2005/2/24貸金庫

私は自分専用の貸金庫を持っている。何が入っているのかというと少々のへそくりと メモ用紙に小さな字で綴られた私の雑文だ。

いつもバックの中に入っている小さなメモ帳に、私は時々、「今」の自分をありのままに 書き綴る。だれに見せるわけでもない、だれにも見せたくないありのままの自分がそこにある。

毎日の生活の中で澱のように静かに自分の中にたまっていくいろいろなこと。 私はそれを鉛筆の黒い芯の先からはきだしていく。常に10年分ぐらいのものが金庫の中で 眠っている。10年たつと、私はそれを読み直す。気恥ずかしくなるような文字が静かに並んでいる。

私はそこに吐き出された文字を使って自分を浄化してきたのだなあと思う。 自分の中だけでひたすら問う。今の自分をさらけだして問う。往々にして堂々巡りの 自分がそこにいる。

それでも書くことが好きな私は、そこで一人で癒される。

10年たつと、私はそれを捨てる。捨ててしまうと記憶から消えて、もう二度とよみがえらない かもしれない私の昔の姿がそこにある。すこしためらうこともあるが、結局は捨ててしまう。 良い思い出はちゃんと記憶に残り、忘れてしまいたいことは小さな文字列と一緒に消えていく。