What's new?
〜旧「音楽雑感」のページ、音楽の話題その他を日記風に綴る〜
2004年



[最新の日記へはトップページから入ってください]



2004年10月30日(土) なんとか間に合いました

 半年ほどかけて続けてきた楽譜の編集作業もなんとか一段落。予定通りの11月20日頃までには、たぶん店頭に並び始めることと思います。もちろん、カプースチンの2冊の新刊楽譜の話です。とても見やすくて綺麗な仕上がりになったと思います。長らくお待たせしてしまったという気持ちもありますが、はっきり言って超特急並みのスピード仕事でした。これ以上早い仕事は無理というものです。やらなければいけないことがたくさんあって本当に時間が足りませんでしたが、最後の最後まで粘りに粘った校正でおそらくミスプリもないだろうことを祈っていますが…。とにかく、作曲家自身の解説と運指が載った世界初の楽譜となりますので、カプースチンファンの方々には喜んでいただけるのではないかと思います。ここ1ヶ月くらいに集中していくつかリリースされる自作自演CDとともに、ちょっとした特集が組まれるのではないかと思います。楽器店等での正式な楽譜の予約受付もやっと始まったようです。

 話は変わりますが、先日うちの音大の「ピアノ指導法」の授業に斎藤雅広さんが講師として来てくれました。ローランドの電子オルガンと普通のグランドピアノを使っての講座で、その日は8月にお会いした時とは違って、ちゃんとピンクのネクタイ(!)にスーツで決めていました。私は1日のレッスンを終えてまだ時間が少しあったので、なぜか「あ、講座をやっている時間だったな」と思い出し、学生のふりをしてホールへ途中から入って聴いていました。前でマイクを持って喋っていた斎藤さんは、テンションもギャグもTVに出ている時とほぼ同じパワーで、講座が終わったあとも電子オルガンでいろいろ音を変えてデモ演奏をしてくれていました。そのあと学生たちに、「ぜひこの楽器で遊んでみてくださいね、面白いよ〜。はい、どんどん弾いてー」と言いながら客席を見渡し、後ろの方に座っていた私を見つけると、「あっ、カプースチンはこの楽器にはもってこいですねー。川上先生、カプースチン弾いて、カプースチン!!」と突然こちらに振られてしまい、不意を付かれていると、ステージに戻った彼は、「8つの演奏会用エチュード」から第1番の冒頭を自分で弾き始めました。なんでも弾くのですね、本当にこの人は。結局、疲れていた私は突然そのモードに切り替わることができずに、その後あまり期待に答えられなかったのですが。学生たちがほぼ帰ってから、存分に遊ばせてもらいました…。斎藤氏は電子楽器をかなり使い慣れているようでした。

 ポピュラー曲などを取り入れたりする際には、やはり電子楽器を使ってオーケストラのいろんな楽器の音を出したりするのは楽しいものです。ピアノのレッスンでは、真面目なクラシックのレパートリーの中にポピュラー曲をどのように組みこむか、というのはけっこう難しい問題です。楽しむだけが目的なら良いのですが、真面目にテクニックを少しずつでも磨いていこうと考えると、ジャズ・レパートリーを中心にやっていく、なんてことはやはり遠回りなわけです。でも、ピアノは「何でも弾ける」というのがやっぱり一番楽しいのですから、今の時代はジャンルに偏らずに音楽に親しむ方法をよく考えることが大切かもしれません。テクニックがつくよう努力もするけど、同時に幅広い音楽も経験する。いろんな楽器の知識を得たり特徴を知ると同時に、自分の専門楽器の技も磨く。きちんとクラシックで身につけたテクニックがあれば、もちろんカプースチンを弾くのも良いでしょう。だけど、カプースチンは、テンポの遅い曲以外はどうか中級以上の方が挑戦すべき曲だと思ってください。彼の作品には「上級」から「超上級」までは盛りだくさんなのですが…(苦笑)、でも今度出版の「24のプレリュード」には、易しくて魅力的な曲もありますのでどうかご安心を。

 考えてみれば、リストが「超絶技巧練習曲」を作曲した当時は、そんな曲はリスト本人(と彼の一番弟子?)ぐらいしか弾けなかったはずです。そんな難しい曲の楽譜をいったい誰が買うのか…楽譜を出版する価値などあるのか?という気がしますが、それが時代を下って現在まで残っていて、今では皆が楽譜を買って弾いているのですから…。本当に分からないものなのです。そう、ベートーヴェンのハンマークラヴィア・ソナタだって、作曲家本人が誰も弾けないだろうと本気で思っていたわけでしょう。
 だから、楽譜を買って「カプースチンは難しいじゃないか!」と怒る人が現われるかもしれませんが、少しの間(10年〜20年?)はその苦情にも耐えなければいけないかなと思っています。きっと多くの人が手に取るでしょうから…私だって易しいものを出版したいと思いますが、でも作品が作品なのですから。カプースチンは、自分が書きたいと思ったものは容赦しないのです。いわく、「私の作品には、きわめて易しいという作品は1曲もありません。」 ピアノを弾く人のテクニックは今よりまだまだ上がっていくでしょうし、もし素晴らしい音楽なら、たとえ難しくても挑戦してみたいという人が増えてくるはずだと思います。



2004年10月24日(日) 

 少し忙しい日々が続くと、すぐに日記の更新が遅れてしまいます。今年は台風が多かったので、つい最近まで何かと災難続きの感がありましたが、昨日の新潟(小千谷)の大地震のニュースでそんなものもすべてが吹き飛んでしまいました。一体何が起こったのか??と思うほどひどいです、これは。つい先日、私も上越新幹線「とき」に乗って新潟へ行ってきたところでしたし、まるで他人事ではありません。新幹線が脱線するというのですから、相当な揺れだったのでしょう。私が新潟へ向けて新幹線に乗った日は、確か台風が夕方に東京へ到着した日で、ちょうど台風に追われるようにして向った記憶がありますが、ひょっとしたらその逆だってあり得たはずです。本当に人生何が起きるか分からないですから、スケジュール的にも精神的にも、どんな場合にも仕事は余裕を持って入れていなければいけないということなのでしょう。しかし、何があっても冷静に行動できるということは、できそうに見えても実際はとても難しいことかもしれません。今回のように被災者が多く出ている状況で、一体私たちは何をしなければならないのでしょうか?

 今日はずいぶん更新の間が空いたので最近のことをいろいろ書いてみようかと思っていたのですが、あまり長く書く気がしないので日を改めたいと思います。とにかく、今は被災者の方々の回復と地震の復旧作業が早く進んでくれることを祈るばかりです。



2004年10月8日(金) 「カプースチン」楽譜編集記

 書きたいテーマはいろいろあるわけだけれども、わざわざ書くべきことと言えば、やはりカプースチン情報の最新ニュースということになってしまいます。この話題、あと少しの辛抱だと思ってお付合いください。今月から来月にかけて、カプースチンの楽譜とCDの発売に関連して、楽器店頭その他の宣伝などで大きく取り上げられるようです。

 この11月に出版される「24のプレリュード」と「8つの演奏会用エチュード」の楽譜の校正に関しては、作曲家本人にも目を通していただくことは最初から予定していましたが、話は思っていたよりも現実には大きくなってしまいました。今回の出版に際して、カプースチンは、「もうこの作品は作曲してからずいぶん時間が経つので、今ならこう書き直したいと思う箇所もある」とおっしゃられるのです。そういうわけで、作曲家の強い希望で楽譜を早い段階でお送りしました。(私は今回のやりとりで、ロシアとの郵便事情にいくらか詳しくなりました(^_^))
 こちらの出版事情で、少しせかしてしまって申し訳なかったのですが、校正楽譜はこちらの指定通りの期日に戻ってきました。校正というものは時間がかかるもので、丁寧に見なくてはなりませんし、どんなに細かいところにも手を入れなくてはなりません。しかし、カプースチンは、「1週間でやるなんて無理だよ……」と言いながら、なんと結果的には丸2日間ですべてを書き込んで送り返してくれたのです! さて、その楽譜を見て…私も出版社も覚悟はしていましたが、赤ペンの修正箇所は、500箇所とは言いません…軽く1000箇所を越えていました。その几帳面さといったら、すごいものでした。もちろん修正箇所もありましたが、今回楽譜を送る前に通知されていたことですが、特に、「24のプレリュード」のいくつかの曲に、かなり変更が書き加えられました。全曲を通じて、Ossiaがかなり書き加えられたばかりでなく、第11番や第23番には、音が大幅に変更された箇所もあり、これはもう改訂版といっても良いかもしれません。これによって、新しい版(日本が最初となりましたが、世界初のヴァージョンとして作曲家が認めた版)が発刊されることになります。大幅に変更というのは作曲家から見ればの話で、素人が聴いたら違いがわからない程度かもしれません。しかし、専門家にとっては大きな違いかと思います。89年のカプースチン自身の録音を聴くと、これまでも楽譜と違う個所は発見されていたかと思いますが、この録音は楽譜とは微妙に異なるヴァージョンとして、今後さらに重宝されるものとなっていくことでしょう。もちろん、「エチュード」の方も全面的に見なおされ、アクセントなどの記号や音符の表記の仕方などが細かい点まで変更されて、かなり楽譜が見やすくなりました。

 ちょっと裏情報を喋りすぎてしまったかもしれません。しかし、今回の日本版の楽譜出版に、作曲家自身がいかに期待をかけているかということをお伝えしたかったのです。作業は引き続き大変なものがありますが、予定の期日にちゃんと出版が実現するよう頑張りたいと思います。




過去のWhat's new… 2002年 8月9月10月11月12月
2003年 1月2月3月4月5月6月7・8月9月10月11月12月
2004年 1月2月3月4月5月6月7月8月9月


トップページ