What's new?
〜旧「音楽雑感」のページ、音楽の話題その他を日記風に綴る〜
2004年



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2004年11月16日(火) 奏法と身体の使い方

 楽器の演奏というものは身体の動きと密接に結びついていますが、ピアノを演奏する際にも、リズムを体で感じてそれを表現する必要があると一般的には思われています。その方が良いリズム感が出せるように思えるし、なにより見ている人にも音楽の感じ方が伝わって気持ちが良いとも言えるでしょう。

 ピアニストの指や手の動きというものは人によってそれほど変わりませんが、体の動かし方はかなり人によって違います。CDなどで耳から聴くとものすごく乗っていると感じる演奏が、ビデオでその演奏家が弾いているのを見ると、聴いて感じたノリとは違うように見えることがあります。例えば、ホロヴィッツ。彼はとても良いリズム感を持っていて、派手に弾いているように聞こえますが、演奏を見るとほとんど身体は動いていませんし、手を鍵盤からあまり高く上げるのを見たことがありません。ほとんど硬直しているようにも見えますが、それでもリズム感は抜群に良いのです。きっと、頭の中で完璧に音楽の理想的な流れができていて、それを耳で再現しながら弾いているだけなのでしょう。これとは逆に、身体の大きな動作をともなってもリズム感があまり良くないという演奏もあり得ます。カプースチンの映像をすでにご覧になられた人がいるかどうかわかりませんが、彼の奏法にもホロヴィッツのように無駄な動きが少ないことがわかります。まず第一に、難しい曲を弾いているというふうに見えません。手のひら(正しくは“掌”と書く?)はほとんど下に向けたまま、つまり2の指が1の指をまたぐことは少なく、指が足りなくなったら掌ごと移動して無理のない奏法で弾いていきます。つまり、5本の指があるべき場所で鍵盤を押さえていくだけという感じで、これですごく難しいパッセージをこなしてしまうのです。例えば、5本の指の座りが良ければいくらでも黒鍵に1の指を持ってきます。これが彼のピアニズムの秘密の一つです。日本人は手が小さいので、よく指をまたいてコチョコチョと細かい指使いを考えがちですが、このカプースチンの奏法(運指)は他のピアノ曲にも応用できる考え方です。また、彼は決して体を揺らしたり、リズムを強烈に感じたりして音楽に乗って弾いているわけではありません。しかし、それなのにあのすごいグルーヴ感を伴なう演奏ができてしまっているのです。結局、「身体で乗って音楽を感じている」ということと、「乗っている音楽を演奏で表現すること」は別のことだということがこれでわかります。

 よく、レコーディングの時は観客に見られないために視覚的なことに気を遣わない分それだけ音楽に専念できる、と多くのピアニストは証言しています。ということは、演奏中の体や手の動きの中には、本当はまったく必要のない動きもあるということです。

 さて、このページでも少なからずカプースチンを話題にしてきましたが、楽譜の出版を記念してカプースチンのページを独立させることにしました。(発売日11月25日を待たずに店頭に並ぶ予定とのことです。) 今後カプースチンに関しては、新刊楽譜の内容に関することを中心に、新ページでご紹介していきたいと思います。これからは興味のある方だけそちらのページにお飛びください。手始めに、新しい楽譜の校訂に関することですが、作曲家本人の演奏と楽譜の違いはどう考えたら良いか?という点を解説しておきました。
カプースチン特設ページ
 これにともない、長らくお世話になった「カプースチン VS カプスチン?」のアンケートも片付けました。多数決だけで判断したわけではありませんが、新刊楽譜の出版にはこれまで通り「ニコライ・カプースチン」の表記に決まりましたのでご報告いたします。アンケートに回答してくださった皆様、どうもありがとうございました。



2004年11月8日(月) カプースチン特集速報

 全音からの楽譜の発売も間近になりましたが、それに先がけてすでにカプースチンの特集を組み始めている楽器店がいくつかあることを知りました。なんと、池袋のヤマハでは、レジの真ん前にカプースチンのプロモ・ビデオが流されているではありませんか! 予期せぬ瞬間に「動くカプースチン」が突然目に入ってくるというショックはなかなかのものではありました。しかも、自作のソナタをピアノで弾いている。自分が何を見ているかを理解するのに、相当の時間がかかってしまいました。そういえば、オクタヴィア・レコードがわざわざモスクワまで映像を撮りに行ったという話は聞いていました。でもその後、本人によれば「あまり満足ではない?」ものが出来たと言っていたので、私はこの件についてはすっかり忘れていたのです。何が「満足いかない」のか…とんでもない、これはカプースチン・ファンには貴重すぎるほどの映像でしょう。時間が許さなかったのでちらりとしか情報を得ることはできませんでしたが、「ピアノ・ソナタ12番」、「夜明け」、「即興曲 Op.66-2」あたりが収録されているはずです。これから当分の間(フェア期間中?)は、開店中ずっとそのビデオが流されている(予定)ということですから、首都圏に住むカプースチンファンは、モスクワへ行かずとも、なんと池袋まで足を運べば良いのです! カプースチン本人による「ミニ・コンサート」が、ただで楽しめるというのですからちょっと考えられないことです。




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