利用者に存在を意識させないブリッジ

「透明性」の概念

 有効なパケットを受取ると、NIC は通常パケットの宛先 DLC アドレスがきちんと設定されているかをチェックします。 そして、パケットは上位層に渡されます。

 ブリッジは、それと違って、ネットワーク上のパケットを無差別に聞きます。つまり、パケットのアドレスに関わらず、 すべてのパケットを受け入れるということです。 無差別に聞くということは、ネットワークアナライザでネットワーク上のすべてのパケットを捕らえることと同じことです。 ブリッジは、自分の持っているアドレステーブルの中から、パケットの宛先 DLC アドレスと一致するものを探し出し、 宛先の NIC が、どのポートに割り当てられているかを見付け出します。 このような方法で、送るべきポートにパケットを送ります。 ブロードキャストの場合は、そのパケットが来たポート以外のすべてのポートにパケットを送ります。 無差別に聞くということが、ブリッジの「利用者に存在を意識させない」動作のポイントです。 ブリッジが送られてくるすべてのパケットをきちんと聞くので、 個々のステーションは特別な動作をすることなく、送りたいところにパケットを送ることができます。


利用者に存在を意識させないブリッジの動作例

 ここでは、ポートが4つ、ステーションが5つ接続されているブリッジを考えます。 ポートとステーションに下図のように名を付けます。(図1参照)



ステーションAがステーションCに対してパケットを送るとき何が起こるでしょうか? ブリッジは−無差別にパケットを聞いています−、自分の持っているアドレステーブルを調べて、 ステーションCがポート3に接続されていると確認します(データがどのようにして内部テーブルに取り込まれるかについて、ここでは考えないことにします)。 ブリッジはポート3にパケットを転送します。(図2参照) こういうことが起こっている最中にステーションDがステーションEにパケットを送ろうとすると何が起こるでしょうか? ブリッジから見ると、4のセグメントにはトラフィックは存在しないので、会話が行われます。 ブリッジがなければ、ステーションAがメディアを占有しているので、ステーションDは通信できません。



ステーションAが自分と同じポートにつながっているステーション−ここではB−に対して送信しようとすれば、 ブリッジは他のポートにこのパケットを送る必要がないとわかります。(図3参照)



例えばステーションBがブロードキャストまたはマルチキャストパケットを送信したら、 ブリッジはすべてのポートにそのパケットを送ります。(図4参照)



ブリッジの定義

 このような機能を持つブリッジを簡潔に定義してみます。

ブリッジは OSI モデルのデータリンク層で動作するデバイスです。 フレーム中のデータリンク層のアドレスに基づいて、送るべきフレームを選んで送ります。 このようなデバイスが「利用者に存在を意識させないブリッジ」です。

(このことは第2層で動作するスイッチは、ブリッジと本質的に同じであるということです。)

 重要なことが暗示されています。つまりブリッジは上位層で使われるプロトコルを選ばないということです。 ブリッジは上位層が NetWare でも、TCP/IP でも、AppleTalk でも、DECnet でも、パケットを正しく転送します。 ブリッジがふさわしい NIC ( Ethernet、TokenRing、FDDI 用の)を持っていさえすれば、パケットは適切に送られます。 このような性質から、ブリッジは「プロトコルから独立である」と言われます。