2004/2/18梅の花に

私が結婚して最初に住んだところは、練馬のすみっこだった。 「○○マンション」という名前はついてはいたが、「アパート」に 近い建物だった。私の部屋は1階で、目の前はテニスコートの青いネット。 そのネットと建物の間の小さな庭に梅ノ木があった。

結婚記念日は3月30日で、その一月ほど前に荷物を入れに行ったら、 その紅梅は満開だった。

生まれ育った神戸の新興住宅地には、桜の木はたくさんあったが、 梅の木は記憶にはなく、若い私にとっては、明るくて 華やかな桜に比べ、梅の花はなんとなく地味で年よりくさい花に 感じられ、何故かあまり興味を感じなかった。

その社宅には4年間住み、4度、見たはずの梅の花に 特別の感慨を持った記憶はない。

この間、横須賀線に乗って、北鎌倉の駅に降りた。 降りたホームの真向かいに、枝ぶりのよい梅ノ木が、 鎌倉らしい木の塀ごしに枝を伸ばし、濃いピンクの花を ちらほらと咲かせていた。

心に染みるような色だった。

私の何かが変ったのか、今年は梅の花に妙に心惹かれる。 冬枯れの木々が、もうそこまで来ている春を待ちかねるように、 固いつぼみを枝先にたくわえている。 春の気配をはや、漂わせていることに、今年の私はきづく。

これが、年齢を重ねるということなのかと、自問自答してみる。 見えなかったものが見えるようになり、感じられなかったものが 感じられるようになる。楽しくないからだの変化も多い年齢だが、 これは悪くない・・と思ったことだ。