2002年5月14日
環境大臣
   大木 浩様


産業廃棄物最終処分場を考える会  
事務局 細谷 均
住所:横須賀市秋谷2-3-32
電話:0468-57-6051

産業廃棄物最終処分場を考える東の会
事務局 柳川 浩之
住所:横須賀市平作1-12-8
電話:0468-53-8105


芦名地区産業廃棄物最終処分場建設計画について





神奈川県は、昨年10月18日、地元住民への説明も理解を得る努力も不十分のまま、横須賀市に芦名地区産業廃棄物最終処分場の設置許可申請を強行しました。
これに対し、横須賀市は住民の理解が得られていないという認識を明らかにするとともに、「本市が重要と考えている地元の理解を得るという点については、設置許可の法的要件とはなっていないものの、具体的に示されないまま許可申請手続きとなったことは、極めて残念と言わざるを得ません」と記者会見で、県の強硬姿勢を批判しています。
さらに地元芦名町内会は、昨年11月4日に臨時町内会総会を開いて圧倒的多数で処分場設置反対を決議するとともに、工事着工を前提にした対策協議会設置の役員提案も否決しました。
このように住民の理解が何一つ得られていないにもかかわらず神奈川県は、私たちが昨年12月28日に提出した公開質問状に対して、横須賀市の審査に影響があることを理由に回答を拒否し、住民の理解を得る努力を完全に放棄しています。
神奈川県は民間のモデルとなるような施設をつくると説明してきましたが、住民の理解を得る努力を放棄して強硬するのでは、最悪のモデルとなり、産業廃棄物最終処分場に対する住民不信をいっそう高めることにならざるを得ません。
また、当計画地は首都圏近郊緑地保全法の保全区域であり、風致地区にも指定され、神奈川県の環境評価ではA1ランクに評価されるなど、三浦半島においても残された数少ない極めて良好な自然環境の保たれているところです。さらに、県をはじめ地元市町が誘致をすすめている国営公園の予定地でもあります。民間の開発では絶対に許されない厳しい法規制のかかっている地域です。
このようなところに神奈川県が率先して産業廃棄物の最終処分場を設置し、貴重な自然環境を破壊してしまうことはどうしても理解できないことですが、納得のいく説明がありません。
さらに、神奈川県は本事業のアセスでは、平成5年度の産業廃棄物最終処分量が年間419万トンもあり、右肩上がりに増加するので、緊急補完的役割を果たすためにも本事業が必要であると説明してきました。ところが、平成13年10月に発表された「神奈川県廃棄物処理計画(原案)」によりますと、平成5年度の産業廃棄物最終処分量は247万トンであり、平成27年度の数値目標が42万トンとなっているなど、アセスで住民に説明した内容と全く異なっていますが、このことについても住民には説明していません。
よって、環境省におかれましては、別紙の要望についてご検討いただき、神奈川県に対し、首都圏の自然環境を守る立場から当計画の見直しを求めるとともに、許可申請の審査中とはいえ、住民の理解を得る努力の継続などについて、適切な措置をされるようお願い申し上げます。
以上  

別紙
環境省に対する要望

@厚生省所管の時につくられた「最終処分場に係る技術上の基準」を環境省の立場から、全面的に見直ししていただきたい。

Aいかなるシート、いかなるシステムを用いても、浸出水の地下水への漏出の危険性を払拭することはできないといわれています。したがって、搬入廃棄物に含有するダイオキシン類や有害重金属などの有害物質が完全に除去できない以上、水処理の困難な山間部や水産物資源の隣接地への立地を厳しく規制していただきたい。

B有害重金属類、ダイオキシン類等の有害物質は、除去の対象とはされていません。これらの有害物質は浸出水から除去するだけでなく、搬入する廃棄物から除去することを義務づけていただきたい。

C管理型処分場においても、本来遮断型で処分されるべき廃棄物が混入している恐れがあることが指摘されています。混入の防止策を明示していただきたい。

D中央環境審議会廃棄物部会は、平成9年1月31日付の「最終処分を中心とする中間とりまとめ」において、閉鎖の基準の明確化と行政による確認の仕組みの導入を提言し、遮断型処分場については基本的に閉鎖できないものとし、永続的な維持管理を要するものとし、そのための仕組みを設けるよう指摘しています。
 当計画は管理型処分場でありながら、上部を密閉し遮断型の管理をしようとしています。これでは処分場閉鎖後、将来においてしゃ水シートの破損、または老朽化によって有害物質が漏出する可能性が極めて高いと言わざるを得ません。
よって、処分場の閉鎖および廃止について、その基準を法律上明確にするとともに、神奈川県の計画の見直しを求めていただきたい。

E処分場の閉鎖や跡地利用など、埋立終了後の適切な維持管理を行う責任体制を明確にしていただきたい。また、埋立終了後の維持管理費用の積立制度、閉鎖および廃止の際の確認制度を明確に示していただきたい。

F当該施設を許可するにあたって、利害関係を有する住民の意見と異なった判断をした場合には、そのことについて、利害関係を有する住民に説明を行うようにしていただきたい。また、利害関係を有する住民の意見に対して、処理業者(神奈川県)に応答義務を課していただきたい。

G生活環境影響調査などで、環境のうち「生活」と限定を加えていますが、当計画地のように自然環境の優れているところについては、生物学的見地から自然環境についても審査の対象にするようにしていただきたい。