Lulaby Of Birdland

Lulaby Of Birdland

基本データ

  • 作曲年:1952年
  • 作曲:George Shearing (1919-2011)
  • 作詞:George David Weiss (1921-2010)

参考音源

Sarah Vaughan with Clifford Brown (1954)
有名なイントロは、定番中の定番になっている。キーはBm。
An Evening with George Shearing & Mel Torme (1982)
この曲でメル・トーメはシアリングとの共演でグラミー賞ベスト・ジャズ・ヴォーカル・パフォーマンス(男声)部門を2年連続受賞しているが、そのうちの1枚。

曲目解説

よく知られているように、1952年、音楽プロデューサーのMorris Levyはニューヨークのラジオ局WJZでDJ番組を放送することが決まり、番組テーマ曲の録音をピアニストのGeorge Shearingに依頼した。だが、ShearingはLevyの用意したテーマ曲が気に入らず、代わりに1曲書き下ろしてできたのがこの曲である。Morris Levyが所有するジャズ・クラブ「バードランド」にちなんでこう名づけられた。

その後、George Weissによって詞がつけられ、サラ・ヴォーンとクリフォード・ブラウンの共演で大ヒットする。なお、作詞者にB. Y. Forsterがクレジットされることがあるが、これは契約上の都合によるWeissの変名である。最近出版されている曲集にはWeissの名前でクレジットされていることがほとんど。

曲の分析

様々なキーで演奏されるが、キーをDmとして説明する。

メロディ

最後の2小節、すなわち31-32小節目のメロディには、おおまかにふたつのバリエーションがある。すなわち、

  1. 7-8小節目と同じメロディを使う
  2. 15-16小節目と同じメロディを使う

例えば有名なVaughan(1954)は前者を採用しているが、同じ年に録音したChris Connorは後者である。後者の場合、歌詞「all because」が省略される(Connerのエンディングはその後も省略されている)。

もちろん、どちらのメロディを演奏するかによって、コードもそれに伴い変えなくてはならないことはいうまでもない。

作曲者本人は前者を使うことが多いようである。しかし、信用できる資料(例えば、高橋慶司編著『スタンダードジャズのすべて2』(全音楽譜出版社))などによれば、ブリッジ(サビ)後のAセクションは8小節ではなく10小節のメロディが記載されている。これが案外オリジナルなのかもしれない。

本来なら可能な限り録音資料を取り寄せて検証する必用があるのだが、たとえばShearing & Torme (1982)は冒頭ルバートで演奏される1コーラス目にこのメロディを採用している。

また、この曲は後に歌詞が作られたときに、もとのメロディが改変された可能性がある。例えば、24小節目はその疑いが強い

コード

1-2小節目

いわゆるマイナーの1-6-2-5なのだが、実は注意が必要である。

2小節目のメロディがB-D-C♯とDメロディック・マイナー・スケールに基づいている。だから、この小節目の前半でIIm7(♭5)にあたるEm7(♭5)を使うとメロディとの衝突を招くので不適切である。理論的にはEm7も可能であるが、Shearing自身が演奏するようにふつうE7が好まれる(そのほうが1小節目後半Bm7(♭5)からの進行も収まりがよいように思う)。

3-4小節目

マイナー・キーから並行調(Cメジャー)へ展開する。

Shearing自身、Dm7 B♭maj7 | Gm7 C7|というように演奏している。B♭maj7が省略された譜面も目にするが、5小節目のAm7まで、ルートとメロディで協和音程を生み、かつ、Am7から3度下行する進行ができるのでB♭maj7を省略しないほうが個人的には好きである。

同様の理由で、5小節目もFmaj7も誤りではないが、Shearing自身がそうしているようにAm7が美しいと思う。

5小節目

Am7 Dm7。ただし前半はFmaj7も誤りではない。後半D7はメロディと衝突するので誤り。

7-20小節目

ブリッジの前半は、D7(I7=サブドミナントへのドミナント) | Gm7(IVm7=サブドミナントマイナー) | C7(平行調のドミナント、すなわちV7と考える) | Fmaj7(平行調のトニックすなわち、Imaj7) |である。

D7はAm7(♭5)-D7に、また、C7はGm7-C7に変化させることも可能だが、メロディとの兼ね合いから変化させないほうがシンプルであるようにも思う。

しかし、Vaughan(1954)はG7の箇所だけGm7(♭5)-C7とリハーモナイズしている(23小節目も同様)。これは大変効果的なリハーモナイズとして注目に値すると思う。

24小節目

Em7(♭5)-A7とする場合もあり、メロディとも衝突しないが、「Fmaj7 A7」もしくは「Fmaj7 / Em7(♭5) A7」という演奏が多い。

事例研究

いずれもDmに移調した。

Vaughan(1954)イントロのコード進行

誤ったコード進行を記した出版物が多いので、ここで指摘しておく。

Dm7 G7 Gm7 C7 Fm7 B♭7 E♭7
なお、エンディングは、最後の小節のE♭7のあとにAm7がつく。

Vaughan(1954)のコード進行(コーラス)

Dm7 E7 A7 Dm7 Gm7 C7
Am7 Dm7 Gm7 C7 Fmaj7 B♭7 / E7 E♭7
Dm7 E7 A7 Dm7 Gm7 C7
Am7 Dm7 Gm7 C7 Fmaj7 Cm7 Fm7 B♭m7 E♭7
D7 Gm7 Gm7(♭5) C7 Fmaj7
D7 Gm7 Gm7(♭5) C7 Fmaj7 / Em7(♭5) A7
Dm7 E7 A7 Dm7 Gm7 C7
Am7 Dm7 Gm7 C7 Fmaj7 B♭7 / E7 E♭7

16小節目は、ちょっと聞き取りづらい。ピアノソロのコーラスを参考にした。