Old Folks #
基本データ #
- 作曲年:1938年
- 作曲:Willard Robison (1894-1968)
- 作詞:Dedette Lee Hill(1900-1950)
参考音源 #
- Kenny Dorham/Quiet Kenny (1959)
- オリジナルとスタンダードを半々で収めた名盤。ミディアム・テンポで演奏している。キーはE♭。
- Miles Davis/Someday My Prince Will Come (1961)
- これも名盤。スロー・テンポで演奏。キーはF。
- Ernestine Anderson / Never Make Your Move Too Soon (1980)
- ゆったりとしたテンポで歌う。ピアノはモンティ・アレクサンダー。キーはA♭。
曲目解説 #
メロディとコード #
以下、キーをFとして説明する。
2小節目 #
全体のキーをFとすると、前半がその平行調のトニック・マイナーDm7、後半がもとの(全体の)キーのサブドミナントA♭maj7へのセカンダリ・ドミナントCm7-F7という構成である。
このとき、2拍目にD♭7を置くことができるが、これはメロディのGが増11度という効果的なテンションに相当していることからとてもよいサウンドが得られる。このコードは機能的には3拍目Cm7へのドミナントG7のトライトーン代理である。と、同時にG7は1拍目Dm7とも関係があるコードであることにも留意したい。ただし、2拍目にこのような処理をすると、スムースにコードを進行させる効果があるが、反面、緊張感を損なうという側面もあるかと思う。私自身は、メロディやソロのライン、あるいは全体のサウンドを聴いて、慎重に判断するようにしている。
さて、様々な音源にあたると、この小節はさまざまなバリエーションがある。例えば、ギタリストのウェス・モンゴメリの1958年の演奏を聞くとここをいきなりCm7 F7としている。これはやや意外性があるようだが、初演のラリー・クリントン楽団(1938年)がF7のみで演奏しているので、むしろオリジナルに近いということになる。
4小節目 #
ここは大きく3つのバリエーションがある。
- Am7 D7
- Am7(♭5) D7
- A7 D7
つまり、メジャー・キーにおいて、メロディが階名「ミ」のときの「サン・ロク」の「サン」が、マイナー・コードなのか、ハーフディミニッシュ・コードなのか、それともドミナント・セブンス・コードなのか、ということが問題なのであって、これを自覚的に演奏できるようになってようやく脱・初心者ではないかと私は考えている。耳を使って演奏することはもちろん、日頃、様々な音源を聴いているときに、これらのサウンドをきちんと聞き分けることができるか、またそのような習慣が身についているかということが非常に大きな差になる。
別にどれがよいとか悪いとかではない。自分のリーダーとしての表現、あるいは、ジャムセッションのように譜面なし、リーダー不在で演奏するときに、その場のバンドの方向性にかなっているかで判断すべきことである。
例えば、Anderson(1980)を聞くとAm7 D7であるし、Dorham(1959)やDavis(1961)はA7 D7である。また、チャーリー・パーカーの演奏(1950年代のコーラスと一緒の録音)を聞くとAm7(♭5) D7としているがこれはやや少数派か。
6小節目 #
ここも4小節目同様「サン・ロク」の「サン」をどうするかが議論になるだろう。様々な音源を参照して、ぜひ自分に耳で聴いて違いを判断して、自身の表現に生かしていただきたい。
8小節目 #
シンプルにGm7 C7としてよい。ただし、Anderson(1980)のように、Gm7 C7 Fm7 B♭7のように演奏することもできる。これはややモダンな進行で32小節目のターンアラウンドにも応用できる(Fmaj7 / Fm7 B♭7)。
17-18小節目 #
ブリッジの冒頭が、Fmaj7なのかそれともF7(Cm7を含む)なのかは判断が分かれる。曲集では、F7またはCm7-F7としているものが若干多いようだが、少なくともオリジナルはFmaj7のようである。初演の録音ではFmaj7 | F7 | としている。
50年代のパーカーや1959年のマックス・ローチはFmaj7 | Cm7 F7|としている。またウェス・モンゴメリやDavis(1961)、62年のオスカー・ピーターソン、また多くのデクスター・ゴードンの録音などは、Fmaj7 C7 | F7 | としていて、やはりトニック・メジャーで始めている。
一方、57年のルー・ドナルドソンはCm7 | F7 | 、またDorham(1959)やAnderson(1980)は原則としてF7で演奏している。
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