2004/10/06

 結婚した頃、母に電話するときには気を使った。  「元気な声」で電話するように、気を使っていた。  娘の幸せに敏感な母は、別に何もなくても、少しでも声のトーンを落とすと  「何かあったの?」と心配するからであった。

 その母も70の誕生日を数年前に過ぎ、さすがに電話に出てくるときの声が  「おばあさんに」になったなあと思っていたのだが、  ある日、とても若々しい声で出てきた。

 「あら、今日はなんだか声がとっても若くて、10年前に若返ったみたいよ。」  というと、お客様がみえているとのことだった。

 それ以来、母は私がいつ電話をしても、とても元気で若々しい声で  話すようになった。

 母が、そうしているのは「母自身のため」でももちろんあるのだが、  でも、私のためでもあることを私は知っている。

 かつて私がそうしてきたように、母は私を気遣って元気で明るいトーンで  話すようにしている。

 でも、私は知っている。そうすることによって、母自身もまた元気になれるのだ。

 「相手をおもいやることは自分をも救う」   うまくできている。