの歌(もちろんポルトガル語)、スタン・ゲッツのテナーソロで構成されている。キーはE♭。
- Antonio Carlos Jobim / The Composer of Desafinado Plays (1963)
- ジョビンがピアノのシングル・トーンでメロディを奏でる。編曲はクラウス・オガーマン。キーはE。
- Frank Sinatra / The Complete Reprise Studio Recordings Sampler (1969)
- 1969年の録音でいくつかのコンピレーションに収録されている。1963年のジョビンのアレンジメントを踏襲し、イントロから歌詞がついている。歌詞は英語。キーはE。
曲目解説 #
タイトルは音痴、調子っ外れというような意味で、ボサノバの曲のなかでも比較的ジャズ・ミュージシャンにも取り上げられる機会が多い曲。ただし、1コーラスが長いので、何コーラスもソロのコーラスを重ねる演奏にはどちらかといえば不向きで、ボーカルのスタジオ録音の場合1-2コーラス程度の演奏が多い。
メロディとコード #
さまざまなキーで演奏されるが、以下、キーをEとして説明する。なお、Jobim(1963)のメロディのとりかたが絶妙で面白いので、そこに焦点をあてて解説する。
3-4小節目 #
コードが、F♯7で、メロディがE-Cのように動く。このCの音は♯11(♭5)の音という特徴的な音で、調子っ外れというようなタイトルにふさわしい響きを持つ。長3度音程なのだが、歌手泣かせかもしれない。Jobim(1963)の演奏に対して無理にスケールをあてはめると、F♯リディアン♭7スケールのようであるが、もちろん、ホール・トーン・スケールにしても構わない。ただし、あまり露骨にやると下品になるので注意。いや、これは好みの問題か。
7小節目 #
メロディがB-Dという長6度下行で歌いにくそうである。よってコードはG♯m7(♭5)となる。
11-12小節目 #
Jobim(1963)の演奏では、メロディがE♯G♯E♯B♯ | Dのようになっていて、神業というかイタズラっぽいというか、絶妙なセンスである。コードは、2小節ともC♯7とする譜面も見かけるが、ジョビンの演奏を聞くとC♯maj7 C♯7となっているようにも思われ、またそのような録音も少なくない。
13-14小節目 #
コードはF♯7が2小節で構わないだろう。面白いのがJobim(1963)の録音のピアノで、13小節目をG♯F♯EC♯とした上で、14小節目をG♮で始めてGF♯EC♯としている。このGの音の面白さ。そのためにあえて13小節目をG♯にしておくというあたり、抜群のメロディセンスである。
15-16小節目 #
Jobim(1963)のギターのバッキングを聴く限り、コードは、Fmaj7 F7としているようである。そして、ピアノはEE♭Cのように、やはり調子っ外れな感じをうまく表現している。
29-40小節目 #
似たようなコード進行が続くが、A♭maj7 G7 G♭7 F7 A♭maj7 Adim B♭m7 E♭7 A♭maj7 A♭m7 B♭m7(♭5) A7 となっているようである。
45-48小節目 #
F♯m7 Dm7 F♯7/C♯ B7(♭9)/C のように聞こえる。ボサノバらしいベースの動きだが、ベースの指定を無視すると機能的に理解しやすい。
57小節目 #
F♯m7としている譜面もあるようだが、実際にはAmaj7の録音が多い。