There Will Never Be Another You #
基本データ #
- 作曲年:1942年
- 作曲:Harry Warren (1893-1981)
- 作詞:Mack Gordon (1905-1959)
参考音源 #
- Lester Young With Oscar Peterson Trio (1952)
- ゆったりとしたテンポである。キーはE♭。
- Chet Baker Sings (1953)
- ピアニストラス・フリーマンをフィーチャーしたアルバム。ちなみに後にギラーのジョー・パスをオーバーダブした録音もある。キーはFから転調してE♭。転調前後でコードも少し変えてある。
曲目解説 #
1942年の映画 Iceland の挿入歌。この映画は、ヒット作 San Calley Serenade の二匹目のどじょうを狙った作品であったが、評はは今ひとつであった。
この曲は特に大ヒットしたというわけではないが、作曲された1942年にはウディ・ハーマン楽団が録音し、以後、ジャズ・ミュージシャンによって取り上げられることで、スタンダード・ナンバーとなった。
メロディとコード #
以下キーをE♭とする。
3-4小節目 #
コードをDm7(♭5) | G7 | としている曲集が多い。
しかし、あらためて実際の録音をあたってみるとDm7 | G7 | としている録音も多数あり、特にボーカルの録音にこの傾向が強い。
古い録音では Dm7 G7 | Dm7 G7 | のような演奏もあるので、オリジナルはこれに近かったものと考えられる。
私たちは、ときとして楽譜を読んでそれを鵜呑みに覚えてしまうことがあるが、実際の録音にあたり、耳を使って学ぶことの重要性を再認識した。
6小節目 #
前の小節のCm7から次の小節へのB♭m7に進行させるため、ここの小節をF7とすることも多い。
私個人の好みでいえば、Cm7のままそっとしておくのもひとつの手だなと考えてみたが、そのような演奏が多く見受けられる。もちろんF7でも誤りではなく、テンポや曲想によってはそのほうがふさわしいこともあるだろうが、前後の進行から無批判にF7とするのは、音楽家の態度としてはいかがなものかとも思う。
10小節目 #
機能的にはサブドミナントマイナーなので、A♭mもしくは、その代理コードのD♭7などが好まれる。メロディにG Fが含まれるので、スケール的にはA♭メロディック・マイナー(上行形)(または、D♭リディアン♭7th)を想定でき、少なくともテーマの場面ではA♭m7としないように注意が必要である。
なお、Young and Peterson(1952) ではサブドミナント・マイナーではなく、Fm7 B♭7として演奏している。
12-14小節目 #
まず、13-14小節目をどうするかというところから考えたい。
オリジナルはおそらく、F7が2小節続いていたと思われ、実際こんにちもそのように演奏することが多い。
ところが、13-14小節目のF7の前半をそのリレイテッド・マイナー・コードであるCm7に置き換えて演奏する場合がある。
さて、それでは12小節目はどうするべきか。
まず、13小節目をCm7とする場合には、Cm7へのドミナントとそれに前置されるリレイテッド・コード、すなわち、Dm7(♭5) G7とすることができる。
しかしながら、13小節目をF7とした場合、同じようにF7へのドミナントすなわちC7を12小節目に想定するとストレートメロディと衝突してしまう。そこで、13小節目は12小節目のE♭maj7を継承するか、Cm7とするのが正しい。
ちなみに、Baker(1953)の2コーラス目(歌が入るコーラス)では、12小節目をCm7とし、さらに13-14小節目をCm7 | F7 | としている。好みもあろうが、このような演奏もあるということで参考になる。
28小節目 #
29小節目の冒頭のコードはトニックE♭maj7 または同じ機能を有するGm7であるということを前提に話を進める。
曲集の多くでは、28小節目のコードをAm7(♭5) D7を採用している。
これは、トニックディミニッシュであるE♭dim7の代理機能を持つD7(スケールはいわゆるコンディミで、これはE♭ディミニッシュスケールと同じ音からなる)に、リレイテッド・コードが前置された形だと解釈することができる。
しかし、実際に古い録音にあたってみると、この小節を、F7 F♯dim7 として演奏しているものが多数を占めることがわかる(この場合、29小節目冒頭はGm7)。
F7のルートを省略し9thのテンションを補い、また、F♯dim7のベース音にDを補うと、曲集でなじみのAm7(♭5) D7というコードになる。だから、このコードは、トニックディミニッシュ由来というよりもむしろオリジナルの進行に由来していると理解するほうが自然なのではないかと思われる。
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