2006/7/29真夜中のファミレス

私はいらいらしながら、自宅マンションの向かいにあるファミレスのドアを押した。 夜中の2時半である。私が住んで20年になるマンションは東海道線沿線の駅徒歩4分という 便利な場所にあるが、おかげさまで徒歩圏内に早朝5時まで営業している居酒屋さんもたくさんある。

次女が、中学時代の友人と飲んでくると出かけたのが夜の8時ぐらい。12時までには帰ると言ったのに 話がはずんでいるらしく、業をにやして夜中の一時に電話したら「二時には帰る」と約束した。 が、この次女は大体に自分の言葉通りに帰ってきたことはない。案の定2時半になっても帰ってこない。

明日は彼女は仕事なのだが、ブライダルの仕事は変則的な勤務なので午後の2時に出社だとういう。 当人は朝寝ができるからまあいいや・・ぐらいのノリなのだろう。

が、母親としては成人した娘ではあっても、家に帰ってくるまではなんとなく心配で寝付けない。 高校生の頃はもっと心配した。あの頃に比べたらはるかに中身も大人になって、 基本的には信頼してはいるのだけれど・・

私は3日前に欧州旅行から帰ってきたばかりというのもあって、時差ぼけも手伝ってますます頭が冴えてくる。 私はパジャマのズボンだけはき替えて、Tシャツにワンマイルパンツという気楽な格好で バックに財布と携帯をほりこんで家を出た。

このまま起きて待っていたら、帰ってきた次女の顔を見るなりいやみの三つもいいたくなるし、 少し気分転換したくなったのだ。

が、ファミレスの席に案内されて、ハーブティを注文してすぐに、鍵を入れたポーチが バックに入っていないことに気づいた。これはまずい。さっき注文をとりに来てくれた 女性の店員さんに「向かいのマンションに住んでいるのですが 鍵を忘れたのでちょっと取ってきますね」と断りをいれる。

「では、ハーブティはお見えになってから用意しますね」と彼女は笑顔で答えてくれた。

自宅に戻り、ポーチをバックに入れてファミレスに戻る。 お茶を飲んでいる間に次女から携帯に電話が入る。帰宅して私がいないものだから 電話してきたのだろう。少しは心配する側の気持ちも分かってほしいと、私は 携帯に出ない。年甲斐もなく、娘に反抗するの図・・というところである。

ティーポットで出てきたハーブティはカモミールが主体の精神を落ち着かせる成分。 これで少しは気持ちもおさまるかな??

お茶を飲み終えて、お会計をお願いした私に、さっきの女性店員がレジを 打ち込みながら話しかけてきた。

「眠れない夜ってありますよね。そういうときにハーブティ、いいんですよ。 なんだか急に食べたくなるってこともありますよね、ホットケーキって。 この間も夜中におじいちゃまが『どうしても食べたくなったから』ってお見えになったんですよ。 そういうお店の使い方していただくと、なんだか嬉しくなります。」

嬉しくなってしまったのは私の方だ。夜中のファミレスでニッコリと世間話ができるなんて・・。

「また寝られないときはいらしてくださいね」の声を聞きながら帰途につく。

家に帰ったら、娘はさっさともう寝ていた。・・親の心子知らず・・ 寝顔に向かってつぶやいて私もベットにもぐりこんだ。おやすみなさい。