This I Dig Of You

This I Dig Of You #

基本データ #

  • 作曲年:1960年頃
  • 作曲:Hank Mobley (1930-1986)

参考音源 #

Hank Mobley / Soul Station (1960)
アービング・バーリンのRememberから始まるモブレーの代表作のひとつ。キーはB♭。

曲目解説 #

ハンク・モブレーの代表作の1つで、ライブやジャム・セッションでも演奏されることがある。

メロディとコード #

以下、キーをB♭として説明する

1-8小節目 #

テーマの部分はB♭maj7/F と Cm7/F が1小節ごとに繰り返されている(ただし、8小節目はFm7 B♭7)。つまりF(ドミナント)のベース・ペダル・ポイントとなっている。

一方、録音においてソロ中はベースがウォーキングしてペダル・ポイントは解除されて、B♭maj7 | Cm7/F | の繰り返しで演奏されている。

いずれもCm7/F は、E♭/F や F7sus4 のように書くこともできるのだが、スケールとして考えると同じで、基本はCドリアン=E♭リディアン=Fミクソリディアンで、B♭メジャー・スケールを親とするいわゆる子スケールである(子スケールとは正式なタームではないかもしれないが)。

このように様々に表記できるこのコードの状態を、主要な3つの機能(トニック、サブドミナント、ドミナント)に分類するならば、サブドミナントということになろう。トニックでないことは明らかだが、明らかなドミナント感(これも不正確な表現だが、トライトーンの不協和音で説明されるようなトニックに解決を促すはたらき)も存在しないからである。したがって、このCm7/FやF7sus4は一種のサブドミナント代理だと解釈することができる。

以下、余談になるのだが、メジャー・キーのダイアトニック・コードのIIm7やIVm7を「サブドミナントである」と説明している理論書があるようだが、これは正確ではない。第一の理由として、IVm7はトニック代理のケースもあるしIIm7もそれ以外の機能を持つことも考えられること。第二の理由として、I、IV、Vにはそれぞれトニック、サブドミナント、ドミナントという名前(気取った言い方?)があるように、II、III、VI、VIIにも同様の名前があるからである(それぞれ、スーパートニック、ミディアント、サブミディアント、サブトニックといい、VIIはIの半音下にあたる場合はリーディング・トーンともいう)。したがって、IIm7はあくまでもスーパートニックなのであって、この曲のように多くの場合、機能的にはサブドミナント代理であると考えるのが正確である。

11-12小節目 #

テーマでは、Dm7 | Gm7 | となっている(12小節目がG7でないことに注意)。

ソロ中はといえば、録音を聴く限り意識的にGm7が演奏されているとは言い難いだろう。機能的にトニックで、あえて表記するなら、2小節ともDm7もしくはB♭/D(12小節目をB♭maj7としてもよいがわざわざ書き直すほどのものでもないだろう)といったところだろうか。