When I Fall In Love

When I Fall In Love

基本データ

  • 作曲年:1952年
  • 作曲:Victor Young (1900-1956)
  • 作詞:Edward Heyman (1907-1981)

参考音源

Nat King Cole / Love Is the Thing (1956)
ストリングスをバックにゆったりと歌い上げる。キーはD♭。
Steamin’ with Miles Davis Quintet (1956)
いわゆる4部作の1枚。ミュート・トランペットによるワンホーンとピアノ・トリオによる演奏。キーはF。
Bill Evans / Portrait In Jazz (1959)
ベースがスコット・ラファロ、ドラムスがポール・モチアンによるトリオ。「インタープレイ」という言葉が独り歩きしている感があるが、実際には各パートが過不足ない動きを理想としていることがわかる。キーは、E♭。
Blue Mitchell / Blue’s Mood (1960)
このアルバムは名盤で、どのテイクもすばらしい。ウィントン・ケリーのヴァースから始まる。キーはF。

曲目解説

1952年の映画 One Minute to Zero のために作られ、映画ではインストゥルメンタルで演奏された。同年に歌手のDoris Day が録音したものが最初のヒットとなった。

また、1956年にNat King Coleが録音しており、翌年の映画 Isutanbul でも彼がフィーチャーされている。

ジャズを含む多くのミュージシャンによって取り上げられ名演も多い。

コードとメロディ

さまざまなキーで演奏されるが、以下、キーをE♭として説明する。

1-4小節目

さまざまなコードをつけることができるが、ふつう、いわゆるメジャー・キーにおける「イチ・ロク・ニ・ゴ」を2回繰り返すことが多い。

注意したいのは、「ロク」であるが、メロディがA♭ Gと動くので、Cm7ではなくC7のほうがよりサウンドするという点である。Cm7にとって、A♭の音はアヴォイド・ノートにあたるからである。

「ニ」は、ふつうFm7であることが多いが、F7でも構わない。私自身は、2小節目の「ニ」をFm7、4小節目の「ニ」をF7にして演奏することを好む。実際、Enricopieranunzi と Lee Konitz のデュオ(1988年)や、Toots Thielemans(1990年)などは、このように演奏している。

Evans (1959)は、「イチ」「ロク」「ニ」「ゴ」のすべてのコードをドミナント・セブンスで演奏しており独特の効果をあげている(「事例研究」参照)。また、Keith Jarrettは、冒頭2小節をEbmaj7 D7 D♭7 C7 | B7 B♭7| で始めている(実際はB♭で演奏している)。

また、「イチ・ロク・ニ・ゴ」以外のコードとしては、冒頭2小節をトニックE♭maj7とサブドミナント・マイナーA♭mで演奏することが多い。例えば、Celine Dion(1993年)の場合、E♭maj7 / A♭m/E♭ E♭maj7 | A♭m/E♭ | E♭maj7 / D♭7 C7 | F7 B♭7 | のように演奏している(実際のキーはD♭)。

5-6小節目

いわゆる、「イチ・ヨン・サン・ロク」である。

まず、「サン・ロク」から見ていこう。ロクは、C7でよいであろう。1拍ずつC79 C7(♭9)としたり、Gm7/C C7(♭9)のようにしても面白い。

そして、「サン」であるが、これはふつうG7である。メロディがA♭のためGm7やGm7(♭5)ではアヴォイド・ノートにあたるからである(ただし、Gm7(♭5)での録音はいくつか確認したが)。また、G7のトライトーン代理であるD♭7も好まれるようだ。

続いて「ヨン」を見ていこう。「イチ・ヨン・サン・ロク」のときの「ヨン」はメジャー・コードのほかにドミナント・セブンス・コードが好まれる傾向にある。この曲の場合、どちらかといえばドミナント・セブンスすなわちA♭7であることが多いように思われる。

7-8小節目

いわゆる「ニ・ゴ」なのであるが、「ニ」である7小節目はF7またはそのトライトーン代理であるB7が好まれる傾向にある。

一般的に「ニ・ゴ」のおける「ニ」の個所で、メロディーがそのルートであるとき、ダイアトニック・コードであるIIm7であるよりもII7が好まれる傾向にあるようだ。

もちろん、リレイテッド・マイナー・セブンス・コードを置いて、Cm7 F7 | Fm7 B♭7 | としたり、Cm7/F F7 | Fm7/B♭ B♭7 | のようにしても構わない。

また、別の方法として、7小節目をCm7(♭5)のようにする用法がある(例えばKeith Jarrett)。

9-10小節目

大きくふたつのアプローチがある。

まず「イチ・ロク・ニ・ゴ」の場合、ロクではメロディーがE♭なのでCm7が好まれる。もちろん、理論的にはC7(♯9)も不可能ではないが、1-4小節目とのコントラストを考えるとCm7がよいようにも思わえるがこの判断は完全に好みの問題。また、「ゴ」をサブドミナント・マイナーすなわち、A♭mとする場合もある。

「イチ・ロク・ニ・ゴ」以外のアプローチとして、10小節目をA♭maj7 A♭mとする方法がある。1小節目はもちろんトニックのE♭maj7であるが、しばしば3-4拍目をA7とすることが好まれる。

11-12小節目

大雑把にいえば「イチ・ヨン・サン・ロク」のヴァリエーションである。

まず、直前(10小節目後半)がA♭mとなっている場合、「イチ」の代わりに「サン」すなわちGm7が好まれる傾向にある。

ヨンは、A♭maj7でもA♭7でも同じくらい好まれる。

サンはメロディがB♭なので、基本的にGm7なのであるが、G7のトライトーン代理D♭7も好まれる。

14小節目

C7やGm7(♭5) C7のほか、D♭7 C7も好まれる。

15-16小節目

大きくFm7 B♭7が基本であるが、Fm7 C7 | Fm7 B♭7 | も好まれる。

25-26小節目

基本的に大きくトニック(メジャー)、サブドミナント(メジャー)、すなわちE♭maj7 | A♭maj7 | であるが、25小節目後半または全体ををA♭へのドミナントすなわちE♭7またはB♭m7 E♭7に置き換えることもある。

また、26小節目後半をA♭7と変化させることも好まれる。

28小節目

Fm7 B♭7でも構わないが、Fm7 A♭m (D♭7) が一般的だろう。

29-30小節目

オーソドックスには「イチ・ロク・ニ・ゴ」である。「イチ」のメロディがB♭ E♭なので、サンすなわちGm7にはふつうしない。

「ロク」は1小節目と同じ理由でC7がこのまれる。また、「ニ」は理論的にFm7 でも F7でもよく、また、B7も好まれる。

29小節目を1拍ずつ、E♭maj7 D7 D♭7 C7のようにしても美しい。

まとめ

メロディがシンプルてとても美しい。コード進行自体も、どこをとってもオーソドックスで、それほど難しい個所はない。

しかし、全体の調和(バランス)を整えるのがとても難しい。小節単位で見ればそれほど問題になる箇所もないのだが、選択肢の違いが微妙で、吟味すればするほど瞬間瞬間はサウンドするのに全体の流れが今ひとつ見通しが悪いというようなことに陥りやすい。つまりとても繊細な曲だといえる。

何テイクか採譜してみたが、どれもよく吟味されていると思う。誰もが知っている曲ではあるが、この曲を譜面なしで、演奏するのは危険である。なぜならば、各メンバーの思い描くサウンドに微妙な違いがあり、その細かな差異が曲全体の流れを止めてしまうからである。

必ず譜面を用意し、自分のイメージにとらわれすぎることなく、譜面から意図を汲み取って演奏することが大切だと考える。

事例研究

Evans (1959)のコード進行

E♭7alt C7alt F7alt B♭7 E♭7alt C7alt F7alt B♭7
E♭7alt D7 G7alt C7alt F7(♯5) Fm7/B♭ B♭7(♭9)
E♭maj7 A7 A♭maj7 A♭m Gm7 A♭7 D♭7 C7
Fm7 Dm7(♭5) G7alt C7 Fm7 G♭7 Fm7 B♭7
E♭maj7 C7alt F7alt B♭7 E♭maj7 C7alt F7alt B♭7
E♭maj7 D7 G7alt C7alt F7(♯5) B7 Fm7 B♭7
E♭maj7 A7 A♭maj7 A♭7 Gm7 C7 Fm A♭m
Gm7 / D♭7 C7 F7alt B♭7 E♭maj7/B♭ E♭maj7/B♭ B♭7