| 2007/12/19 | ブックレヴュー「ファースト・ジャパニーズ ジョン万次郎」 |
|---|
|
捕鯨船の船首に立つエキゾチックな赤い衣装をつけた男。 素朴なタッチのその絵は和紙の風合いを持つ紙でブックカバーに仕立てられている 。カバーをはずすと、輝くような白地の上に日の丸を想起させる真紅の円が姿を現す。 円の中に白く抜かれた「ファースト・ジャパニーズ ジョン万次郎」の文字。 万次郎の曾孫である著者、中濱武彦氏の想いが伝わる装丁だ。 「ファースト・ジャパニーズ」とは、万次郎 が、恩人であるホイットフィールド船長に宛てた手紙の署名に由来する。 そこには「John Mung Japanese」とあった。時は明治維新の二十一年まえ。 土佐だ薩摩だ長州だという藩人の意識はあっても「日本人」という概念がまだ一般にはなかった時代 万次郎は、自分のことを敢えて「日本人」と名乗った最初の日本人だと著者は考える。 「藩人」から「日本人」へ。そしてそれはやがて「日本人」から「地球人」へ。 ひょっとしたら、私達は今、そんな時代の転換期にいるのかもしれないと考えさせられる。万次郎からまだ四世代。一つの提言が隠された作品だ。
|