Fly Me To The Moon

Fly Me To The Moon

基本データ

  • 作曲年:1954年
  • 作曲・作詞:Bart Howard (1915-2004)
  • 別名:In Other Words

参考音源

Roy Haynes / Out Of The Afternoon (1962)
スウィングの3/4拍子。メンバーはRahsaan Roland Kirk (reeds)、Tommy Flanagan (p)、Henry Grimes (b)という豪華な顔ぶれ。キーはGm/B♭。
The Oscar Peterson Trio Plays (1963)
テーマ部分はピーターソントリオらしい意欲的なアレンジ。ソロはごきげんなスイング。しっとりと歌い上げるボーカルものの録音が多いこの時代においてかなり挑戦的に響いたかもしれない。キーはAm/C。
Frank Sinatra / It Might As Well Be Spring (1964)
シナトラとカウント・ベイシーの共演盤。小気味よいスウィングでの演奏で大ヒット。アポロ10号、11号で宇宙飛行士によって再生されたのはこのヴァージョンだという。キーはAm/C。
Astrud Gilberto / Shadow Of Your Smile (1965)
ボサノバで歌う。キーはEm/G。

曲目解説

ジャズ・ボーカルの定番曲であり、インストゥルメンタルでもよく演奏される。

もともと In Other Words というタイトルで発表されたが、冒頭の歌詞から Fly Me To The Moon というタイトルで定着し、のちに正式に曲名が変更されたという経緯がある。

もともと3/4拍子であるが、4/4拍子のスウィング、Gilberto(1965)によるボサノバなど、さまざまにアレンジされて演奏される。

Verseもしばしば歌われる。

以下、キーをAm/Cとして記述する。

キーについて

Aマイナーで始まりCメジャーで終わる。これらふたつのキーは同一の調号を共有する平行調の関係にある。

このように短調で始まり平行調の長調で終わる曲は、この曲のほかにも、I Hear A Rapsody、Lullaby Of Birdland、You’d Be So Nice To Come Home Toなど数多くある。

キーを伝えるときにCメジャーといってもAマイナーといってもどちらでも差し支えないと考える。

メロディとコード

この曲はその気になれば前半と後半の16小節ずつをまったく同じコード進行で演奏することができる。例えば、1963年のChris Montezの録音は、かなりそれに近いものがある(細かいところでアレンジが施してあるのでまったく同じではない)。

2小節目

冒頭のAマイナーにおけるIVm7すなわちサブドミナント・マイナーであると同時に、直後のG7を経てCmaj7に進行するので、CメジャーのキーのドミナントのG7リレイテッドマイナーセブンスコードI(Im7)も兼ねている(すなわちトゥ・ファイブ・ワンの「トゥ」)。つまり、Dm7は転調前のAマイナーのVIm7であると同時に、転調後のCメジャーにおけるIIm7の役割を果たしており、このコードをかけはしとしてスムーズな転調をしていると考えることができる。このように、転調の前後でそれぞれ和声的機能をはたすかけはしとなるコードのことをピボットという。

なお、この曲の冒頭4小節は、All The Things You AreやKilling Me Softlyの冒頭と同じ進行である。ただし、ボーカルの録音のなかには、冒頭の4小節が、Dm7 G7 Cmaj7 Fmaj7のようになっているものも少なからずある。このような譜面に出会ったときに、くれぐれも「間違っている」とか「変だ」というような言動をとらないように注意したい。

15小節目

コードはCmaj7(C6)で構わない。

しかし、1拍目のメロディが2分音符でアヴォイドのFの音になっており、そのまま演奏しては不協和音になってしまう。

このようなときは、Fdim/C Cmaj7または、Fm6/C Cmaj7のように演奏することで回避することができる。

もちろん、ソロ中は普通にCmaj7で構わない。

26小節目

普通にG7でもよいが、こんにちではE♭dimで演奏することもある。最初にこのようにリハーモナイズしたのが誰か気になるところである。

27-28小節目

ストレート・メロディは直前のBの音の3度下のGであり、この場合、コードは Em7 | A7 |となる。

ただ、エンディングなどでは、メロディを直前のBの音の4度上のEの音で演奏することがあり、この場合は、E7 | A7 | のほうがよいだろう。

その場合、Haynes(1962)の録音のように、E7(13) E7(♭13) | A7(9) A7(♭9) | というテンションによるラインが好まれる傾向にある。