I Only Have Eyes For You

I Only Have Eyes For You #

基本データ #

  • 作曲年:1934年
  • 作曲:Harry Warren (1893-1981)
  • 作詞:Al Dubin(1891-1945)

参考音源 #

Coleman Hawkins (1944)
いくつかのコンピレーション盤に収められている。ピアノはテディ・ウィルソン、トランペットはロイ・エルドリッジ。キーはC。
Billie Holiday Sings (1952)
1956年のVerve盤のSolotudeというアルバムも同じテイク。ピアノのOscar Peterson、ギターのBurnie Kessell、ベースのRay Brownなどが参加。キーはG。
Frank Sinatra / Point Of No Return (1961)
キャピトル盤への最後の録音。キーはB♭。
Oscar Peterson Plays the Harry Warren & Vincent Youmans Songbooks
Oscar Peterson Plays the Harry WarrenとしてリリースされたものがCD化に際しこのようなかたちで発売されている。バーニー・ケッセル、レイ・ブラウンとのトリオ。キーは、B♭。
Frank Sinatra – Count Basie / The Complete Reprise Studio Recordings (1960)
フランク・シナトラは1940年代にもこの曲を録音しているが、これは1960年の録音でカウント・ベイシー楽団との共演。内声を半音で動かすアレンジは、Hawkins(1944)の録音からの着想かもしれない。キーはB♭。
Carmen McRae / The Great American Songbook (1972)
実況版で、ゆったりしたテンポでメンバーもいきいきとしている。キーはF。

曲目解説 #

1934年の映画 Dames のために書かれた。

主だったジャズ・ボーカリストがレパートリーに加えているほか、インストゥルメンタルでの演奏も少なくない。

メロディとコード #

さまざまなキーで演奏されるが、以下、キーをCとして説明する。

5-6小節目 #

基本的にはHawkins(1944)のようにCmaj7だけで演奏することもできるが、メロディにやや間があるので、コードを動かしたくなる場合がある。

Peterson(1954)は、Cmaj7 Dm7 | Em7 F7 | としているし、Sinatra(1960)は、Cmaj7 | F7 |としている。このへんは、完全に好みの問題で、譜面上Cmaj7のままにしていても、McRaeのテイクのようにメンバーが機転をきかせてくれるだろう(このテイクは、この箇所ごとにメンバーのプレイが微妙に違うので、おそらく譜面を見ていないか、仮に見ていたとしても細かな指示はないのではないかと推測される)。

7-8小節目 #

基本的には、Em7 | E♭m7 | だが、Em7 A7 | E♭m7 A♭7 | のようにしてもよい。

それから、23-24小節目も同様で、この曲全体を通じてハーモニックなモチーフになっている。

♭IIIをルートとするコードは、♭IIIm7のほかに、♭III7や♭IIIdimがよく出てくる。混同しやすいケースもあるので、整理して区別できるようにしておくとよい。

20小節目 #

21小節目をどうするかということにも関係しているが、ストレート・メロディは19小節目からGの音がタイで伸びている。

ところが、実際には、E♭m7 A♭7とする録音が多い(ただしこのハーモニーはG音と衝突するので、G音はあまり伸ばさず20小節目に入る前に切り上げたほうがよい)。このアイディアはHoliday(1952)ではすでに行われていて、Peterson(1954)、McRae(1972)なども踏襲しているから面白い。ただし、Sinatra(1960)は19小節目をEm7、20小節目をA7としている。

なお、これらの進行は、21小節目がDm7またはDm7(♭5)であることを前提としている。Stan Getzの1951年の録音のように、Fmaj7(あるいはFm)に進行する場合にはGm7 C7 などとするのがよい。

21-22小節目 #

まず、21小節目のストレートメロディは、4分休符ののち、4分音符でD C A♭となっている。手元の史料によればオリジナルのコードは、Fmaj7 Fm | Dm7(♭5) G7 | のようになっているようだ。

だが、ジャズの演奏ではこのチェンジは前後関係からちょっとせっかちすぎる。原曲のこのチェンジを尊重するなら20小節目をC7またはGm7 C7として、この小節をFm | B♭7 | もしくはFm7 | G7 | などとするのがよい(Stan Getzが1951年の録音では前者を採用している)。

ただし、こんにちでは、そもそも4拍目のメロディをA♭ではなくA♮にしてしまう場合もある。そうすると、この個所のコードは、Dm7 | G7 |とシンプルになる(20小節目の解説も参照されたい)。実際Holiday (1944)やPeterson(1954)、McRae(1972)などは、メロディをA♮にして、コードをDm7にしている。

ただ、オリジナル通り4拍目をA♭にして演奏したい場合もあるだろう。この場合、Sinatra(1960)のように、Dm7(♭5) | G7 | などとする方法がある。

このように、ハーモニーに影響するメロディが変更するようなときには、注意が必要である。似たようなケースにAll Of Meの29小節目がある。

23-24小節目 #

7-8小節目を参照。なお、参考までにSinatra(1960)は、Em7 | E♭m7 A♭7 | としている。

31-32小節目 #

オリジナルはE7 | A7 | でこの採用率は高い。

メジャー・キーの曲で、IIIがルートのコードで、それがIIIm7かIII7で迷うことがある。このとき、メロディもルート(すなわち階名「ミ」)を伸ばしており、VI7に進行するとき、大抵の場合III7であることが多い。たとえコードがIIIm7になっていてもあえてIII7で弾くピアニストやギタリストは少なくないように思う(つまり譜面が不適切と判断しているということ)。

これは、IIm7とII7で迷う場合で、メロディがルート(すなわち階名「レ」)、メジャー・キーでV7に進行するような場合にもあてはまる。