2006/9/4伯母の幸せ・中

もちろん、「夫婦の間の機微」など私には正しく理解できていないだろう。 ただ、伯母が、「夫が寝込むような病気になったときに私は看病など出来るだろうか?」 と、母に打ち明けていたのを思い出したり、幼い頃からひんぱんに遊びに行っていた 伯母宅での夫婦のやりとりから、そっとその空気を感じ取るだけだ。

しかし、伯父が最初軽い脳梗塞で手足が不自由になった後、肝臓がんも併発し 最終的に寝たきりになった後も、伯母は看護師のように的確な介護をやりぬき そして見送った。伯母は「情がさほど通っていなかった分、かえって冷静に 看病できたかもしれない」と語っていたが、帰神のたびに私が伯母宅で見る 介護の様子は心のこもったものだった。それはある意味、職業意識の高い 看護師が患者に対応する様に似ていたかもしれない。

伯父を見送り、子供二人もとっくに家庭を持ち、伯母は一人でくらしているが その、自己規律は見事なまでである。昔から人にも厳しかったが、自分には さらに厳しい人だった。質素ながらも食事も手を抜かず、毎日、散歩と水泳をかかさない。

なによりの楽しみは、一人で鉄板焼きを食べる時だという。 高くておいしい肉を少量。それにいろいろなお野菜。 一人用の小さなホットプレートで焼きながら小さな缶ビールを一本。 誰に遠慮することもなく、食べたいものを食べたいときに食す。 「今が一番幸せ・・って、本当に心からそう思うのよ」と 話はそこに戻る。