| 2004/1/22 | つまみ食い |
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つまみぐいには幸せの匂いと、暖かい笑顔がついてまわる。
できたてのおいしいアツアツを、横から手を出し自分だけ 食べさせてもらう。 それは、行儀が悪いことなのに、許してもらえる特権と、 許してあげたい愛がそこにあるからだ。 「他の人には内緒よ」という秘密の匂いもする。 私が大好きな「大草原の小さな家」でも つまみぐいのシーンが出てくるのだが、 私には妙に印象的で、その時の俳優の声のトーンまでもが 思い出せる。 「完璧」と言っていいような父親であり夫であるチャールズが、 妻の作ったやきたてのパンをつまみぐいする。 「お腹が減っているんだから、少しだけ・・いいだろ?」 といいながら、切ってもらうパンに「もう少し大きく」とねだる。 「まあ、チャールズったら」と妻は笑いながら それでも、少し大きくパンを切る。 日常のなにげないシーンなのに、愛があふれていて 私は知らず知らずに一人で笑ってしまう。 日本の陳腐なドラマで、それが若い恋人の間で演じられても 何も感じないだろう。 普段は、「ストイック」と表現してもいいような暮らしを 送っている二人の間で交わされる会話だから意味があるのだ。 子供時代のつまみぐいは、もっと軽くて甘い感覚だ。 母親に愛されていると、子供が無意識のうちに感じる味に 違いない。 妻は、母は、毎日、料理を作る。 その料理は家族で、きちんと席について、みんなで楽しく食べたい。 でも、ときおりなされる「つまみ食い」も また幸せの匂いなのだ。
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