鹿児島における情報公開訴訟

 

             鹿児島大学   小栗 実

 鹿児島県の食糧費支出の情報公開請求訴訟は、市民グル−プ「オンブズマン鹿児島」が中心になり、蔵元淳弁護士(27期)が代理人をつとめて、3次にわたって、続けられた。第1次訴訟は97年9月29日に全面開示の勝訴判決、つづいて、91年度の交際費について県知事および県監査委員会の非開示処分を争った第2次訴訟でも、98年2月6日に勝訴判決をかちとった。

 今年度は、93−95年度に県監査委員会事務局が執行した食糧費支出の公文書開示をもとめて非開示とされた処分の違法を争う第3次訴訟が取り組まれた。鹿児島地裁で99年1月29日に判決がだされ、牧弘二裁判長は「公務で懇談会に出席した者の氏名公開で、プライバシ−権など権利利益の侵害が生じる余地はない」と原告の主張をほぼ認めて、県監査委員会側に文書開示を命じ

た。

 これで、鹿児島では情報公開訴訟はいずれも市民側が勝訴した。しかし、県は、いずれの訴訟についても控訴して、現在、福岡高裁宮崎支部で争われている。

 福岡高裁宮崎支部では、99年4月16日に、奄美大島のゴルフ場開発に際して作成されたアマミノクロウサギ生息調査調査報告書の県教育委員会による非開示決定に関する控訴審判決が出された(第1審は原告が勝訴)。ここでも、海保孝裁判長は「文書開示で事業者の具体的利益は侵害されると認められない。かえって開示することで科学的認識が得られる」と判示して、原告が勝訴し

ている。この控訴審では、県側は、裁判途中で、非開示理由として「著作権の侵害」をつけ加えた。しかし、県の理由追加について、裁判長は「非開示の際には、著作権を理由としていないのに、訴訟の段階でそうした追加主張が無制限に認められることは容認できない。そのような事例が積み重なれば、悪しき運用を促進するおそれが十分にある」と県の態度をつよく批判する判決を出し

た。

                         (1999年4月)