| 2009/8/26 | 病が教えてくれたこと3 |
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次女誕生の後、両方の両親から「子どもが二人もいるのだから生命保険をかけなさい」とアドバイスされ夫に相談を持ちかけたことがある。 そのとき、「必要ない。もし僕が死んだら、君はこのマンションを売って実家に帰り働けば生活していける」と言い張る夫を前にして、「私はひょっとしたらこの人が亡くなっても精神的には何もダメージを受けないかもしれない」と考え自分で自分がなさけなかったことがある。 「自分は悪性リンパ腫である」と思い込んだ夫は、あれほど飲んでいたアルコールを一滴も飲まず、大食漢だった人が驚くほど食が細くなり、みるまにやせて顔色も悪くなっていった。 そんな夫の姿に、最初は「オーバーな人」と静観していた私までも「ひょっとしたら」と思い始め、「やっぱりそうかもしれない」と思い始めたのは最初の検査から一週間ほどたったころだろうか。 「夫を失うかもしれない」と真剣に考え始めたころ、私の心に浮かんだのは「夫がかわいそう」という感情だった。妻とも娘たちとも深い心の交流を持たないままに、自分のしたいことだけをして生きてきた人生があまりにも寂しいと感じたのだ。 夫自身がそのことを一番痛感していた。「死」を実感したその時になって、人生にとって本当に大切なものは仕事でもお金でも愛人でもなく、「死」までの時間をともに傍らで親身に寄り添う娘であり、妻であると心から感じたのだ。
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