母と弟が亡くなったのでお寺の跡継ぎがいなくなり、今思えば私につがせようと父も思ったのでしょうかねえ。突然に迎えに来たのです。結婚する半年前でした。 　でも、父にもすでに後妻さんが来ておりましてね。彼女には本当にいじわるされました。　 　毎朝、父が私を迎えにくるので、一緒に早朝お堂にあがり、般若心経を唱えました。家に戻ると朝ごはんの支度がしてありました。今思えば、娘の私が家の手伝いもせず、朝ごはんをのうのうといただいていたわけですから、それはにくたらしかったかも知れないですね。 　あまりのいじわるに逃げるようにして飛び出し、結婚しました。夫はなくなった養母のいとこだったのです。八人兄弟の六男坊でしてね。姑と一緒にくらし、すでに寝込んでいた舅を六年間世話して見送りました。 　 　私のように五人も母がいる人なんて、めったにいないでしょうねえ。産みの親、育ての親、産みの親の後妻さん、育ての親の後妻さん、そして姑。でも、私は姑が一番すきでしたよ。