How Long Has This Been Going On?

How Long Has This Been Going On? #

基本データ #

  • 作曲年:1927年
  • 作曲:George Gershwin (1898-1937)
  • 作詞:Ira Gershwin (1896-1983)

参考音源 #

Chet Baker / Sings It Could Happen To You (1958)
ミディアム・テンポで歌う。キーはG。
Carmen McRae / Book Of Ballads (1960)
ヴァースから歌う。キーはB♭。

曲目解説 #

ブロードウェイ・ミュージカル Smarty のために書かれたが、結局この曲はこのミュージカルから外されてしまう。Smarty はのちに Funny Face に改題され、相変わらずこの曲は復活しなかったらしいが、映画版 Funny Face では使われたようだ。

なお、Smarty でボツになった直後、この曲はミュージカル Rosalie の中で使われることになり、おかげでこの曲も知られるようになったが、1937年、Rosalie が映画化されたとき音楽はすべてコール・ポーターによって新たに作詞・作曲されたため、ほかの曲もろともこの曲が映画で採用されることはなかった。

メロディとコード #

以下、キーをGとして解説する。

1-2小節目 #

大きく2つのバリエーションがある。

ひとつ目は、D7 | Ddim7 | であり、ふたつ目は、Am7 | G♯dim7 | である。オリジナルは前者のようであるが(音源未確認)、ジャズでは後者のコードもよく用いられる。

機能的に比較してみよう。

まず1小節目のD7はドミナントであり、Am7はそのリレイティブ・コードである。したがって両者はほぼ同じ機能をもつと考えてよい(巨視的に見てドミナント)。

次の2小節目であるが、Ddim7を転回するとG♯dim7になるので、これらは実質的に同じコードである。そして、いずれにしてもディミニッシュ・スケールを想定できるのであるが、Vdim7(あるいはその転回形)でディミニッシュ・スケールを想定できるのは大変珍しいケースであるともいえる。

3-4小節目 #

D7 / Dm7 G7 | Cmaj7 Cm | が基本である。ただし、1-2小節目をAm7 | G♯dim7 | とした場合、3小節目前半をAm7もしくはAm7 D7 とすることができる。

また、4小節目後半をサブドミナント・マイナー(Cm)代理であるF7とすることもできるしC♯dimとしてもよい(後者は例えばJune ChristyとStan Kentonの1955年のデュオが採用)。あるいは、CmをそのままにしておいてCmaj7のほうをC♯m7(♭5)という演奏をすることもできる(例えばBaker, 1958)。

5小節目 #

1-2拍目のコードは、Bm7としてもよいが、メロディが階名ド(G)でありこの音がBm7の短6度上であることがどうしても気になるのであればG/Bのように書く。

3-4小節目はB♭dim7である。

21-24小節目 #

ここは17-20小節目とメロディ的にもハーモニー的にも対をなしているが、大きくふたつの解釈がある。

ひとつ目は、21-23(または22)小節目をについて、Bm7 Em7 を2拍で繰り返す方法。もうひとつはBm7 / C♯m7(♭5) F♯7 を繰り返す方法で、オリジナルは前者のようである。

いずれにしても、この箇所はBマイナー・キーに一時的に転調していると考える。そして、前者では、Im7 IVm7 すなわち、トニック・マイナー、サブドミナント・マイナーの繰り返しとみなす。

いっぽう、後者では、Im7 / IIm7(♭5) V7 となっており、多いく見ればドニック・マイナー-ドミナントの繰り返しである。このバリエーションとしては、Bm7 / C♯m7(♭5)/F♯ F♯7がある。

また、音源を見つけることができなかったが私は3つめのアイディアとして、Bm Edim7/B の繰り返しを提案したい。

いずれにしても好みの問題といえるだろう。

なお、23-24小節目の処理であるが、23小節目を21-22小節目と同じ繰り返しにしておいて、24小節目をBm7 E7(B♭7)とする方法もあるが、23-24小節をBm7 B♭dim7 | Am7 D7 とする方法もある(例えばSarah Vaughanの1978年の録音)。

25小節目 #

ここは1小節目と同様である。ただし、直前の小節がAm7 D7であることが多いので、ここだけAm7 D7 と演奏するケースもある(たとえばFitzgerald1950)。また、ジャズでは1小節目のコードがD7ではなくAm7が好まれる理由も24小節目から25小節目の進行の都合があるのかもしれない。

個人的な考え方であるが、Am7 D7からそのままD7にとどまってもいけないことはないと思う。確かにビバップのイディオムではこのような進行を避ける傾向にあるけれども、ビバップのイディオムへの過度の依存がかえってコード進行の可能性を狭めてしまったという点に目をつぶってはいけないのではないか(例えばスイング時代以前のコード進行を研究すると、意外な新しさに気付かされることがある)。