| 2006/3/21 | 同情 |
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今のマンションに住んで20年になる。 28歳で入居した私も48歳になった。 20年という歳月は長い。 半分以上の住人は入れ替わっただろう。東海道線沿線の駅から至近という 便利さで中古になっても意外に値段は下がっていない。 当初からの住人にA氏がいる。30代で独身でこのマンションを購入した。 独り身には贅沢すぎるほどの物件だったと思う。彼は今も独身だ。 両親は若いときに亡くなり、兄弟もいないので「天涯孤独です」と 昔語っていたことがある。 その彼が数年前に脳梗塞で倒れた。今、50代となった彼は仕事をやめ、 障害者年金をもらいながら、一人で暮らしている。 彼は昔から明るく、人なつっこい。だから、彼が健康なときから 私も廊下などで立ち話をしたことがある。 彼は今も明るい。杖をつきながら、遅々とした歩みだが一人で 買出しをし、お昼は近所のカフェでとる毎日のようだ。 私も時々そのカフェでお昼を食べるので会うことがある。 だが、私ははなはだ居心地悪く、軽く挨拶はするものの 親しく話をしようとはしない。私は彼に「同情」を感じている自分に 「居心地の悪さ」を強く感じてしまう。 どうして私は普通になれないのだろうと、自分で自分を嫌悪してしまう。 先日、リバイバルドラマで「愛と死をみつめて」を見た。 その中でミコが話す言葉がある。自分勝手な母親に苦しめられた娘が 「困った時だけ私を頼るあんな自分勝手な母親は親とは思っていない」と言った言葉に対してだ。 「あなたは自分を悲劇のヒロインにしたいだけだわ。そうして みんなから同情されたいのよ。私はいや。だれからも同情されるような 人間にはなりなくないの」 私自身、「同情されたくない」というところがある。 だから、「同情」を感じる自分を嫌悪するのだろう。 A氏と普通に会話できる自信は、今の私には、まだ、ない・・・。
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