| 2009/3/23 | ある家族の物語 1 |
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茅ヶ崎の駅ビルの中にある小さな下着ショップ。主に海外ブランドを扱っている。レースの美しさとその色味の微妙さは欧米の文化の一端とも言えるほどのものだ。 私は、歯磨きチエックのため、茅ヶ崎にある歯科クリニックに一月に一度ほど通っている。早めに茅ヶ崎に着いた時は、クリニックに行く前に時々そのショップをのぞいていた。輸入下着は私には高級過ぎて手がでないが、センスの良いコットンの薄手のカーディガンやキャミソールがリーズナブルな値段で取り揃えられていた。 いつもは歯科の予約時間にせかされ早々に失礼するのだが、先日は早朝の予約で診療後ショップに寄った。私が朝一番のお客。購入したカーディガンを包装してもらいながら「そういえば、先日、城山三郎さんの『そうか、きみはもういないのか』がドラマで放送されましたね」と話しかけた。 この一言をきっかけに、私はその後、二時間に渡って彼女の家族にまつわる美しい話を聞かせてもらったのだ。 「ええ、私も見ました。実は私の実家は茅ヶ崎で百年続いた呉服屋なんです。私の実家が営む店は駅前のマンションの一階に入っているのですが、城山さんは、そのマンションの十階にお住まいになっていたのですよ。城山さんはもともと小柄な方でいらしたんですが、奥様亡くなられた後は、本当に背中が小さくなって・・私の祖母が良く心配していました。今はその祖母もアルツハイマーとパーキンソン病で寝たきりなんですが・・。母と私で介護しているんですよ。もう七年になります」
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