Tangerine

Tangerine

基本データ

  • 作曲年:1942年
  • 作曲:Victor Schertzinger (1888-1941)
  • 作詞:Johnny Mercer (1909-1976)

参考音源

Jim Hall / Jazz Guitar (1957)
カール・パーキンス、レッド・ミッチェルとのドラムなしのトリオ。キーはF。
The Dave Brubeck Quartet in Europe (1958)
アルトはポール・デスモンド。キーはE♭。
Frank Sinatra / Sinatra And Swingin’ Brass (1962)
作編曲家ニール・ヘフティとの企画。キーはE♭で始めてEに転調する。

曲目解説

I Remember Youとともに、1942年の映画 The Fleet’s In の挿入歌。

なお、1942年を「作曲年」としたが、作曲者シャーツィンガーはその前年に亡くなっている。これは出版された年ということで理解されたい。

メロディとコード

キーをFとして説明する。

3-4小節目

もっともシンプルにFmaj7 のみで演奏することができる。これは、いわば「ハーモニーの骨格」である。

これをもとに、4小節目をDm7(トニック・メジャー代理)にしたり、あるいはD7(Gm7へのドミナント)にしたりすることで、次の小節のGm7への進行感を出すことができる。もちろん、A♭dim7としてもよい。

4小節目をD7に置き換える場合、さらに、Am7 D7 のようにリレイティブ・コードを先行させることができる(いわゆる広義の「トゥ・ファイブ」)。さらにAm7に対して、3小節目の後半においてB♭7を先行させて、Fmaj7 B♭7 | Am7 D7 | という進行がジャズでは好まれる。上に掲げた参考音源はすべてこの進行を採用している。

実際の演奏においては、このようなハーモニーの変化を(譜面に書かれていなくても)行うことがある。「ハーモニーの骨格」を理解し、耳を使って演奏すれば対応できる。

15小節目

直前の2小節はAメジャー・キーに転調しており、コードは、Amaj7 | Bm7 E7 | となっている。

これに続く15小節目は、Amaj7とすることもできるが、実際はA7としている録音のほうが圧倒的に多い(特に1950年代後半以降)。ほかに、Amaj7 A7 としている録音もある(例えば1941年のJimmy Dorsey楽団や1953年のStan Getz-Bob Brookmeyerによる2管クインテット)。

28小節目

Bm7(♭5)-E7 または G7 としている録音が多い。

前者にすると、25-26小節目Gm7 | Em7(♭5) A7 | と27-28小節目Dm7 | Bm7(♭5) E7 | がメロディとコード進行が対になることである。

G7とすると、これが直前のDm7(平行調のトニック・マイナー)を受け、かつFメジャー・キーのダブル・ドミナントとのピボットとなり、非常に合理的な和声になる。ただし、メロディとコード進行の対は失われる。

結局は、好み(選択)の問題となる。