indexに戻る


 現在の文学史では、草双紙は赤本、黒本青本、黄表紙、合巻と、ほぼ年次的に展開されたと認識されている。それぞれの呼称は表紙の色など本の体裁に拠るものだが、青本と黄表紙については表紙の色は同じであって、刊行当時の呼称も共に「青本」であった。黄表紙とは「青本」の内、安永四年以降に刊行されたものを一括した呼称である。
 では、なぜ安永四年で両者が区別されるのか。言うまでもなく、それは安永四年刊『金々先生栄花夢』の誕生をもってそれ以降の草双紙の在り方が大きく転換されたとの認識があるからである。
 その認識を決定づけた原因として考えられるのが、天明元年の大田南畝の黄表紙評判記『菊寿草』の存在である。これは安永十年(天明元年)正月刊行の黄表紙四十七部を役者評判記に見立てて位付けしたものだが、その序文に以下のような一節がある。
それ鱗はこけ也。こけはすなはち不通なり。今天下に大通の道行はれ、こけはさら〓〓入用なし。上は北条のおれき〓〓、下は汝らごときの町人、貴賎上下ひつくるんで、皆大通へみちびかんと、こけやううろこは此方へせしめうるしと出かけたり。しかれども汝が家はふるき家にて、源のより信の御内にまいりては、から紙表紙一重へだてゝ、竹つな金平の用をもきゝ、花さき爺が時代には、桃太郎鬼が島の支度を請負、舌きり雀のちうを尽し、兎の手がらの数をしらず。そのゝち代々の記録をつかさどり、青本〓〓ともてはやされ、かまくらの一の鳥居のほとりに住居し、清信きよ倍清満などゝ力をあはせ、年〓〓の新板世上に流布す。しかるに中むかし、宝りやく十年辰のとし、丸小が板、丈阿戯作の草紙に始て作者の名をあらはし、外題の絵を紅摺にしていだせしを、その比はまだ錦絵もなき時代なれば、めづらしき事に思ひ、所々より出る草紙の外題、みな色ずりとなりたりしが、汝ばかりは古風を守り、赤い色紙に青い短冊、たいのみそずによもの赤、のみかけ山のかんがらす、大木のはへぎはでふといの根、がてんか〓〓位のしやれなりしも、思へば〓〓むかしにて、二十余年の栄花の夢、きん〓〓先生といへる通人一変して、どうやらこうやら草双紙といかのぼりは、おとなの物になつたるもおかし。
これは世界を鎌倉にとって、草双紙の沿革を示したものである。丸小板の丈阿の署名がある作品や同時期の他の板元の作品に関する言及はあるものの、全体としては「鱗」つまり鱗形屋の話をしている。よって、これは鱗形屋を中心に据えた草双紙観を示しているのであって、他の板元の作品を含めた草双紙全体に対する認識を示したものではない。
 しかし、「二十余年の栄花の夢、きん〓〓先生といへる通人一変して、どうやらこうやら草双紙といかのぼりは、おとなの物になつたる」という描写は、「青本」の中から「黄表紙」を特別なものとして別個に扱うという今日の文学史上の認識と通じるものがある。
 なぜ『菊寿草』にあるような文学史観が今日にまで通用してきたかを考えてみると、もちろん黄表紙を「青本」ではなく「黄表紙」と位置付けるに足るだけの文学性の違いや、当時の人々の認識があったには違いないだろう。ただし、大田南畝や恋川春町が先駆けて鱗形屋の赤本および黒本青本を当世風でない、時代遅れなものの象徴として作品の趣向に用いた後、様々な黄表紙作者によってそれが踏襲され、次第に実際の赤本および黒本青本の在り方とは異なるかたちで黄表紙の中でのそれらの姿が象徴化されていったということを考慮すると(注1)、安永四年『金々先生栄花夢』以降は全て黄表紙で「おとなの物」、それ以前は子供のものという認識を素直に受け容れるには躊躇せざるを得ない。
 実際、宝暦・明和期以来黒本青本を手掛けてきた画作者は安永四年以降しばらくは新板を刊行しているし、再摺や改題本の刊行もなされていたようである。人々にとって、いかにも黒本青本らしい内容を持った草双紙は決して遠い存在ではなかったことも想像できる。
 そこで、大田南畝をはじめとするいわゆる黄表紙作者たちが作り出した鱗形屋を中心とした草双紙観を離れて、その他の黒本青本に目を向けることによって、また別の草双紙の在り方がみえてくるのではないかと考え、本稿では富川房信を取り上げる。
 富川房信は先に挙げた鱗形屋板草双紙の変遷とは離れたところに位置する画作者である。房信は鶴屋や奥村といった様々な板元から作品を刊行しているが、当時草双紙刊行の主流であった鱗形屋からは一作も刊行しておらず、鱗形屋の草双紙の変遷とは直接関わらないところで活動した人物である。確認しうる限りで宝暦十年から安永六年まで作品を刊行しており、これはちょうど今日の文学史でいうところの、黒本青本全盛期から『金々先生栄花夢』登場間もない黄表紙草創期に当たる。草双紙の変遷を年代記仕立てにした、天明三年刊『草双紙年代記』(岸田杜芳作、北尾政演画)にも、鱗形屋板の黒本青本に続いて富川吟雪が挙げられており、黒本青本作者として占める位置が小さくなかったことを示すものと思われる。
 黒本青本には通常、絵師の署名だけがなされ、作者の署名のあるものは少ない。しかし、絵師が物語の執筆を兼ねたとは考え難く、黒本青本に板元毎に署名することのなかった作者が存在していた可能性が高い(注2)。実際、後に丈阿をはじめとして、作者も署名するようになると、鳥居清経は柳川桂子、米山鼎峨といった作者と組んで作品を刊行するようになっている。それに対して富川房信は、現存する作品に関する限り、明和二年刊、丈阿作『白梅泰平〓』以外は全て、周りが作者名を伴う時期に入っても単独署名で作品を刊行している。また、安永元年から富川吟雪の号を用い始めているが、安永元年刊伊勢治板『敵討羽宮物語』(『敵討岩通羽宮物語』)の新板目録にも「作者絵師」として「房信事 富川吟雪」の名が挙げられている。後の例にはなるが、安永五年刊の咄本『新落噺初鰹』にも「作者絵師 富川吟雪」という記載が見られる。作品の特徴についても、四天王物や化物種が多いなど、作品の題材にもある程度の傾向を読み取ることができるし、作中に用いる表現についても同様のことが言える(注3)。以上のことから考察すると、全てではないにせよ、「富川房信画」「富川房信筆」とある作品は、その物語の作者を房信が兼ねたものと考えられる。
 そこで、今後は作品の一点一点を精査することによって、作者や再摺改題、後の草双紙への影響関係等の諸問題を明らかにしていきたいが、まずは本稿では富川房信という作者やその作品についての基礎的な研究として、その著作年表を示してみたいと思う。

 著作年表作成にあたっては、以下のような手順で整理した。
 一、『国書総目録』に富川房信もしくは吟雪画として収められる作品に関して調査し、改題再摺本、書題簽に拠る改題本および所在が確認できないものについては削除した。『国書総目録』に所収されていない作品についても筆者の管見に入ったものについてはこれを挙げた。書名の上に○印を付したが、所蔵目録で所在を確認したもので筆者が未見のものについては●印を付した。
 二、各作品は草双紙とそれ以外とに分け、別に整理した。草双紙については刊年順、板元別に作品を挙げた。当該年の各板元の摺題簽の意匠および新板目録の有無についても併記した。題簽については、二枚題簽の場合のみ、その旨を記した。刊年不明のものについては板元および画号の別によって分類した。
 三、各作品の刊年、板元、書名、画作者名および柱題については、以下のような手順で整理した。
ア 原題簽のそなわるものについてはそれに従った。角書については書名の前に/を付して併記した。
イ 原題簽のそなわらないものについては、『青本絵外題集』(岩崎文庫貴重本叢刊、貴重本刊行会、昭和四十九年)所収の摺題簽、新板目録、書題簽の記載等に拠った。
原題簽以外の情報によって整理したものについては、書名に以下のような記号を付した。
「  」 柱題に拠ったもの
〈  〉 書題簽に拠ったもの
《  》 『青本絵外題集』に拠ったもの
なお、原題簽をともなうものの内、明らかに再板と思われ、かつ初板での書名が不明なものについては【  】を付した
ウ 画作者については、作中にある形をそのまま挙げた。複数の形がみられるものはそれぞれ挙げた。
エ 柱題については、巻毎に異なっているものについては別に挙げた。丁によって清濁の異なるものについては( )にそれを示した。なお、マイクロフィルム等で閲覧し、原本を調査していないものもあり、柱題に関しては清濁等の点で正確でないものも含まれる。
オ その他各事項に関して、留意点、問題点等があるものについては※印を付してそれを記した。

  富川房信著作年表稿

    ○草双紙
【宝暦 十年】

丸小(原題簽未見。『公時接穂梅』に「丸屋/山本□兵衛板」の「辰之年新板目録」がそなわる。)
○[縁結赤人塚] 二巻 富川房信筆
「ゑん結び赤人つか」上「縁むすびあか人つか」下
 ※作中に丸小の商標あり。加賀文庫本は二巻本で書題簽に「縁結赤人塚」とある。また、東京国立博物館本は一巻本で(上巻部分のみ、画作者名記載部分なし)、「門出縁むすび」とある、幅の狭い一枚の摺題簽(題簽の上段に書名、右下に丸小の商標)を持つ赤本体裁の本だが、題簽中に「上」の文字はなく、二巻の内の上巻のみを一巻一冊で刊行した改題再摺である可能性も考えられる。よって柱題との共通性から、本書は元は『公時接穂梅』の新板目録所収の「縁結赤人塚」であった可能性が高いと考えられる。新板目録には画師として鳥居清倍および鳥居清満の名のみが挙げられ、富川房信の名はみられないが、新板目録の中に何かを削除したとも思われる空白部分があり、丸小板の新板目録の様式を考えると、その空白部分に元は房信の名が挙げられていた可能性を考えることもできる。本書を含め、この新板目録に収められるものの原題簽は今のところ見当たらず、なお検討する必要があるが、一応本書の刊年および書名は新板目録に従う。
○[猿蛸鼈大喧嘩] 二巻 富川房信筆/絵師 富川房信
「猿すつぽん大喧嘩」上「さる鼈大けんくわ」下
 ※作中に丸小の商標あり。慶応大学本は原表紙の上の替表紙に書題簽で「猿蛸鼈大喧嘩」とあり。この書名も『公時接穂梅』の新板目録にみられるが、柱は「猿すつぽん大喧嘩」とあり、蛸の字がみられない。ただし、蛸も主要な登場人物として作中にみえるので、本書が『猿蛸鼈大喧嘩』であっても矛盾しない。慶応大学本は黒本体裁で、先掲の『門出の縁むすび』より幅の広い一枚題簽が貼付されていた跡がみられる。本書の刊年および書名も新板目録に従う。前項参照。

【宝暦 十一年】

 鶴屋(挿絵部分は打出の小槌に小判の意匠、外題の上下に「巳」字および鶴屋の商標)
○金時西国巡礼 二巻 富川房信筆
「きんとき」上「公とき」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○元服朝比奈 二巻 富川房信筆
「けんぶ(ふ)くあさいな」上「けんふく朝ひな」下
  ※作中にも鶴屋の商標あり。
○佐々木稚草 二巻 絵師 富川房信
「佐ゝ木稚草」上「佐ゝ木をさな艸」下
○須磨浦青葉笛 二巻 富川房信/富川房信筆
  「須广の浦あをばの笛」上「すまのうらあをばの笛」「すまのうら青はのふえ」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。

【宝暦 十二年】

 鶴屋(挿絵の上下に鶴屋の商標七つに松葉の意匠、外題の上下に馬の絵および鶴屋の商標)
○おしゆん伝兵衛/末ひろ扇 二巻 富川房信筆
「すへひろ扇」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○僧正遍昭物語 二巻 富川房信筆
「そう正へんせう」上「僧じやうへん昭」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。

 村田(挿絵の上段に枝垂れ桜、下段に馬の絵の意匠、外題の下に村田の商標)
○仁心蟹物語 二巻 富川房信筆
「かに物かたり」上「かにものかたり」下

 丸小(挿絵の上段に猿と猪が馬を持ち上げる意匠、外題の下に丸小の商標。関西大学所蔵『陸奥源平/武勇問答』に「午之年新版目録」がそなわり、「絵師 富川房信」の名もみえる。)
○浮世楽助/一盃夢 二巻 富川房信筆
「うきよらく介」上「うきよらくすけ」下

【宝暦 十三年】

 鶴屋(挿絵の上段に富士山、下段に松の遠景と朝鮮人七組の意匠、外題の上下に「未」字および鶴屋の商標)
○碓氷貞光奉公始 二巻 富川房信筆
「うすゐの貞光」上「碓ゐのさたみつ」下
○吝坊竹子諍 二巻 富川房信筆 「しわんほう」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○信玄権輿軍 二巻 富川房信筆
「信けん初いくさ」上「しん言はつ軍」下
○雪中濃両敵 三巻 富川房信筆
「雪中の両かたき」上下「せつちうの両敵」中
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○妖怪雪濃段 二巻 富川房信筆
「はけものゆきの段」上「化ものゆきのたん」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。

【明和 元年】

 鶴屋(挿絵の上下に黒地に括猿を配した意匠、外題の上下に「申」字および鶴屋の商標)
○三鱗青砥銭 三巻 富川房信画
「あをと左ヱ門」上下「青とさへもん」中
  ※作中に鶴屋の商標あり。

 奥村(挿絵の上下に黒地に括猿四つの意匠、外題の下に奥村の商標)
○《徳若才若/初春万歳寿》 三巻 富川房信画 「まんさい」
  ※加賀文庫本は書題簽に「徳若才若/初春万歳寿」とあり。『青本絵外題集』に同書名中巻摺題簽があり、その挿絵と類似した構図が本書七丁裏にみられるので、本書の書名・刊年および板元もこれに従う。

 村田(挿絵の上下に括猿と桃二つずつの意匠外題の上下に「申」字および村田の商標)
○風流酒煙草問答 三巻 富川房信画/富川房信筆
「酒たばこもんだう」上下「さけたばこ問だう」中
  ※『日本古典文学大辞典』本書解説(木村八重子氏執筆)によれば、『諸国新百物語(御伽比丘尼)』巻二、『新竹斎』巻一、『さゝやき竹』の摂取が確認できる。

【明和 二年】

 鶴屋(挿絵部分は太鼓に鶏が乗った意匠、外題の下に鶴屋の商標)
○《石部金吉〓》 三巻 富川房信画
  「いしべきん吉」上「石へ(べ)きんきち」中「石部金吉」下
  ※京都府立総合資料館蔵の、草双紙の残欠本を貼り込んだ『黒表紙本集』第七冊に、一・二・三・六・七・十・十三丁のみが収められる。「柱 いしべきん吉」と墨書されるのみで、書名は不明だが、『青本絵外題集』に、右に挙げた意匠で、『石部金吉〓』上巻の摺題簽がみられる。京都府立総合資料館本に残存する丁に、題簽と同じ構図を持つものはみられない。ただし、題簽に描かれる人物と似た装束の人物が作中みられ、欠けている四・五丁に同図があった可能性はあると思われる。また、同年同板の房信作品が他にもある。各丁を匡郭で截って貼り込んでいるため、作中に商標が存していたかは不明であるが、鶴屋板でないことを示してはいない。以上のことから、一応本書は『石部金吉〓』である可能性が高いと考え、刊年、板元、書名は『青本絵外題集』所収の題簽に従う。
○田原又太郎/扇子絵物語 三巻 富川房信画
「扇絵物か(が)たり」上「あふきゑもの語」中下
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○小山田求女塚物語 三巻 富川房信画/富川房信筆
「もとめつか」上「もとめ塚」中「求つか」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○胴丸鎧軍記 二巻 富川房信画
「とう丸のよろひ」上「胴まるのよろひ」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○源世継白旗 二巻 富川房信筆
「出世ほしかふ(ぶ)と」上「出世ほし兜」下

 奥村(挿絵の上段に屋根の上に瓢箪四つ、下段に南瓜様のものの両脇に瓢箪の意匠、南瓜の中に奥村の商標、外題の上段に雌雄の鶏の絵馬)
○武門妹背繁栄 二巻 富川房信画 「いもせのはんゑい」
○名筆倶梨加羅丸 三巻 富川房信画 「くりからまる」
○三ツ巴勇力始 三巻 富川房信画 「三ツ巴」
  ※岩崎文庫本は商標部分が削除されているが、題簽の意匠から、奥村板とする。

 村田 (挿絵の上段に正月飾り、下段に鶏の羽子板〈上巻は雄、下巻は雌〉と羽二つの意匠、外題の上下に「酉」字および村田の商標)
○寿天香久山 二巻 富川房信画
「天のかく山」上「あまのかくやま」下
○白梅泰平〓 二巻 富川房信画/戯作 丈阿
「たい平のはたきぬ」上「太平のはた衣」下

【明和 三年】

 鶴屋(挿絵の上段に狗張子、鼓、風車、でんでん太鼓、笛他、下段に虎の張子他の玩具の意匠、外題の上下に「戌」字および鶴屋の商標)
○石枕/浅草野路一家 二巻 富川房信画
「いしの枕」上「石のまくら」下
○《化物大福帳》 二巻 富川房信筆/富川房信画
「化物大ふく帳」上「ばけもの大福帳」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。大東急記念文庫本は書題簽に「化物大福帳」とあるが、『青本絵外題集』に同書名の下巻摺題簽が収められ、その挿絵と本書七丁表が同図なので、本書の刊年および書名はこれに従う。
○《風流/左リ甚五郎》 二巻 富川房信画/富川房信筆
「左リぢん五郎」上「ひだ(た)り甚五郎」下
  ※大東急記念文庫本は書題簽で「風流/左リ甚五郎」とあり。『青本絵外題集』に同書名の上巻摺題簽が収められ、その挿絵と本書四丁裏の挿絵が類似しているので、本書の書名・刊年・板元もこれに従う。

 奥村 (挿絵の上段に宝珠、下段中央に奥村の商標、左右に舟と宝珠の意匠、外題の上に「犬」字と弓の絵)
○渋谷金王大島台 二巻 富川房信画/富川房信筆 「金王丸」
○高圓嶺村雲物語 三巻 富川房信画/富川房信筆
「あこぎがうら」
  ※作中に奥村の商標あり。
○新田楠智略物語 三巻 富川房信画 「につた楠」
  ※作中に奥村の商標あり。
○雪こん〓〓御寺の茶木 二巻 富川房信画 「雪こん〓〓」
  ※作中に奥村の商標あり。

【明和 四年】

 奥村 (挿絵の上段に黒地に巻物二軸と火焔太鼓、下段に雛人形と鳥兜の意匠、外題の上下に「い」字と奥村の商標)
○敵打禅衣物語 三巻 絵師 富川房信/富川房信画
「じゆんれい」
○鶴亀大島台 二巻 富川房信画 「つるかめ」
○備前平四郎成房 二巻 富川房信筆 「平四郎」

【明和 五年】

鶴屋 (挿絵下段に宝尽くしの前に鼠二匹の意匠、外題の下に鶴屋の商標)
○風流/甲斐源氏再時宗 三巻 富川房信画
「甲斐源氏上(中・下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○風流/大森彦七二葉の前/鬼女物語 三巻 富川房信画
「鬼女物語上(中・下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○風流/そそそ/大福長者物語 二巻 富川房信画
「そそそ上(下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○風流/仁徳天皇名歌竃 二巻 富川房信画
「ほうらい山上(下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○風流/矢根朝比奈 二巻 富川房信画 「やのね上(下)」
○和文字二十四孝 二巻 富川房信画
「せつちうのたけのこ」上「せつ中の筍」下
  ※題簽中のルビは「やまともじにしうしこう」下巻は「やまとがなにじうしこう」となっている。作中に鶴屋の商標あり。

奥村 (外題の上下に小判をくわえた鼠の絵および奥村の商標)

○鎌倉権五郎二人景政 三巻 富川房信画/富川房信
「二人かけまさ」
  ※『東京大学所蔵草雙紙目録』初編(日本書誌学大系六十七、青裳堂書店、平成五年)に、「五丁表に『よいわかしゆさんしんすい(薪水=二世坂東彦五郎、明和五年没)にそのまま』という文句があるので、明和五年(子年)の刊行としておく。」とある。
○一人武者平井保昌 三巻 富川房信画 「一人むしや」
  ※作中に奥村の商標あり。

丸小 (上巻は注連縄、門松、小判の上に宝尽くし、小判の周りに鼠九匹、内一匹着物を着てそろばんを手にしている意匠、中巻は注連縄、恵比須、大福帳、米俵二俵の前に鼠二匹の意匠、外題の下に丸小の商標。下巻については未見。『ぢゝとばゝがあつたとさ/大鳥毛庭雀』に「丸屋 山本小兵衛」「子之年新版目録」がそなわる。)
○[ぢゝとばゝがあつたとさ/大鳥毛庭雀]二巻 富川房信画「竹にすゞめ 丸小」上「丸小 竹にすゞめ」下
 ※国会図書館本および岩崎文庫本はいずれも書題簽で、原題簽なし。書名・板元・刊年は本書巻末の新板目録に拠る。

鱗川 (挿絵の上段中央に「戊子」字および左右に亀と鶴屋、下段に松と竹の意匠、外題下に鱗川の商標)
○余故恋募/忠義の嶋台 二巻 富川房信画 「大しま」
  ※岩崎文庫本には上下巻原題簽がそなわるが、干支部分および板元の商標部分が削除されている。同意匠の摺題簽が『青本絵外題集』に収められており、これには干支の「戊子」および鱗川の商標がみえるのでこれに従う。

【明和 六年】

鶴屋 (挿絵の上下に折り鶴と松葉を三つずつ配した意匠、外題の上下に「丑」字および鶴屋の商標)
○貞女恋目双六 三巻 富川房信画 「乞目双六上(中・下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○鎌田又八化物退治 二巻 富川房信画
「かま田又八 上(下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○金平猪熊退治 三巻 富川房信画
「坂田金平上(中・下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○倉治山忠儀生不動 三巻 富川房信画」
「いき不動上(中・下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○甲賀三郎三本刀 二巻 富川房信画
「三本かたな上(下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○安芸備後/鷹塚村旧跡 二巻 富川房信画
「鷹塚村上(下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○《但馬国紀崎郡/盛継松》 二巻 富川房信画
「もりつぐ松」上「もりつく松」下
  ※国会図書館本は打付書で「もりつく松」、狩野文庫本は合綴した表紙に打付書で「但馬国紀崎郡盛継松」とあり。『青本絵外題集』に『但馬国紀崎郡/盛継松』中巻摺題簽がみえるが、その挿絵と本書八丁裏九丁表の構図が一致するので、本書もこれに従う。作中に鶴屋の商標あり。
○若恵比寿吉例釣初 二巻 富川房信画 「若ゑひす上(下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。

奥村 (外題の上下に牛の絵および奥村の商標)

○江間小四良平氏謂 二巻 富川房信画 「江間の小四郎」
○《丸元服朝比奈》 二巻 富川房信画 「つるの丸」
  ※大東急記念文庫本・国会図書館本はいずれも原題簽なし。ただし、『青本絵外題集』にこれに当たると思われる摺題簽が収められ、その挿絵と本書四丁表が同図なので、本書の刊年、書名はこれに従う。
○窟出世登竜 三巻 富川房信画 「のぼりりやう」
  ※作中に奥村の商標あり。
 舎那王丸門出夷 二巻 富川房信画 「しやなわうまる」
須原 (挿絵の上段に松と根笹を配した意匠および「丑」字〈もしくは干支なし〉、下段に鶴亀、笹および松を配した意匠、外題の下に「須原」)
○鬼ハ外福ハ内/吉例歳男始 二巻 富川房信筆 「まめまき」
  ※大東急記念文庫本には上巻のみ原題簽がそなわるが、『青本絵外題集』に本書下巻題簽が所収され、「丑」字がみえる。本書の刊年はこれに従う。

【明和 七年】

鶴屋 (挿絵の下段に虎の絵の意匠、外題の下に鶴屋の商標)
○鎌倉金沢/朝比奈切通 二巻 富川房信画 「切通し上(下)」
※作中に鶴屋の商標あり。
○猿影岸変化退治 三巻 富川房信画 「さる懸岸上(中・下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○天長平安都 三巻 富川房信画 「天てう上(中・下)」
  ※大東急記念文庫本は下巻原題簽がそなわるが、『青本絵外題集』に本書の上巻摺題簽が所収されるので書名の表記はこれに従う。作中に鶴屋の商標あり。
○東辺木捺刀作 三巻 富川房信画/富川房信筆
「とうへんほく」
○化物一家髭女 三巻 富川房信画 「ひけ(げ)女」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○二面凱草刈鎌 二巻 富川房信画 「二おもて上(下)」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○雲のたへま/鰤舎利の始 二巻 富川房信画 「ふりしやり」
※作中に鶴屋の商標あり。

奥村 (外題の上下に虎の絵および奥村の商標)

○玉手箱/東方朔九千歳 三巻 富川房信画
「とうぼ(ほ)うさく」
○風流ゐかい田分 三巻 富川房信画 「いかいたわけ」
○かつらきやま/眉輪王出生記 二巻 富川房信画
「かつらきやま」

村田 (挿絵の上段に鶴、下段に宝尽くしの意匠、外題の上下に「寅」字および村田の商標)
○鞍馬出世羽団 三巻 富川房信画 「はうちわ」
○坂田金時/龍宮土産 二巻 富川房信画 「金平」

【明和 八年】

鶴屋(挿絵の下段に兎二羽の意匠、外題の下に鶴屋の商標)
○虚言八百根元記 二巻 富川房信画 「うそ八百」
○軍法白金猫 三巻 富川房信画 「ふしのたかね」
○阿はゝ三太郎/三代菅笠 二巻 絵師 富川房信 「三太郎」

奥村 (外題の上下に兎の絵および奥村の商標)
○手柄渕物語 二巻 富川房信画 「てからのふち」
○渡辺綱身請論 三巻 絵師 富川房信 「わたなへのつな」
  ※本書と同名の書題簽が貼付された加賀文庫本は柱題が「大江山」で、画作者名もない、別本である。

松村(挿絵の上下に波に兎の意匠、外題の下に松村の商標〈「松」〉)
○風流/鬼とのじやれ勇猛弓 二巻 絵師 富川吟雪
「おにとの」
○風流/堅田亀善悪物語 三巻 富川房信画 「かたゝのかめ」
○風流/鬼女面福貴艸 三巻 絵師 富川房信
「冨貴草(艸)」
○風流/阿部清明芦屋道満/智恵競 五巻 絵師 富川房信
「せいめい」
○風流/妻鹿庄二王三郎大太刀 三巻 絵師 富川房信
「二王三郎」
○風流/龍宮曾我物語 二巻 絵師 富川房信
「りうく(ぐ)う」

村田 (挿絵の上段に宝尽くし、下段に鯛、釣り竿および笊の意匠、外題の上下に兎の絵および村田の意匠)
○能とろ之助/孝勇変化退治 二巻 絵師 富川房信 
「のとろ」
  ※作中に村田の商標あり。

【安永 元年】

鶴屋 (挿絵の下に龍の意匠、外題の下に鶴屋の商標)
○風流/安方妙薬 三巻 絵師 富川吟雪 「あほうの薬」
※作中に鶴屋の商標あり。
○土肥山牧/鬼鹿毛駒 二巻 絵師 富川吟雪 「おにかけ」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○漢竹笹龍膽 三巻 絵師 富川吟雪 「かんちく」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
大東急記念文庫本上巻、岩崎文庫本上中下巻原題
○うかれ法師/寝言噺 二巻 絵師 富川吟雪 「うかれ」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○化物親玉尽 二巻 絵師 富川吟雪 「はけもの」
※作中に鶴屋の商標あり。

奥村 (外題の上下に「辰」字および奥村の商標)
○悪魔除鐘馗勢 三巻 絵師 富川吟雪 「あくまよけ」
 《粂平内石像物語》 二巻 絵師 富川房信 「粂の平内」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「粂の平石像物語」とあり。ただし、『青本絵外題集』に同書名上巻の摺題簽が収められ、挿絵と本書四丁表が同図となっているので、刊年・書名・板元はこれに従う。
○運附太良左右衛門 三巻 絵師 富川吟雪
「うんつく太郎左右衛門」
○夜雨虎少将念力 二巻 絵師 富川房信
「夜雨とらせう〓〓」

松村(挿絵の上段に黒地に龍、下段に龍と「福寿」の意匠、外題の下に松村の商標〈「松村」〉)
○風流邯鄲/浮世栄花枕 二巻 絵師 富川吟雪
「ゑいぐ(く)わ枕上(下)」
○源平鉢かづき姫 三巻 絵師 富川吟雪
「はちかつき上(中・下)
○風流/二人兼ひら 二巻 絵師 富川房信
「二人かねひら」

伊勢治(二枚題簽。外題簽の上下に「辰」字および伊勢治の商標。『敵討羽宮物語』(『念力岩通羽宮物語』)に「伊勢屋次助板」「辰ノ新板惣目録」がそなわり、「作者絵師 房信事 富川吟雪」の名が挙げられている。)
○有馬うはなり湯 二巻 絵師 富川吟雪 「うハなり」
  ※新板目録には「摂津国有馬嫐湯」の書名で収められる。
○《からす勘左衛門/出世のかけ鯛》 三巻
絵師 富川吟雪 「烏かん左ヱ門」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「烏勘左衛門出世のかけ鯛」とあり。『青本絵外題集』に同書名の中巻外題簽が収められる。絵題簽を欠くので、本書と比較はできないが、書名・刊年・板元はこれに従う。新板目録には「烏かん左衛門」の書名で収められる。
○ぬゑのたんじやう 三巻 絵師 富川吟雪
「ぬゑのたんしやう」
○[念力岩通羽宮物語] 五巻 絵師 富川吟雪 「はミや」
  ※大東急記念文庫本には蔦屋板の摺題簽(「五冊物/金比羅御利生/敵打羽宮物語」)がそなわるが、本書末尾に伊勢治板の新板目録が存するので、これは再板のものと考えられる。京都大学本『念力岩羽宮物語』は書題簽の本で、表紙に原題簽が残存するが、わずかにみえる意匠から蔦屋板の題簽であることが分かる。伊勢治板が蔦屋板に先行すると考えられるので、本書の刊年・書名・板元は新板目録に従う。
○[百千宝蔵] 三巻 絵師 富川吟雪 「たから」
  ※岩崎文庫本に原題簽がそなわり、外題の読みは「ひやくせんほうそ(ぞ)う」となっており、外題の上下に「寶」字および伊勢治の商標がみえる。『念力岩通羽宮物語』の新板目録にも「百千宝の蔵 三冊」が収められる。この書名は「ひゃくせんたからのくら」としか読めないが、本書の柱は「たから」となっており、他書に関しても摺題簽と新板目録との間で書名に差異がみられるので同書名と考えることができる。本の巻数も一致し、新板目録に「富川吟雪」の名がみえるのと本書の画作者名も一致する。岩崎文庫本の刊行が安永元年に先行するものかどうかが問題となるが、岩崎文庫本の題簽は通常「新板」といった文字が入ることの多い外題の上に「寶」字が入ることから、再板である可能性が高いと考え、刊年・書名は新板目録に従う。
○風流/振袖べんけい 二巻 絵師 富川吟雪
「べ(へ)んけい」「邊けい」
○めくら仙人目明仙人 二巻 絵師 富川吟雪 「めくら」
○《風流/夏鉢の木》 三巻 絵師 富川吟雪 「はちの木」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「風流夏鉢木」とあり。『青本絵外題集』に外題の上下に「辰」字および伊勢治の商標のある『風流/夏鉢の木』上巻の外題簽が収められる。絵題簽を欠くため、本書と比較することはできないが、刊年・書名・板元は一応これに従う。

【安永 二年】

奥村(外題の上下に「巳」字および奥村の商標)
○女敵討古郷錦 三巻 絵師 富川吟雪 「こきやうのにしき」
○木曽四天王化物退治 三巻 絵師 富川吟雪
「四天王ばけ物たいじ」

伊勢治 (挿絵の上下に市松と縞の意匠および上段中央に「巳」字〈もしくは「寶」字か〉、外題の下に伊勢治の商標)
○《和田軍勢門出大盃》 二巻 絵師 富川吟雪
「わだぐんぜ(せ)い」
  ※大東急記念文庫は書題簽に「和田軍勢門出の大盃」とあり。『青本絵外題集』に同書名下巻の摺題簽が収められ、「寶」字および伊勢治の商標がみられる。題簽の挿絵と本書十丁裏が同図であるので、本書の書名・板元はこれに従う。また、同じ意匠の題簽に「巳」の字がみえるので、刊年はこれに従う。「寶」字が再板時に変えられたものかどうか、検討が必要かと思われる(『折助恵方わらし』下巻および『玄海嶋開運弓初』中巻題簽には「巳」字あり)。
○玄海嶋海運弓初 三巻 富川吟雪
「げ(け)んかいがしま(嶋)」

【安永 三年】

鶴屋(挿絵の下段に馬と桜、外題の下に鶴屋の商標)
○角麿宝剣/威徳物語 二巻 絵師 富川吟雪
「つのまる上(下)」
○寛猛/鎌倉三代記 二巻 絵師 富川吟雪
「かまくら三代記」
○子持童子/四天王再功 三巻 絵師 富川吟雪
「くつかけ峠」
○妖物山入/剛屋敷 三巻 絵師 富川吟雪
「つわものやしき上(下)」
○風流/妖相生の盃 二巻 絵師 富川吟雪
「ば(は)けもの」
○名所風俗金王桜 三巻 絵師 富川吟雪
「金のてうじ(し)や」

奥村(外題の上下に「午」字および奥村の商標)
○奉納秀哥/妹背寿 三巻 絵師 富川吟雪 「ほうのふ」
○風流仙人花聟 三巻 絵師 富川吟雪 「せん人の花むこ」
○かづさ五郎兵衛/忠義赤旗 二巻 絵師 富川吟雪
「忠義のあかはた上(下)」

松村(挿絵の上段に黒地に桜の花、下段に水辺の馬二頭、外題の下に松村の商標〈「松村」〉)
○三好長慶室町軍 三巻 絵師 富川吟雪
「よしてる上(中・下)」
○熊坂長範/世語古跡松 二巻 絵師 富川吟雪
「こせきのまつ上(下)」
○義高霞の松 三巻 絵師 富川吟雪
「かすミの松」上「ミすミの松中(下)」中下
○諸願円満/連理噺 二巻 絵師 富川吟雪
「れんりくるま上(下)」

【安永 四年】

鶴屋(挿絵の上段に帆に「未」字のある、宝を乗せた船の意匠、外題の下に鶴屋の商標)
○十六嶋千代の碑 三巻 絵師 富川吟雪 「十六嶋」
○木竹ごた交軍談 二巻 絵師 富川吟雪 「木に竹上(下)」
○多武峰爪黒の笛 三巻 絵師 富川吟雪
「たぶ(ふ)のミね上(中・下)」

奥村(外題の上下に「未」字および奥村の商標)
○高名太平記 三巻 絵師 富川吟雪
「ちうしんこうめう」
  ※丁付が「十一」から「二十五終」となっている。同年刊『増補大星/忠義手本』と組みになっているものか。
○増補大星/忠義手本 二巻 絵師 富川吟雪
「ちうしんこうめう」
  ※丁付が「一」から「十」までとなっている。同年刊『高名太平記』と組みになっているものか。
○晴宗有明琵琶 二巻 富川吟雪 「ありあけのひわ」

松村(挿絵の上段に黒地に花、下段に羊の意匠、外題の下に松村の意匠〈「松」〉)
○妖怪末広遊 二巻 富川画 「ひてんのおふき」
○軍法伊沢硯 二巻 富川吟雪画 「軍ほう上(下)」
○大伴真鳥/振袖児手柏 三巻 絵師 富川画
「まとり上(中・下)」
○嫩源氏旭松 二巻 富川画 「娘べんけい上(下)」

西村屋(挿絵の上段に幕、下段に投扇興の意匠、外題の上下に「未」字および西村屋の商標。『風流司李暗管音』に「未年板目録」がそなわる。)
○出世やつこ 三巻 絵師 富川画/富川吟雪画
「しゅつせやつこ」
【安永 五年】

鶴屋(外題の上下に「申」字および鶴屋の商標)
○頼政沢辺之白昌 二巻 絵師 富川吟雪/絵師 富川吟雪画
「さわべのあやめ」

奥村(外題の上下に「申」字および奥村の商標)
○馬鹿羅州/安林主物語 二巻 絵師 富川吟雪 「馬鹿羅州」
 ※大東急記念文庫本は書題簽で原題簽なし。ただし、『青本絵外題集』に同書名の下巻題簽があり、その挿絵と本書九丁表が同図なので、本書の刊年・書名・板元はこれに従う。
○石川村五右衛門物語 二巻 絵師 富川吟雪/絵師 富川画
「石川村」
  ※作中に奥村の商標あり。
○風流/四角四面兵衛 三巻 絵師 富川吟雪
「しめんひやうへ」
  ※作中に奥村の商標あり。

松村(挿絵の上下に黒地に括猿と鈴の意匠、外題の下に松村の意匠〈「松」〉)
○娘敵討上代染 五巻 絵師 富川吟雪 「娘かたきうち」
  ※『黄表紙総覧』(日本書誌学大系四十八、昭和六十一年、青裳堂書店)に「『孝心女子鑑』は同年刊の改題本」とあるが、題簽と本文とで、挿絵の画風が異なるので、本書刊行以降の改題本とみられる。
○【前編/倭文字養老の瀧】 三巻
絵師 富川吟雪/富川吟雪 「ようろうの瀧」
 ※後編『唐文章三笠の月』(鳥居清経画)の前編にあたる。黄表紙総覧』は、両書とも画風が古いと指摘し、本書に関しては「吟雪の画風はいかにも古風をとどめ、再板であることは疑いのないところであ」り、両書とも「(改題)再摺再板であったと見倣し得る」としている。ただし、今のところ他の書名をもつ本は見当たらない。再板の可能性を考えておくにとどめる。

伊勢治(題簽に「申」字および伊勢治の商標)
○神力女将門 二巻 絵師 富川吟雪 「女将門」

伊勢幸(挿絵の上下に括猿二つと桃の意匠、外題の下に伊勢幸の商標)
○風流/化物鳴神 二巻 絵師 富川画 「化なるかミ」
○初春福寿草 二巻 絵師 富川吟雪/絵師 富川画
「ふくじゆ草」

西村屋(挿絵部分は黒地に桃の意匠、外題の上下に「寿」字および西村屋の商標、『朝比奈嶋渡』十五丁表に「さるとのとしのしんはん」がそなわる。)
○朝比奈嶋渡 三巻 絵師 富川吟雪画 「しまわたり」
  ※作中に西村屋の商標あり。
○金々仙人通言一巻 三巻 絵師 富川画 「きん〓〓仙人」
  ※作中に西村屋の商標あり。
○新信田の小太郎 二巻 絵師 富川吟雪
「した(だ)の小太郎(下)」
  ※作中にも西村屋の商標あり。
○風流司李暗管音 二巻 絵師 富川吟雪/絵師 富川画
「司李暗」
  ※作中に西村屋の商標あり。

【安永 六年】

西村屋(挿絵部分に鏡の上に鶏の意匠外題の上下に「〓寿」および西村屋の商標。『桃太郎かんこの鳥』に「酉春新版惣目録」がそなわる。)
○風流/狐馬出世寿 三巻 絵師 富川画/絵師 富川吟雪
「きつねのむま」
  ※作中に西村屋の商標あり。
○[風流新撰/なぞづくし] 一卷 富川吟雪画 「なそ」
  ※書名は『桃太郎かんこの鳥』奥付目録に拠る。作中に西村屋の商標あり。加賀文庫本は書題簽で原題簽を欠く。国会図書館本は別本で吟雪画でない。
○紅皿欠皿往古噺 二巻 絵師 富川吟雪 「べにざら」
  ※作中に西村屋の商標あり。
○桃太郎かんこの鳥 三巻 絵師 富川吟雪 「かんこのとり」
  ※作中に西村屋の商標あり。

【ある程度刊年が推定できるもの】

宝暦頃
●しんはん/菅承相紅葉幣 富川房信画
  ※未見。『大英図書館蔵 和漢書総目録』(川瀬一馬・岡崎久司編、講談社、平成八年)による。

宝暦十三年以降
鶴屋(挿絵部分は帆掛け舟、その背景に青海波の意匠、外題の下に鶴屋の商標)
○歌徳/明石潟朗天草紙 三巻 富川房信筆/富川房信画
「人まろ」上「人丸」中「ひとまろ」下
  ※『叢』第六号所収本書解説(三好修一郎氏執筆。『江戸の絵本T』も同様)によれば、宝暦十二年刊の浮世草子『柿本人麿誕生記』に取材することから、その年以降それほど経っていないころと推定される。
○箙梅接穂軍記 三巻 富川房信画
「ゑひらの梅」上下「箙のむめ」中
○望夫石/提彦松浦軍記 二巻 富川房信画
「大のゝ長しや」上「大野の長者」下
※作中に鶴屋の商標あり。
○新造/諏訪擁護/〓性兜 二巻 富川房信
「天もくさん」上「てんもく山」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。

明和八年もしくは安永元年
板元不明
○「ちやかま」 二巻 絵師 富川房信 「ちやかま」
  ※国会図書館本は下巻表紙に打付書で「化物/とんた茶釜」とあり。大東急記念文庫および岩崎文庫本所蔵の同書名の別本と区別するため、書名は柱に拠った。本書は明和二年市村座初演「降積花二代源氏」一番目「蜘蛛糸梓弦」に取材するが、作中「とんだ茶釜」の次丁に「薬鑵の化物」を登場することから、明和七年二月以降の流行語「とんだ茶釜が薬鑵に化けた」をきかしていると思われる。房信の号が用いられていることから、本書は明和八年もしくは安永元年刊と考えられる。
○「とんだちやがま」 二巻 絵師 富川房信
「とんだちやがま」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「登無多茶釜」、岩崎文庫本は「とんだちやがま」とあり、いずれも原題簽なし。国会図書館所蔵の同書名の別本と区別するため、書名は柱に拠った。本書は明和七年刊の浮世草子『風流茶人気質』に取材し、かつ「とんだ茶釜」「薬鑵和尚」の語から明和七年二月以降の流行語「とんだ茶釜が薬鑵に化けた」と結びつく点、および房信の号が用いられている点から、明和八年もしくは安永元年の刊行と考えられる(拙稿「富川房信画『とんだ茶釜』考」〈『実践国文学』第六十号、平成十三年十月〉参照)。

【刊年不明】板元が明らかなもの

房信・鶴屋1(作中の商標等から鶴屋板とわかるもの)
○〈観世音開帳記〉 二巻 富川房信画 「あさくさ」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「観世音開帳記」とあり、作中に鶴屋の商標および十丁裏に「板元(鶴屋商標)鶴屋喜右衛門」とあり。『黄表紙総覧』には本書を安永六年刊とし、「絵題簽は本年鶴屋版意匠とは異なる。『書目年表』では角書とするが、下巻絵題簽の図中に〈推古天皇三十六年より当酉歳まで三百五十年〉と記載がある(上巻絵題簽未見)。本年三月からの浅草寺観世音開帳に取材した際物出板。」とする。『黄表紙総覧』に挙げる絵題簽は『青本絵外題集T』(p225)にみえるものを指すと思われるが、本書のものかどうか疑問が残る。題簽中には鶴屋の商標がみえ、本書も鶴屋板であるが、画作者名は「富川房信画」である。安永二年以降房信の号を用いた例が見当たらないので、安永六年刊とは考え難い。題簽が本書のものだとしても、安永六年という点については問題が残る。
○〈酒呑童子物語〉 二巻 富川房信画 「とうし」
  ※狩野文庫本は合綴した表紙に打付書で「酒呑童子物語」とあり。作中に鶴屋の商標あり。
○「たい内十月」 二巻 富川房信画
「たい内十月」上「たいない十月」下
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○「大のきまり」 二巻 富川房信画
「大のきまり」上「大のき満り」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「大農起魔理」とあり。作中に鶴屋の商標あり。
○「てんく」 二巻 絵師 富川房信 「てんく」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○福神目(出度そろへ) 二巻 絵師 富川房信
「めてたひそろへ」
  ※加賀文庫本は書題簽に「福神目出度揃」とあるが、岩崎文庫本とは別本。岩崎文庫本には原題簽が残存する。柱題から「福神目」の後の破れた部分を右のように補うことができる(『叢』第十三号本書解説。細谷敦仁氏執筆)。
吟雪・鶴屋2(作中の商標等から鶴屋板とわかるもの)
○〈さの〓〓金毘羅ぶし〉二巻 絵師 富川吟雪 「こんひら」
  ※書名は国会図書館本書題簽に拠る。作中に鶴屋の商標あり。

房信・奥村1(挿絵の上下に瓢箪三つと葉二枚ずつを配した意匠、外題の下に奥村の商標)
○敵討連理の梅 三巻 富川房信筆/富川房信画 「敵うち」
  ※中巻原題簽あり、奥村の商標およびひょうたんの意匠あり。『当世御伽平家』(細長い一枚題簽、上段に書名、左下に丸甚の商標)と同板。どちらが先行するものか検討を要するが、明和期の丸甚板の摺題簽に『当世御伽平家』の摺題簽と同じ寸法のものがみられない(『青本絵外題集』を参考にした)。丸甚板は再板とも考えられるので、一応本書が先行するものと考え、奥村板としておく。
○工藤出世の大紋 二巻 富川房信筆 「くど(と)う」
  ※大東急記念文庫本には下巻原題簽が備わるが、板元部分は削除されている。ただし、同じ意匠の他書の題簽から奥村板とする。
○風流女蝉丸 三巻 富川房信画/富川房信筆 「せミまる」
  ※大東急記念文庫本には原題簽がそなわるが、板元商標部分は破れによって不明。ただし、『青裳堂書店古書目録』(平成五癸酉年梅見月)に『風流女蝉丸』が収められ、かつ中下巻の原題簽がそなわる(これにより大東急記念文庫本の題簽は下巻とわかる)。板元部分に奥村の商標がみえるので、本書も奥村板とする。
房信・奥村2(挿絵の上下に市松模様、市松の中は黒地に「寿」字および〓に十のような文様の意匠、外題の下に奥村の商標)
○白鼠妹背の中立 二巻 富川房信筆 「しろねずミ」
房信・奥村3(作中の商標等から奥村板とわかるもの)
○「あんほんたん」 三巻 富川房信画 「あんほんたん」
  ※『叢』第二号の本書解説(勝田敏勝氏執筆)に「ぢんかうきはおく村のがよいぞ」とあることから、板元奥村か、「あんぽんたん」の語が宝暦十三年頃の流行語と言われている点から、宝暦末から明和末年の間に書かれたと推測されるとある。
○「牛の時」 二巻 富川房信画 「牛の時」
  ※大東急記念文庫本は書題簽で「牛の時」とあり。作中に奥村の商標あり。
○〈加保茶唐茄出世寿〉 二巻 富川房信画
「かぼ(は)ちやか(が)とうなす
  ※書名は岩崎文庫本の書題簽に拠る。作中に奥村の商標あり。
○「しゆつけんのかめ」 三巻 富川房信画
「しゆつけんのかめ」
  ※作中に奥村の商標あり。
○「たかさご」 三巻 絵師 富川房信 「たかさご」
  ※岩崎文庫本および大東急記念文庫本は共に原題簽なし。作中に奥村の商標あり。
吟雪・奥村4(作中の商標等から奥村板とわかるもの)
○「あほうのかゞみ」 不明 絵師 富川吟雪
「あほうのかゞ(ゝ)ミ」
○ ※『台湾大学所蔵 近世芸文集』第五巻(鳥居フミ子編、勉誠社、昭和六十一年)に「日本一安方鏡」として影印が収められるが、これは上田文庫旧蔵である(同書解説)。台湾大学本には原題簽はなく、後補の書題簽に「あほうのかがみ」とある。草双紙の残欠本をまとめて貼り込んだ、京都府総合資料館蔵の『黒表紙本集』にも一・二・五・十丁のみが収められている。ただし、これは匡郭で截ちそろえているので、台湾大学本にみえる奥村の商標(一・六・十一丁表匡郭上部)がなくなっている。『国書総目録』に旧安田文庫蔵として挙げられる『日本一安方鏡』(富川吟雪画)は本書と同板であった可能性がある。もしそうならば、『青本絵外題集』所収の摺題簽にある、蔦屋板『日本一癡鑑』とも何らかの関係があるかもしれない。
○「とうしんのねごと」 二巻 絵師 富川吟雪
「とうしんのねこと」
  ※都立中央図書館東京資料本は書題簽で「唐人の寝言」、岩崎文庫本は「とうじんのねごと」とあり。一丁裏匡郭の上に奥村の商標あり。
吟雪・松村 (挿絵の上段に鯛と寛永通宝、下に波に「江嶋」の鳥居の意匠、外題の下に松村の商標〈松村〉)
○菊池赤星/武道松時雨 三巻 絵師 富川吟雪
「松にしくれ上(中・下)」
  ※『国書総目録』に安永三年刊とあるが、同年刊の松村板の作品と題簽の意匠が異なるので刊年不明としておく。


房信・山本(挿絵の上下に黒地に雪持笹の意匠、外題の下に山本の商標。『蜷川新右衛門』に「新板画書総目録」がそなわり、「画工 富川房信」の名もみえる。)
○[朝比奈草摺実記]二巻 富川房信筆 「あさひなくさす(ず)り実記」上「朝いな草すり実記」下
  ※国会図書館本は打付書で原題簽を欠く。柱題、巻数および画作者名がが新板目録の「朝比奈草摺実記 二冊/画工 富川房信」と一致するので、本書の書名はこれに従う。新板目録に収められる他書の原題簽の意匠から板元は山本とする。
○大磯虎車塚物語 二巻 富川房信筆
「大いその虎車づか」上「大磯のとら車づか」下
  ※岩崎文庫本の上巻原題簽に西宮の商標がみえる。題簽の意匠が山本板の他書と同じなので、岩崎文庫本は求板本と思われる。本書も元は山本板であったと考えられる。
○[蜷川新左衛門] 三巻 富川房信筆 「蜷川しん右ヱ門」
上「にな川新へもん」中「になかハしん右ヱ門」下
  ※書名は本書末尾の「新版画書総目録」に拠る。板元は新版目録所収の他書の原題簽に拠る。
○〈化物秘みつ問答〉 二巻 富川房信筆 「(上)見こし入道 まる小」上「ミこし入たう まる小」下
  ※板元は柱に拠る。内容・柱題および富川房信画であることから考えて、本書は山本板『蜷川新右衛門』の「新版画書総目録/画工富川房信」にみえる「化物見越入道」に当たる可能性があると考え、一応山本板としておく。
○風流鬼瘤昔咄 二巻 富川房信筆
「鬼にこぶむかし咄」上「おににこぶ昔はなし」下
  ※『蜷川新右衛門』の新板目録には「風流鬼ニ瘤」とあり。
○桃栗三平柿八兵衛 二巻 富川房信筆
「もゝくり三平柿八兵へ」上「桃栗三平かき八兵へ」下
房信・丸小(挿絵の上段に破魔弓、手鞠五つおよび餅花、下段に羽子板、手鞠六つおよび餅花の意匠、外題の下に丸小の商標)
○天目山大化物/山本勘助蛙琴責 二巻 絵師 富川吟雪
「丸小 化物かわず上」「化物かわず(下)」

房信吟雪・西村屋1(挿絵の上段に鶴亀の幕、下段に黒地に花五つ、外題の上下に「寿」字および西村屋の商標。『忠臣今川状』に「■之新版惣目録」がそなわる。)
○天神記幼菅原 三巻 絵師 富川吟雪 「おさな」
○熊井太郎源八兵衛 三巻 絵師 富川吟雪 「くま井」
  ※作中に西村屋の商標あり。
○新鉢かつぎ姫 二巻 絵師 富川吟雪 「はちかつき」
  ※作中に鶴屋の商標あり。
○忠臣今川状 三巻 絵師 富川吟雪 「今川状」
  ※国会図書館本上中下原題簽あり、「寿」および西村屋の商標あり。末尾に西村屋屋与八板「■之新版惣目録」があるが、■部分が不明なため、刊年はわからない(京都大学本も同様)。
吟雪・西村屋2(作中の商標等から西村屋板とわかるもの)
○「きとう丸」 二巻 絵師 富川画 「きとう丸」
  ※大東急記念文庫本の書題簽にある『市原鬼童/臥夜黒牡丹』という書名は鱗形屋板鳥居清経画の作品名(国会図書館所蔵)で誤り。柱を書名として挙げておく。
○〈はちかつき姫物語〉 二巻 絵師 富川吟雪
「はちかつき」
  ※作中に西村屋の商標あり。

房信・村田1(挿絵の上下に扇尽くしの意匠、外題の下に村田の商標。外題の上に元は干支を示すものがあったものと思われる。)
○むかし〓〓/御ぞんじの兎 二巻 富川房信画 「うさき」
  ※岩崎文庫本は上巻原題簽がそなわるが、干支部分は削除され空白となっている。作中にも村田の商標あり。
房信・村田2(作中の商標から村田板とわかるもの)
○〈金平竜宮物語〉 二巻 富川房信画 「金平」
  ※書名は岩崎文庫本の書題簽に拠る。

【刊年も板元も不明なもの】

房信
○浦嶋出世亀 三巻 富川房信/富川房信筆
「うらしま」上下「浦しま」中
 ※岩崎文庫本には上中下巻原題簽がそなわるが、板元の商標部分は削除されている。山本板『奥州攻二人景政』の目録に同書名が収められるが、この年の山本板の摺題簽の意匠(挿絵の上下に雀三羽ずつ、外題の下に山本の商標)は本書のものとは異なり、本書と同板であるかは不明。また、同板であったとしても、岩崎文庫本と山本板とのどちらが先行するものか検討の必要がある。
○〈小野道風〉 二巻 絵師 富川房信 「道風」
  ※書名は大東急記念文庫本の書題簽による。
○「かつさもめん」 二巻 絵師 富川画 「かつさもめん」  ※国会図書館本は打付書で「上総木綿」とあり。
○「かれ木にはな」 二巻 富川房信画 「かれ木にはな」
  ※大東急記念文庫本は打付書で「かれ木にはな」とある。
○「こいのたきのほり」 二巻 富川房信画
「こいのたきのほり」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「鯉の瀧登リ」とある。
○「たいふくてう」 二巻 絵師 富川吟雪 「たいふくてう」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「大福帳」とあり。
○「風流だるま隠居」 二巻 富川房信筆
「風流だ(た)るま隠居」上「達广いんきよ」下
  ※加賀文庫本は書題簽に「風流だるま隠居」とあり。
○「平家化物たいぢ」 三巻 富川房信画 「平家化物たいぢ」
  ※加賀文庫本は書題簽に「平家化物たいぢ」とあり。
○「福神十二だん」 二巻 富川房信画/富川房信筆
「福神十二た(だ)ん」
  ※加賀文庫本・大東急記念文庫本共に書題簽で「福神十二段」とあり。
○北条時頼記 五巻 富川房信画
「ほうしやう一代記三ツうろこ」一・二
「ほうせう一代記あをと」三・四・五
  ※大東急記念文庫本は第二巻のみ原題簽がそなわるが、板元部分が削除されている。
○〈物草太郎〉 二巻 富川房信筆 柱題なし
  ※書名は加賀文庫本書題簽に拠る。
○「もんがく」 二巻 富川房信筆
「もんがく」上「もんかく」下
  ※岩崎文庫本は書題簽に「もんかく」とあり。
○〈艶男信田神力〉 二巻 富川房信筆 「きつね」
  ※書名は加賀文庫本書題簽に拠る。
○「山かた」 二巻 富川房信画 「山かた」
  ※加賀文庫本は後補の題簽は空白で、貼紙に「山かた」とあり。
○「よなきの石」 一巻 富川房信画 「よなきの石」
  ※京都大学本は原題簽なし。
○「りくつ兵へ」 二巻 絵師 富川吟雪 「りくつ兵へ」
  ※岩崎文庫本は書題簽で「りくつ兵衛」とある。
○「龍くう咄」 二巻 富川房信画/富川房信筆 「龍くう咄」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「龍宮はなし」とあり。
●うら嶋太郎龍宮噺 二巻 富川房信(吟雪)画
「りうくうはなし」
  ※未見。『大英図書館蔵 和漢書総目録』による。同書に「下冊の原表紙に原印刷題簽存」とある。
吟雪
○「赤つきん」 二巻 絵師 富川吟雪 「赤つきん」
  ※大東急記念文庫本は書題簽で「赤つ(づ)きん」とあり。
○「一休ばなし」 二巻 絵師 富川吟雪
「一休ば(は)なし」
○「くまのゝおんせん」 三巻
絵師 富川吟雪/絵師 富川(空白)「くまのゝおんせん」
  ※加賀文庫本は後補の題簽は空白、「くまののおんせん」と貼紙あり。
  ※狩野文庫本は書題簽に「一休はなし」とあり。
○〈大鉞御存荒事〉 三巻 絵師 富川吟雪画/絵師 富川画
「大まさかり」
  ※書名は国会図書館本の書題簽による。『日本小説書目年表』安永六年の項に、松村板として同書名が挙げられる。『黄表紙総覧』同年の項に、「画風、内容ともやや古風なところがきになる。あるいは再板になるか、未考。」とある。『青本絵外題集』にも安永六年の項に同書名の摺題簽が収められるが、これは富川吟雪と画風が全く異なり、別本かあるいは本書再板の際の題簽と思われる。よって、刊年・書名および板元いずれも不明としておく。
●小野小町 四巻 富川吟雪(房信)画
  ※未見。大英図書館蔵 和漢書総目録』による。
○〈紅白曽我もの語〉 三巻 絵師 富川吟雪 「こうはく」
  ※書名は大東急記念文庫本の書題簽に拠る。
○「五こく」 二巻 絵師 富川吟雪 「五こく上(下)」
  ※一枚題簽の剥がれた痕あり。
○「さんねんめ」 三巻 絵師 富川吟雪 「さんねんめ」
  ※狩野文庫目録では本書を『福徳三年目』としているが、狩野文庫本自体には本書の書名に当たるものはない(表紙に「身為著宝洪福」とあるのは、合綴された作品を指すものである。『集古稗史』第一一冊所収)。小説年表等に拠るものと思われ、『日本小説書目年表』に安永元年刊松村板としてこの書名が載るが、本書を指すか不明である。
●諸鳥三国志 富川吟雪(房信)画
  ※未見。『大英図書館蔵 和漢書総目録』による。加賀文庫所蔵『諸鳥合戦記』(書題簽による書名、三巻、絵師 富川吟雪画 「鳥三国」)と同板か。
  ※未見
○〈化物車ひき〉 二巻 絵師 富川吟雪画/絵師 富川画
「化くるま引上(下)」
  ※題名は国会図書館本の打付書書名による。表紙に一枚題簽の跡がみえる。
○「ばけ物ひたか川」 三巻 絵師 富川吟雪
「ばけ物ひたか川」
  ※大東急記念文庫本は打付書で「化物日高川」とあり。
○「ゆうき紬」三巻 絵師 富川吟雪
「ゆうき紬上(中・下)」
  ※大東急記念文庫本は書題簽に「ゆうき紬」とあり。

    ○草双紙以外

咄本
安永 四年刊
○風流/はなし亀 二巻 奥村 絵師 富川吟雪画
「はなし亀」
 安永 五年刊
○新落噺初鰹 三巻 鶴屋
絵師 富川吟雪/作者絵師 富川吟雪
「はつかつほ上(中・下)」
読本
○湘中八雄伝 五巻五冊 北壺游作、富川房信画

狂言絵尽
○蜘蛛糸梓弦 一冊 富川房信画
○日本判官贔屓 一冊 富川房信画
●市村羽左衛門/若木花須摩初雪(上下) 明和元年刊
富川房信画
  ※未見。『大英図書館蔵 和漢書総目録』による。

台詞尽
○せりふ 一冊 富川房信画
  ※東京国立博物館蔵。「外郎売」「白酒売」「飴売つらね」「油売せりふ」に口絵を一丁加え、合冊したもの。東京国立博物館の和書目録では宝暦十一年刊としている。
絵本
○吉原遊君百姿 一冊 富川房信画

(注1)例えば、「大木の切口太いの根」が安永七年刊、恋川春町画作『辞闘戦新根』に黒本青本と結びつけられて以降、黄表紙に黒本青本を象徴化したものとして趣向に用いられていくが、実際の黒本青本にみられるのは『菊寿草』にある「生え際」であって、「切り口」は見当たらないなど、『菊寿草』や黄表紙に描かれる黒本青本と実際のそれとは異なる点がみられる。拙稿「草双紙における流行語の位置」(「近世文芸」第六十八号、平成十年六月)参照。
(注2)先掲の拙稿参照。
(注3)先に挙げた『草双紙年代記』の富川吟雪作品に見立てた場面には、「やんらぬはありや〓〓〓〓」「ヤアうんとな」「つよひわつぱしめだ」といった書き入れや化物が大きく描かれて人間を襲う構図がみられるが、これらは房信作品によくみられる特徴である。

[付記]
 本稿を成すにあたり、資料の閲覧を許可下さった大東急記念文庫、東洋文庫をはじめ各所蔵機関に深謝いたします。また木村八重子先生に原本の所在等について御教示を賜りました。心より御礼申し上げます。

「富川房信著作年表稿」
 『実践国文学』第61号(平成14年3月)所収。