Shiny Stockingse

Shiny Stockings

基本データ

  • 作曲年:1955年
  • 作曲:Frank Foster (1928-2011)
  • 作詞:Ella Fitzgerald (1917-1996)

参考音源

Count Basie / Basie In London (1956)
作曲された翌年の録音。イントロから、テーマ、ソロ、そしてシャウト・コーラスと全体として大きなクレッシェンドになっており、ベイシー楽団の魅力がいっぱい。キーはA♭。
Ella Fitzgerald-Count Basie / Ella and Basie! On The Sunny Side Of Street (1963)
カウント・ベイシー楽団と、エラ・フィッツジェラルドの共演盤。1コーラスの大半をカルテットとともに歌う。ベイシー楽団のみの録音と聴き比べてみるのも面白い。キーはB♭。

曲目解説

カウント・ベイシー楽団のテナー奏者で作編曲でもバンドに貢献したフランク・フォスターによる名曲。

1963年には歌手のエラ・フィッツジェラルドが自作の歌詞でベイシー楽団と録音し、以来、ベイシー・ナンバーの枠を超えて今やジャズ・スタンダードの1曲に数えられるようになった。

なお、1963年ころ作詞された公式なフィッツジェラルドの歌詞のほか、ジョン・ヘンドリックスが別の歌詞をつけて演奏した録音が残っている。時期的にちょうど同じ頃で、ひょっとしたらヘンドリクスのほうがやや先に作詞した可能性もある。

メロディとコード

キーはA♭として解説する。

7小節目

Cm7でも構わないが、私ならA♭maj7/Cというように表記するかもしれない。

8小節目

いちおうBdim7が正しい。1拍目のメロディのB♭は、コードトーンの全音上に当たる。

このように、ディミニッシュ・コードにおいて、コード・トーンのそれぞれ全音上の音をテンションのように使うことができる。このメロディのB໽以外にも、例えばBasie(1956)のテーマの次、トランペットソロのバッキングのサックスセクションのリードヴォイスはGであり、これはコードトーンFの全音上である(同じ録音のシャウトコーラスも同様)。

ただし、3拍目ウラ、メロディの付点4分音符Aは、Bdim7のコード(およびスケール)に矛盾する音である。Basie(1956)を聴くとテーマのミュートによるブラス・ソリはユニゾンに逃げているが、もしヴォイシングするならば、Bm7などを想定することができる(そのようなリードシートを見たことがある)。

ただし、同じ録音のピアノ・ソロ後のアンサンブルで、この個所はF7でアレンジされている。アップテンポで演奏しているオスカー・ピーターソンも、ここをCm7 F7にしている。本来、Bdim7とF7は似て非なるもの、想定されるスケールがまったく違うので、このふたつのコードは両立しない。どちらを採用するのも自由であるが、どちらにするか揃えておく必要がある。

9-16小節目

9小節目から、B♭m7-E♭7、Cm7-F7、Dm7-G7と、いわゆるトゥ・ファイブが連続する。

最初のB♭m7-E♭7はIIm7-V7であるが、次の二組は転調しているとみなし、それぞれB♭、CのIIm7-V7のように演奏するのが基本であろう。つまり、Cm7をA♭キーのIIIm7(すなわちダイアトニックのフリジアン)として演奏してはこの曲の仕掛けが台無しになってしまう(例えばSatin Dollの3-4小節目にも同様のことがあてはまる)。

調号のフラットを2つずつ外していく方向へどんどん転調し(つまりちょっとずつサウンドが明るく華やかになってゆく)、15小節目でポンとCメジャーに解決する。そして次の16小節目はCm7(♭5) F7(Cm7 F7じゃないところがミソ)で一気にもとのキーのIIm7(すなわちB♭m7、17小節目)へ引き戻しているこの展開がおしゃれなのである(おそらく、ストッキングが今よりずっと高価でおしゃれだった時代である)。