2006/9/3伯母の幸せ・上

「今が一番幸せ・・」今年78歳になる母の姉は、私の家で 食事しながらしみじみとそう話した。 私の母は4人兄弟。4才年上の姉・6才年下の弟・8才年下の妹がいる。

私の祖母は16才で嫁ぎ18才で長女を産んだという。思えばながきに渡って 子育てをしたもんだと感心する。95才の長寿を全うした。

伯母は、姪の私から見てもいかにも「長女らしい長女」だ。 責任感が強く、自分が発した言葉は必ず守り、誠実で面倒見が良い。 私の実家から徒歩5分のところに住む伯母に私達はどれほどお世話になっただろう。

戦後、M重工業の社内にある医院で、資格はないが薬剤師のような仕事をしていたらしい。 私が高校の頃からは近所の開業医の先生のところで受付兼薬の調合のようなことを していた。

伯母には好きな人がいたが、どういう理由からかその人とは結婚しないで お見合いで結婚した。伯父は人は良いがどちらかというと「愚直」という 言葉があてはまるような人だった。舅・姑と同居し、二人を見送った伯母は 肝臓がんにおかされた伯父を4年間自宅で介護していた。

長い病院での経験で、伯母は病人の「病気の進行」に慣れていた。 次に病人に「どういうことが起こるか」「そのときにはどういう対処の方法があるか」 開業医であるから、さほど重篤の患者はいなかっただろうが それでもやはり伯母はよく慣れていた。 伯母はいつも冷静で、愚直だった伯父はいつも「ありがとう」「ありがとう」という言葉を 忘れない病人だった。

しかし、二人が元気だった頃、二人は決して仲むつまじい夫婦だったという訳ではない。 むしろ、どちらかというと心の交流の少ない夫婦だった。