| 2003/02/08 |
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今日、浅田二郎さんの書いた著作の中で共感する言葉を見つけました。
彼の文章そのままに引用したいのですが、本を父の所に置いてきたので
彼の美しい文章を味わっていただけなくて残念ですが。
「苦労したなんて話はしちゃあいけねえ。いわなきゃ人間忘れるもんだ。」 と、要約すればこういうことになります。 いやだったこと、辛かったこと。それを「話せば楽になる」と人はよくいいますが、 私は昔からそれは自分にはあてはまらないと感じていました。 いやだったこと、苦労したことを話すことで、その記憶は「言葉」という 形を持って輪郭のはっきりしたものになり、記憶に定着していきます。 だまって、流してしまえば確かに嫌なことも忘れてしまうのです。 もちろん、流しきれない、吐露しなくては前に進めないほどの 心労やショックもあると思います。きっとそれは次元の違う話なのでしょうね。 そうは言っても、私もついつい感情が高ぶっているときにそのまま その不満を口にすることがあります。でも、口にした後、すっきりしたかと 自分の心を覗いて見れば、決してそうではなく、むしろ後悔することの ほうが多いのです。愚痴を言った自分を羞じ、聞いた相手も愉快ではなかっただろうと 反省し、嫌だったことを言葉にすることによって、もう一度追体験して、 おなじ不快な気分を思い出し・・と、何一つ良いことがないように感じるのです。 思い切って外に出て、その嫌のこととはなんの関係もない場所や人と 思いっきり笑ったほうがうんと気持ちがすっきりしています。 後は一人で「何が嫌だったのか、自分はどうしたいのか」を理性的に 「書きながら」自己分析してみるかです。 浅田二郎の今日の読んだ著作は「矜持」とか「生きるための美学」とでも 言うようなものがちりばめられていて、その美しい日本語とともに すがすがしい気持ちにさせてくれる良い本でした。
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