Over The Rainbow

Over The Rainbow #

基本データ #

  • 作曲年:1938年
  • 作曲:Harold Arlen (1905-1986)
  • 作詞:Yip Harburg (1896-1981)

参考音源 #

Bud Powell / Amazing Bud Powell, Vol. 1 (1951)
ピアニスト、バド・パウエルの代表的な演奏。ソロで演奏される。キーはE♭。
Sarah Vaughan / Soft And Sassy (1961)
スローテンポで1コーラスのみ演奏される。キーはB♭でブリッジのあとBに転調する。

曲目解説 #

1939年の映画『オズの魔法使い』でジュディ・ガーランドが歌った。

メロディとコード #

キーをE♭として説明する。

曲の持つシンプルなメロディと歌詞に対して、多くのジャズ・ミュージシャンがさまざまなハーモニーをつけている。ぜひ何テイクか聴き比べて違いを聞き取り、中級者以上であれば実際に採譜してみることをおすすめする。

1-2小節目 #

ハーモニーの骨格は、1小節目をトニックE♭maj7で初めて、3小節目がサブドミナントA♭に進行させるということである。極端なことを言ってしまうなら、1-2小節目はずっとE♭maj7のままでも構わないのである。

2小節目はGm7とするケースが多い。これは和声的にトニック・メジャーE♭maj7代理とみなすことができる。さらに、この直前、すなわち1小節目の3-4拍目をCm7とすることともできる。これも同様にトニック・メジャーの代理であるとともに、Cm7-Gm7という4度下行進行が、短調におけるのIVm7-Imを思わせる進行とになる(屁理屈を承知でいえば、GmをImとすればGマイナー・キーはE♭メジャー・キーの平行調の下属調にあたる)。

2小節目をGm7とする場合、1小節目の後半を、Gm7へのセカンダリドミナントのD7とすることもできる。もちろん、リレイティブ・コードとセットで、Am7(♭5) D7も好まれる。

同様に、2小節目後半を、3小節目のA♭maj7 に対するセカンダリ・ドミナントE♭7、もしくはリレイティブ・コードをともなうB♭m7-E♭7としたくなる。ところが、いずれの場合も2小節目3拍目のメロディD音と衝突してしまうのでできない。そこで、3拍目をB♭m7ではなくB♭7とする(ソロ中はB♭m7に変更してもよいだろう)ことになるが、Powell(1951)はこの問題をEm7 A7としてクリアしている。A7はE♭7のトライトーン代理であり、Em7はそのリレイティブ・コードである。

なお、Vaughan(1961)は、2小節目後半をD7 E♭7としているが、これは思いつかなかった。

3-5小節目 #

ハーモニーの骨格として、3小節目ならびに5小節目の前半がサブドミナント・メジャーA♭maj7、5小節目の後半がサブドミナント・マイナーA♭mで、4小節目はトニック・メジャーだが、さまざまな音源を聴くとその代理のGm7が好まれる傾向がある。

4小節目がトニックなので、その直前の3小節目後半をドミナントB♭7に替えることもできるが、少し工夫して、ベース音をそのまま4度のA♭のままにして、B♭7/A♭とするのも美しい。

また、5小節目前半をA♭maj7の代わりにFm7として、Fm7-A♭mという進行とすることもできる。これは、4小節目の後半とセットとして判断するとよいだろう。すなわち、ここを5小節目の最初のコードに対するセカンダリドミナント(とリレイティブ・コード)とのセットにして考えるのである。

具体的には、4小節目の後半をB♭m7 E♭7として5小節目の前半をA♭maj7とするか、もしくは4小節目後半をC7 とし5小節目前半をFm7とするのである。後者の場合、Gm7をGm7(♭5)とすることも可能であろう。

ただし、注意しなくてはいけないことは、あまり細かくコードをいじると、曲全体の印象をぼんやりしたものにしてしまうことだ。この曲にはとてもシンプルで美しい歌詞とメロディがついている。コードのバリエーションにはさまざまなものが考えられるが、全体の流れを常に視野に入れて取捨選択しないと収取がつかなくなる可能性がある。

実際に自分が演奏するイメージを持つことが大切である。数年立ってから、好みが変わるということもよくあることだ。

5-7小節目 #

7小節目のトニック・メジャーE♭maj7に向かう「サン・ロク・ニ・ゴ・イチ」となる。ダイアトニック・コードばかりをつかって、Gm7 Cm7 | Fm7 B♭7 | E♭maj7 でも構わないが、こんにちではCm7よりもC7のほうが好まれるであろう。なぜならば、6小節目4拍目のメロディがA♭となっていてCm7よりC7のほうが親和性があるからである。

さらに、Gm7やFm7についてもドミナント・セブンス・コードを選択肢に入れてもよいだろう。

例えば、5小節目前半のメロディは、G E♭ Fとなっており、G7とすることでE♭が♭13thのテンションとして響かせることができる。

勘のよい人であれば、、6小節目全体をG713 G7(♭13) C79 C7(♭9)という常套句的な進行を思い浮かべるかもしれない。このようにすることで、E-E♭-D-D♭という内声のラインを美しく響かせることができるからだ。個人的に、3拍目をGm7/Cにするがこれは好みの問題だろう。C7sus49という表記のほうが分かりやすいというならそう書いて構わない。

なお、5小節目4拍目のメロディA♭音はC7の♭13のテンションにあたるため♭9のテンションが導かれることになる。

6小節目前半がFm7かF7かというのは完全に好みの問題だろう。

ちなみに6小節目前半をF7とした場合でもこの小節全体に対して5小節目で例示したクリシェ的なテンションのライン(F713 F7(♭13) B♭79 B♭7(♭9))をそのまま使うことはできない。なぜならば2拍目でメロディと衝突するからだ。

21-22小節目 #

E♭maj7 | Am7(♭5) D7 | のように演奏されるケースが多いかと思うが、21小節目後半をCm7とすることで、21小節目から22小節目前半にかけてベースの3度下行進行となる。こうすると、ベース奏者は、ルートを2分音符でなぞるほかに、E♭-D-C-B♭-Aと4分音符でスケールを下行するラインを選択することができるようになる。このラインは低い音域ではなく、やや高めの音域で演奏するとより効果的である。

####23-24小節目

ここもよく吟味したい。

いわゆる「サン・ロク・ニ・ゴ」、すなわちGm7 C7 | Fm7 B♭7 | でも構わないが、ここでは、6小節目で指摘したようにFm7に代えてF7を検討する価値がある。

また、C7に代えてG♭dimとすることも検討してよい。この場合、直後のコードはF7よりもFm7のほうがスムーズであるように私には感じられる。なお、G♭dimに対して、勝手にC7を代理コード的に演奏する奏者が少なからずいるが、私は誤りだと考える。その理由は、Gdimを想定したソロラインやベースラインとC7を想定した和音を同時に演奏されるときに、どういう事態が起こるかを考えれば明白に導かれるだろう。

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