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〜旧「音楽雑感」のページ、音楽の話題その他を日記風に綴る〜
2004年



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2004年3月24日(水) 譜読みの現実

 春休みだというのに、のんびりするどころか、仕事が山ほど積まれていて身動きができない状態です。暗譜の効率的な方法を先日書いたばかりですが、理想はあくまでも理想で、現実は厳しいです。ピアノの練習は、一生続く修行のようなものなのでしょう。アムランも言っていたけど(今月号の雑誌のインタヴューで)、どんな天才でも(これは私の言葉ですが)必要な練習時間を確保する、ということはどうしても当然必要なことで、それをすっ飛ばして良い方法を見つけることは不可能だということなのでしょう。さらわなければならないレパートリーが多い場合は、それに比例して費やす時間も多くしなければならないのであって、曲が多ければ1日24時間があまりにも短く感じるようになってくるのは当然かもしれません。

 譜読みに関していえば、先日の辻井伸行君だって、本人は軽く、「CDを聴いただけですぐに覚えます…」なんていう強力な発言をしていましたが(もちろんそれも半分は事実ですが)、実際には大変な譜読みの作業があるわけです。(本来、彼はあまり苦労を語る性格ではないのです。) 私が毎回作る彼への譜読みのための録音テープには、数小節ごとに区切って、楽譜に書いてあること(音符・休符の正しい長さ、ディナーミクの指示、スラー・スタッカート、アクセント、指使いその他すべての情報)を細かく言葉で説明を加えながら、遅いテンポに分解して録音されています。これを作成するのにももちろん時間と労力はある程度かかっていますが、伸行君がそれをもとに譜読みをするのにも大変な集中力と根気の要ることだと思います。普通に演奏されているCDを聴いても、彼には音程をすべて正しく取るくらいの聴力はありますが、楽譜に書いてある音符や休符の正確な長さ、細かいリズムなどは分かるものではありません。CDでは、演奏者はペダルをふんだんに使ったりテンポ・ルバートをしたりしますから、正しく楽譜に書いてあることを想像して、音だけの情報からすべてを正しく取ることはまず不可能だからです。この録音テープが、実は彼が楽譜に書いてあることを正しく理解して楽曲を勉強することができている秘密です。だから、彼と新しい楽曲をさらい始める場合には、まず“譜読み”のセッション(ここで指使いを含む正しく全曲を暗譜する作業が終わってしまう)が第一段階にあって、その後に音楽的な理解、表現の仕方などについてのセッション(いわゆる普通のレッスンと言えましょうか)に移るのです。これを見ると、1曲を仕上げるのにかなり気の長い大変な作業があるように感じられるかと思いますが、あえて言えば、彼の場合はこの譜読みと暗譜の精度と速度が異常に早いため、平均的に他の人と比べて楽曲を仕上げるのは“かなり”早いのです。だから、何も知らない人から見たら、本当に数回聴いただけですべて覚えているのではないか、と思われても不思議ではないと言えるかもしれません。

 さて全然話は変わって、皆さん、HPの更新についてはどうか気長に見守ってください。(^_^;) 更新が滞ってしまうことがこれからも多いと思います。トップページにあるアンケートも、以前に一度集計してからまたかなりの数の回答がたまってきましたので、また集計結果を出したいと思っていますが、こちらも長く見守っていただければと思います。
 インターネットというのは“世界のどこでも…”というのが売りですが、意外に移動する人にとってはあまり便利なものではないような気がします。ノートPCは重いし、海外では接続するのに電圧やらプラグやらモジュラージャックやらの規格や形状をそろえたり、アクセスポイントの設定やら別のソフトを組み込んだり…、万事整えてもやってみるとうまくつながらなかったりして、かなり面倒です。(私が初心者なだけでしょうか…。) 携帯電話が海外で普通に使えて(Docomoなど、使えても現在では料金が高すぎる)、海外で携帯からe-mailが普通に送れるようになったりするのにも、まだもう少し時間がかかるでしょうか。それから、パソコンでのメールの送受信に関してもいまだによく分からないことが多いです。例えば外国語、特にフランス語、ロシア語でのメールのやり取りでは、本文は特殊なアクセントを含む文字が入ってももちろんちゃんと表示されますが、送信者・件名はどうしても文字化けしてしまって、これをきちんと表示させる方法を知りません。大事な人からのメールが、ウィルスか何かだと勘違いしてしまいそうになったこともありました(^_^;)。 (そういえば、海外のネット・カフェで日本語のメールを開いた時にも「件名」が文字化けしていたことがありました。) 携帯電話で写真が撮れたり、または画像処理とかTV電話とかの技術が進むのも結構ですが、私などはもっと単純に通信手段としての利便性(世界規模で)を求めることが先決ではないかと思ってしまうのです。(特に“移動する人”にとっての簡便性です。)

 話がだいぶん横道にそれましたが、とにかく私も毎日頑張っていますので、いずれはメールなどのいろんな問い合わせにもきちんと応じたいと思っていますが、一日があまりにも短いものですから、無理な場合も発生しています。どうかお許しを……。



2004年3月17日(水) 辻井伸行(中3)、TV「ニュースステーション」に生出演

 昨日の「ニュースステーション」をご覧になられた方は多いかと思います。このHPでも紹介している辻井伸行君が生出演、生演奏をしました。どういうわけか、私のところに曲目の題名を教えてください、という問い合わせが多くあるので、ここに書いておきます。昨日演奏した第1曲目は、ショパンの練習曲(エチュード) から、作品10-1。2曲目に演奏したのは、カプースチンの「8つの練習曲」作品40から、第2曲「夢」です。ショパンは、いくらでもCDや楽譜が手に入るでしょうが、カプースチンの方は限られています。カプースチンについては、このHPでも多く語ってきているように、新しい作曲家なのでまだそれほど一般に知られてはいません。録音は、自作自演のCDが存在しますが、現在、そのいくつかは廃盤に近い状態で(再発売される可能性はありますが)、楽譜に関してもほとんど同様です。いくつかのピアノ作品の楽譜は近未来に大手出版社から出される予定ですし、カプースチンの易しい作品をいくつか出版したいという他の出版社もあり、徐々に楽譜は世に出てくることと思います。(今すぐに手に入れるのはまだ無理です。) 実は自作自演のCDが発売された当初(2000年)、いち早く入手して聴いていたのは伸行君です。(彼がカプースチンを知ったのは、なんと私よりも数日早いのです!)

 TVを見ていた方はたぶん心地良く演奏を聴かれたかと思うのですが、昨日の曲目は大げさではなく大変なものだったと思います。一発勝負の生放送で、あれだけの難曲を弾くのは至難なのです。そういう意味でも私もドキドキの一日でした。カプースチンのあのエチュードNo.2「夢」は、伸行君が以前から大好きで弾きたいと思っていた曲です。たまたま私自身がカプースチンの演奏をするので楽譜が手元にあり、今回取り上げることができたのです。聴くと魅力的なこの曲も実はとても演奏困難な曲なのですが、しかし実際の本番ではほぼ伸行くんの本領が発揮され、素晴らしい演奏ができたと思います。私は、リハーサルも本番中もずっとスタジオ内にいましたが、昨日のスタジオは伸行くんのために特別に作られた見事なセットでした。カメラは4台。このように別スタジオに特別なセットを用意されるのは異例だそうで、そのためにスタッフを数十人も増やしたそうで、それだけでも大変なプレッシャーなのに、カメ・リハが1時間以上にも延びてしまい、ライトに照らされて暑い中エチュードを何度も弾きとおし、大事な体力をとことん消耗させねばなりませんでした。しかもスタジオ内では、さまざまなライトの光を綺麗に見せるためにスモッグが焚かれ、煙で空気が悪い中ハアハアしながらエチュードを弾くなんて…私だったらカプースチンを弾いている最中にたぶん酸素が足りなくなって倒れたのではないかと思います。本番30分前になってやっとリハーサルが終わり、急いで着替えとメイクをする伸行君。心も落ち着かないまま本番が来てしまったのに、あの平然とした余裕が素晴らしい。一番びっくりしたのは、誰も予期しなかった演歌の弾き語り…。脱帽です。あれをやってしまうとは…。(打ち合わせでは、「やらない」ことになっていたのに…。) 

 終わった後、伸行君の大好きなお寿司を食べながらの反省会(伸行君にとっては“打上げ”)。「それにしても、弾く直前に久米さんから『この曲は大変な難曲中の難曲なんです』なんて言われて、まったくプレッシャー受けちゃうよね?」と、いつものごとく私は彼の気持ちになって同情してしまうのですが、彼もいつものごとく、「うん、でもまあ…、大丈夫です」、と何事にも動じないこの性格。これだけはどうしても真似できません。まだまだ彼には計り知れない能力があるかもしれないと、あらためて感じてしまいました。昨日のような場では、演奏技術+精神力+体力のすべての極みが要求される“試練”のようなシチュエーションでしたから、終わった直後は普通なら三日ぐらい寝こんでもおかしくないでしょう。しかし翌日の今日、たぶん彼は平然として学校へ行ったはずです。その強靭な体力にもまったく脱帽してしまいます…。




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