2004/8/14決定の瞬間

何語だったかはっきりとは聞き取れなかったが、日本語ではなかった。

ジムのフロントでジュースを買おうとしたその男性に向かって、女性が一言なにかを 言った。二人は夫婦のようであり、あきらかに私の目には日本人に見えたのだが、 「そうではなかったのか??どこの国の人だろう??」と思わずもう一度、その夫であろう人の後姿に 目をやった。

ところが、再びエレベーターで一緒になったその婦人は夫であろう男性に向かって 「駐車場においてある車、とりにいくでしょ?」とごく普通の日本語で話しかけた。 夫もあきらかに普通の日本人らしく「そうだね」と答えている。

普通の日本人同士の夫婦がちょっと離れて立っている夫に声をかけるのに日本語ではない 言葉をごくナチュラルにかける・・

いったいどういう人たちなのだろう?という疑問がわずかな時間私の脳をかけめぐったが、 次の瞬間に、「どこかで聞いたことのある声だ」と私は記憶をたどり始め、彼と彼女の顔を ちらっと盗み見た。そのわずか数秒の時間と「どこかで聞いたことのある声」は見事にマッチングして 記憶を呼び覚ました。

彼らは湘南の七里ガ浜でちょっと知られたイタリアンレストランを開いているご夫妻だったのだ。 妻であるその夫人はなかなかの薦め上手で、見栄っ張りな夫は(笑)ついつい高いワインを注文して しまい、後で冷や汗ものだった。

夫であるその男性は興が乗るとキッチンでカンツオーネを歌いだす。

イタリア修行中に知り合って結婚したというその二人は、夫婦の普段の会話にも ついついイタリア語がはいるのだろう。

つかいなれない高速回転の記憶呼び出し作業をしていた私はエレベーターを 降りたところで、おもわず灰皿に足をひっかけた。

が、さすがわイタリア仕込のそのシェフ。すばやく私に手をさしだし支えてくれた。

今週末は「アンセルモ」に食事にいこう。その瞬間に私は決めた。(笑)