2009/8/30病が教えてくれたこと4

 私は良く私の母に言っていた。

「あの人はね、決して悪い人じゃないの。でも、自分が『どうふるまうべきか』ということを何かはき違えてしまっているの。たぶん精神年齢が幼いのだと思う。自分のことしか見えない幼稚園生と同じね。はやく小学校高学年ぐらいにまで成長して欲しいな」

 あれほど会話の成立しなかった夫が、結婚27年目にして、初めて「普通の会話」が私と交わせるようになった。今までの27年間はいったいなんだったの??と不思議になるほどごく自然な会話が存在した。  そうして一ヵ月半の時が過ぎ、精密検査の結果を医師より聞く日がやってきた。

癌専門病院を訪れる人たちは、皆同じ「危機」を抱えている。ほとんどの患者は家族の誰かと一緒に待合室の椅子に座っていた。「九割」の確立で癌だろう。そう覚悟していると夫は小さな声でつぶやいた。

名前を呼ばれ診察室に入る。医師はパソコン上でCT画像を数分かけて細かくチエックした。画面に映る点々とした白い部分。あれがすべて癌化したリンパ節なのだろうか・・。回転椅子を回し振り向いた医師がおもむろに口を開いた。