Night And Day

Night And Day #

基本データ #

  • 作曲年:1932年
  • 作曲・作詞:Cole Porter (1891-1994)

参考音源 #

Charlie Parker / Cole Porter Songbook (1952)
ストリングスによる。キーはE♭。
Ella Fitzgerald / Cole Porter Songbook (1956)
タムタムのビートによるヴァース。キーはA♭。
Frank Sinatra / A Swinging Affair (1957)
Sinatraは何度か録音を残している。ヴァースの有無、テンポ設定などが異なり大変興味深い。キーはDで始まり転調してEA♭。
Bill Evans / Eveybody Digs Bill Evans (1959)
ところどころラテン風に演奏しているのは、異国趣味の曲が多いポーターの作風を意識してのことだろうか。キーはE♭。
Anita O’day Swings Cole Poter With Billy May (1959)
アップテンポで演奏される。キーはB♭。
Stan Getz and Bill Evans (1964)
やはり部分的にラテン風に演奏している。ソロの1コーラス目を8小節ごとにブレイクさせてのソロは緊張感があり聴き応えがある。

曲目解説 #

1932年のミュージカル Gay Divorce のために書かれた。主演はフレッド・アステア。フレッド・アステアによる同年の録音は大ヒットし、10週連続でヒットチャートのトップの座を占めた。

そしてミュージカルは1934年に The Gay Divorcee として映画化される(やはり主演はアステア)。なお、映画版の音楽ではPoterのオリジナルスコアはほとんど使われていないという。

ヴァース #

一定の音だけからなるヴァースのメロディは、Porterがモロッコ滞在中にきいたタムタムのビートに由来するらしい(David Ewen著Great Men of American Popular Song)。そして歌詞にも、「タムタムが絶えず刻むビートのように」という一節がある。

だから、ヴァースはときにドラムのタムタムのビートとともに演奏されることが多い。

また、同じくヴァースの歌詞中「雨粒がポタポタポタと音を立てるように」というような一節があるのは、Porterがニューポートの友人を訪ねたときに、友人の夫人が壊れた雨といについて「ポタポタいう音は腹立たしい」と言ったことがヒントになったという説があるらしい(Will Friedwald著Stardust Melodies)。

だから、ヴァースではギタリストやピアニストがポロンポロンと雨の音を真似て演奏することが多い。

以上、さぞ自分が勉強熱心のように書いたが、Jeremy WilsonによるJazzStandards.comの記事からの孫引きであることを正直に白状しておく。邦訳がでないものか。

メロディとコード #

以下、キーをE♭として記述する。

1-4小節目 #

Evans(1959)はCm7(♭5) | F7 | B♭maj7 | B♭maj7 |のように演奏している(Getzとの共演(1964)も同様)。

What Is This Thing Called Loveの5-8小節目と同じ進行で、いかにもPorterらしいので、こちらがオリジナルなのかと一瞬考えてしまったが、いろいろと聴き比べた結果、Bmaj7 | B♭7 | E♭maj7 | E♭maj7 |のほうがオリジナルだと思う。

Porterはメロディ・歌詞ともに魅力的だが、ありそうであまりみかけないコード進行)も多く(例えばこの部分と対をなす33-36小節目など)、たいへん興味深い。

9-12小節目 #

Am7(♭5) | A♭m7 | Gm7 | G♭dim7 |のように演奏されることが多い(例えば、この進行による古い演奏として1946年のArtie Shawによる録音を見つけた)。

しかし、Parker(1952)はF7 | E7 | E♭maj7 | F7 |と演奏している。Tommy Dorseyの1937年の録音もほぼ同じチェンジで演奏している(ただしベース音の指定がある)ので、断定はできないが案外このあたりがオリジナルに近いのかもしれない。こうして比べると、原曲のほかにコードの代理機能が見えてくるようで大変示唆深い。

ちょっとしたハーモニーの追加 #

例えば1小節目に対して(ということは48小節目に)C♯m7 F♯7、あるいは33小節目に対して32小節目にA♭m7 D♭7などを挿入したアレンジがある。もちろん、5小節目や37小節目に対して直前の小節で似たようなことをしてもよい(やり過ぎるとコテコテになって、それはそれでよい場合がある)。

いくつかあるシナトラの録音などで見つけることができる。バンドでやるときはある程度決めておいたほうがよい場合もあるが、誰かが仕掛けたらついていけるくらいの耳と柔軟性を持つのが望ましいと思われる。