Skylark #
基本データ #
- 作曲年:1941年
- 作曲:Hoagy Carmichael (1899-1981)
- 作詞:Johnny Mercer (1909-1976)
参考音源 #
- Glenn Miller (1941)
- 1942年には多くのミュージシャンによってこの曲が録音されているが、歌手Ray Eberleをフィーチャーしたグレン・ミラー楽団が初録音という。キーはD♭。
- Hoagy Carmichael / Hoagy Sings Carmichael (1956)
- 作曲者自身による自作ばかり集めたアルバム。アルト・サクソフォンのArt Pepperのソロも聴くことができる。キーはA♭。
- Art Blaykey And The Jazz Messengets / Caravan (1962)
- トランペットのFreddie Hubbardをフィーチャーしている。キーはE♭。
- Ella Fitzgerald / Hoagy Carmichael Songbook (1964)
- エラによるカーマイケル集。キーはA♭。
曲目解説 #
直接の作曲動機はコルネット奏者・ピアニストで、作曲者Hoagy Carmichaelの友人でもあったBix Beiderbeckeの伝記ミュージカルのためと言われており、Bix Lix(つまり、Bix Licksの洒落。lickは常套句的フレーズのこと)というタイトルになるはずであった。
しかし、このミュージカルの制作は中止され(1950年に映画化されている。もちろん音楽はCarmichaelが担当)、Mercerが歌詞をつけてSkylarkとして出版された。
Skylarkといえばこの録音という決め手の一枚が思い浮かばないが、美しいメロディと歌詞をもつためか、多くのジャズ・ミュージシャンが好み、インストゥルメンタルも含めてさまざまな録音がある。
メロディとコード #
さまざまなキーで演奏されるが、以下、キーをE♭として説明する。
メロディに対してどのようなハーモニーをつけるかということは、ジャズ・ミュージシャンやアレンジャーにとって重要な表現の要素のひとつである。特にこの曲のように美しいメロディを持つ曲ついては、メロディや演奏をひきたてつつ、ときに意外性を込めながら創造性を発揮しようと、表直後の1942年からさまざまな試みが行われていて聴き比べも楽しい。
1-2小節目 #
素直にE♭maj7 Fm7 | Gm7 A♭maj7 | とするのが基本であるが、トニック・ペダルにしたり(例えばMiller, 1942)、ドミナント・ペダルにしたり(Blakey, 1962)することもある(後者は、C7(♭9)/B♭ Fm7/B♭ | Ebmaj7/B♭ Fm7//B♭のように聞こえる)。
3-4小節目 #
基本的には、4小節目前半はサブドミナント(A♭maj7)で、5小節目の冒頭はダブルドミナント(F7)で、そのあいだをどうするかということで議論が分かれる。
3小節目は、E♭maj7(トニック) E♭7(サブドミナントへのセカンダリ・ドミナント)とするのがもっとも素直である。E♭7をトライトーン代理のA7としても美しい。Blakey(1962)はさらに発展させて、Em7 A7としている。Carmichael(1956)はGm7 C7 B♭m7 A7のようにしている(ただし11小節目)。
4小節目後半は5小節目をどうするかによって変わるが、仮にF7とするならば、Gm7 C7もしくは、Gm7 G♭7となるであろう。
5-6小節目 #
まず、6小節目から。これは、7小節目のトニックE♭maj7へ進行するために、Fm7 B♭7またはこれに類する進行とするのがもっとも素直である。
5小節目冒頭は、Carmichael自身が演奏しているように(1956)F7とすることがあるが、サブドミナントA♭maj7としている録音も少なくない(この場合6小節目前半をF7とすることもできる)。もし、前者であるならば、5小節目全体をF7としてもよいが、Carmichael(1956)がF7 G♭7としているのは興味深い。もし後者であれば、5小節目後半は1拍ごとにGm7 C7などとするのが素直であろう。
ちなみに、Miller(1942)は、A♭maj7 B7 | Fm7/B♭ B♭7 | としているし、Blakey(1962)は、Cm7 B7 B♭m7 A7 | A♭maj7 / Fm7 B♭7 | なのであって、可能性はもっと広い。
15小節目 #
3-4拍目のメロディがD♭ C♭ B♭ A♭という特徴的な動きをしている。これをいわゆるサブドミナント・マイナーの典型的なメロディと考えるならば、A♭mやその代理コードのD♭7をあててもよいが、B♭7altのコードをあてることもできる。
21小節目 #
この曲はブリッジ(17小節目)で下属調に転調し、この小節からさらにその平行調に転調している。
3拍目のC♭の音は、一種のブルーノートとみなして、ハーモニーはFmのまま動かないこともできるし、これをうまくハーモニーのなかで吸収して、3拍目からD♭7とすることもできる(例えばFitzgerald, 1964)。